この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

通り雨

(ライラ&雅螺)

〆鯖/ライラ > (帝都の夜は、朱く見える街の窓や提灯のせいで、なんだか不気味な程に明るかった。しかしライラには、却ってそれが『やりやすい』と思う事もある。不夜城が星の光を阻害するならば、監視の目を逃れられる気がして。無論、監視などされてはいない、いないが、学生がいつでも教師の目を意識するのと、これは殆ど同じ性質のものである。——罪悪感に似た高揚感に心酔し、溺れながら、そうして今まで、この仕事をやり遂げてきた。)「……汗は流せた?」(肩越しににっこりと微笑みを投げかけるのは、今夜の相手。みるからに尊華の人間らしい顔立ちに、黒い髪と瞳が印象的で…端正な顔立ちだと思う。内面は褥を共にしたのにも関わらずあまり掴みどころが無かったような気もするが。まぁ、所詮は一晩の仲など、得てしてそういうものだろう。)   (6/14 15:39:29)
〆鯖/ライラ >  「……ありがとう、あたしもすっごく…ふふ、良かった。本気になったわ、久しぶりに。」(この位のリップサービス、減るものでもない。羽根のように軽い言葉は、ふわふわ、ひらひらと狭い宿の中を舞って消えた。)「……別れる前に一つお願い。ハンカチや手ぬぐいを持っていたりする?あなたとの思い出に一枚頂きたいの。あなたの気持ちを包むならば、それにね。」(仕事の後、必ず全員に言うことにしているこれは、礼儀作法のようなもの。『じゃあ、お金、約束通り。』だなんて、せっかくの夜が台無しになりそうな言葉は言いたくないもの。察しのいい男ならば、たったこれだけでも充分わかってくれるのだ。)   (6/14 15:39:50)


極夜@雅螺 > 「それなりに。嗚呼、いや嘘。結構流せた」(酷くぼんやりとした視線を天井付近に彷徨わせ、じっとりと汗ばむ腕を億劫そうに動かして体を支えながら寝台から身を起こす。熱の余韻だけが残された喉を絞るように、微かに掠れた声で皮肉をひとつ。すん、と鼻を動かすと、奇妙に甘い香りがした。秘事をみんな包み込んで真っ赤に燃やす赤提灯も、騒めく人の流れも、烏の羽で塗り潰したような仄暗い空も、何時もの帝都と変わらない。享楽と快楽に溺れて濁って、清い物とは無縁のけたけた嗤いがぱっと閃く夜の街。普段からよく来る場所ではあるが、然るべき行為をする事になるとは。──へぇ……うん……全く僕とした事が如何したものかな、何も言えないというか。白梅に怒られそうだ。……ま、接触を図れただけ良しとしよう。凄い倦怠感だ。大蛇に骨の髄を締め上げられているが如く。多分肉の髄も締め上げられてるね此れ──空虚な帝都の夜に似て、思考はふわふわ、彼方此方。其処は先代元帥の意地、自力で意識を引き戻し、御粗末に脱ぎ捨てられた衣服を片手で引き寄せ)   (6/14 16:07:29)
極夜@雅螺 > 「……、高嶺の花を摘むには良い夜だったよ。どうもありがとう」(娼婦と身を重ねた事もなければ、花魁と一夜を過ごした事もない。何せ御家が御家だ、酷く無縁だったのだから。ヨズアの人間らしい浅黒い象牙の肌、豊かに流れる黒曜の如し麗しい御髪。咲き誇る妖艶な花をちらりと一瞥してから、にっこりと微笑んで見せようか。底の見えない水面のように、真意も敵意も害意もない、ただ人を嗤うようでありながら、決して内面を明かさない笑顔。続けて投げ掛けられた貴女の一言にからからと声を上げ、所持していた小さな手拭い……牡丹が刺繍された上品な其れに、暫し考えてから相当上乗せして対価を包み込む。手早く元のように着物を纏い、醜い火傷の跡を隠すように手袋を嵌めてから貴女の手に対価を乗せた。「暇時に作ったものだけれど。其れで良いなら」なんて、嘘吐きのように微笑ってすっと身を離し)   (6/14 16:07:38)


