この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

世界設定

ヨズア暦30603年

その大陸の勢力は 西の国・ウェンディアと、
東の国・尊華に二分していた。
千年前の戦争はもはや神話の領域となり、
二国の領地もほぼ半分ずつ。
長い間そうして、世界は均衡を保っていた。
新たな魔術の発明があるまでは。


この世界の戦争は、魔術によって行われる。
魔力源は”文字”や”言葉”。

ウェンディア語は効率的な表音文字で、
移民にも扱いやすく、兵力は戦力となった。
呪文の執筆も効率的で、
発動までが迅いという利点があった。
尊華語は深い意味を持たせる事が出来る表意文字で、
使いこなせば強い魔術となった。
短い文字に意味を込めることが出来、
呪文の伝達や運搬に秀でた。


そして…
古代ヨズア語は、古い象形文字であった。


ヨズア族は太古の信仰を持ち、
千年前の戦争によって国を追われた民族だ。
ヨズア族が敗けたのは、必然であった。
美しさに重きを置いた古代ヨズア文字は、
執筆に時間がかかるなど、
はじめから戦闘向きではなかったのだ。

そして千年経った今、
古代ヨズア語を使いこなす事ができるヨズア族は絶滅し、
残るは文献のみとなった。


……はずだった。


ヨズア暦30604年
尊華の城の一つに攻め入った一人のヨズア人が使った魔術は、まったく新しいものであった。
象形文字を彫った木版を目をつむったまま手でなぞった一瞬、発動した魔術。
矢継ぎ早に発動したそれが城を陥落させるのには、二晩とかからなかった。
古代ヨズア文字はこの時から、象形文字であり、点字のように手で読むことが出来る、暗触文字となった。

そして、時はヨズア暦30676年
ヨズア国奪還を目論む組織の活動は留まることを知らず、
ついにはウェンディアをも動かした。


”ヨズアごときに侵略されるくらいならば、
自分たちが尊華を支配する”-----と。

こうして、新たなる神話戦争は
ウェンディア・尊華・ヨズアの三つ巴となり
戦いの火蓋が切られたのだった。