〆鯖/ライラ > (品のいい上等そうな手拭いを取り出し、一枚二枚と代金を重ねていくあなたを見てライラは焦ったようにその手元とあなたの顔とを見比べた。ひどく気怠そうな感情の見えない顔で、何の気なしにいとも容易く行われる行為。何?怖っ。お金の価値がよくわかっていないおぼっちゃまなのかしら。さらにその美しく繊細な刺繍を、『暇時に作った』だなんてあなたは言ってみせた。…男だてらにこれ程の刺繍を刺せるだなんて、やっぱり相当良い家柄に違いない。)「……わ、わっ……ちょっ……と、そのくらいで大丈夫よ。あ、あたし対価を返せないわ。……えーと…も、もう2、3回…する?なんて。」(眉尻を下げながら、悪戯っぽくくすりと笑った。『高嶺の花』だなんて、どの口が言うのだろう。それだけの金があれば、高級娼婦と言われるような人たちを買うことだってできそうなのに。どこまでもよく解らない、腹の中の見えないひと。)   (6/14 16:40:40)
〆鯖/ライラ >「…なんてね冗談。いえ、あなたがその気ならそれもいいけど。…してほしい事があれば言ってみて。肩でも揉みましょうか、それとも耳掻き?子守唄でも歌う?」(こんな生業をしているだけに、出すものを出したら顔も見たくないと言う態度を取られる事だってある。別段、だからどうと今更思うこともない。それらは皆男に産まれてしまったばかりに、うすらちっぽけな節っくれみたいな玉に翻弄されているだけの哀れな生き物なのだ。…ならば自分に出来ることは、たった一晩でもできる限りの愛を注ぐ事だったり。そんなふうに思ったり、しなくもなかった。)   (6/14 16:41:04)


極夜@雅螺> 「対価分は貰うさ。余計な対価を人徳だと宣うのは馬鹿のする事だ」(──金で買うものだよ。人も結果も過程も情報も。買えないものは心だけなんて、綺麗事を言っていられないからね。……さて、ヨズアの民か。生憎、僕は人徳だと嘯いて金を積む程優しい人間じゃない。花から蜜を、対価だ。其の位は良いだろう?──くすくす、微笑っているのに貴女は酷く焦燥しているようだ。気怠い熱情だけが燻り、熱気は吹き込むつめたい風に少しずつ引いて行く。ぐい、と胡座を掻いて口角をゆるりと釣り上げ、皮肉な喜劇を嘲るように、或いは企みを覆い隠すように、内面の失せた空虚な笑みを描き)「ヨズアの民と会うのは、まぁ、久しくてね。昔は友人がいたんだが、此の御時世だ、秘密の逢瀬のようで碌に友人らしい話も出来なかった」(嘘八百、大言壮語、嗚呼なんて酷い男!だって仕方ないでしょう?仕方ないさ。今や会って情報を引き出すなんてヨズアの民には吹っ掛けられない。こんな大物、逃して堪るか。ヨズアの友人なんていやしない、酷い嘘吐き。其れらしく寂寥の笑みまで浮かべてしまって、こいつと来たら)   (6/14 17:09:14)
極夜@雅螺 > 「見た所、ヨズアの民だろう?友人の代わり……といっては言い方が悪いけれど、僕があの子としたかった"友人らしい話"の続きにでも付き合ってくれないかい?」(微かに下がった眉、懐かしむように細められた瞳、そっと引き結んだ唇。尊華の人間でもなかなか見破れないかも知れない。此奴が勘定踏み倒し上等、嘘と嘲笑で屍の山すら積み立てた先代元帥と知っていたなら話は別だろうが。さてさて、性急に話を進めるのは悪手というもの。少しではあるが上乗せしたのだ、良い話の一つや二つ、聞かせて貰うとしましょう。全ては我らが尊華の為に)   (6/14 17:09:23)


〆鯖/ライラ> (先程までは気だるそうにしていたあなたがその言葉を口にし始めた瞬間、瞳になんとも言えない艶のある水気が纏われたような気がした。……ぽつり、ぴちゃ、ぴとん。いつのまにか外に振り出していた小雨が涼しい風を運んで、ライラの首にじんわりと浮かんでいた汗を冷やしていく。余裕たっぷりにゆるりと釣り上げられた口角、どっかりと座り込む姿はと影のある表情は——ライラ自身も不思議で堪らなかったが——先程よりもよっぽど色気があるような気がした。まるで未経験の青年かのように(まさかそんな訳はないだろうが)様子を見るようにして始まった交歓の、感じ方によっては受け身に思えなくもなかった、その一時と比べて。堪えきれずに逸らした顔はほんの少しだけ朱が刺され、ライラはもぞもぞと、まだ感覚の残る太腿を動かした。)「……友人、友人ねえ。」   (6/14 17:39:48)
〆鯖/ライラ > (腹の中の読めないこの男が嘘を言っているのだとすれば、恐らくその言葉に違いないのだろう。この男はその『ヨズア人』を抱いたのだ。いや、抱いたのはこちらの方だったか?……どうだろう、いや、そんなこと、どうでもいい。とにかくきっと、あなたとその『友人』とやらは、きっとただならぬ関係であったか、ただならぬ想いを抱いていたのだろう。あるいは敵国である事を意識せねばならぬような立場なのかもしれない。しかし、懐かしむような優しげな瞳を向けられれば、漠然と……『悪いようにはされない』。そんな気がした。)「もちろん……構わないけれど。何を話せばいいのかしら?あたしはただ、『ヨズア人』でありさえすれば?『自由を愛する放浪の民』でありさえすれば、いいのかしら?……あぁ、そう……そういえば。」(もぞもぞと緩慢に動かした太腿は、改めてあなたに向き直る姿勢を取った。)「まだ名前を聞いてなかったわね。……いえ聞いたけれど誤魔化されたんだったかしら……ふふ、ごめんなさい、思ったよりも熱が入ってたみたいなの。頭がぼうっとしちゃって……。……あたしはライラ、あなたは?」   (6/14 17:40:12)


極夜@雅螺 > 「そう。友人。信心深くて優しい子"だった"。俺は尊華の人間だというのにね、まぁ……そうか、好意があったのかも知れない。君に言うのは如何かとも思うが」(──人間というのは不思議だよ、"だった"だの、"あったのかも知れない"だの、過去形を匂わせれば話してもいない部分を想像してくれる。ま、彼女がそうだとは限らないし、深い情報まで引き出すつもりは無いさ。そんな事をすれば勘付かれるからね──ぐつぐつ真っ黒に煮えた腹底は隠してしまいましょう。全ては尊き華の為。心が無い訳ではないのです、ただ自分の愛するもののために、気に入った物の為に。其れこそ何て我儘な動機だと罵られるでしょうか。其れで良いじゃないか、我儘過ぎる位がきっと丁度良いんだ。眠らない真紅と夜の酔色に沈む帝都の一ヶ所。声が響くことさえ嫌がるように、声をそっと潜めて囁くように言葉を贈る。貴女の返答に、ぎゅ、と目を細め、へにゃりと口が緩む。安堵した幼子のよう、実際は嗤って盤面を見ている詐欺師だと言うのに。嘘吐きなひどい奴。引っ掛かっちゃった可哀想な魚はだあれ?)   (6/14 18:05:03)
極夜@雅螺 > 「僕が言っている事は君を通して別の人間を見る事に他ならない。怒られても文句は言えないのに、貴女は。はは、……俺の字なんて知って何か得でも?いやいや、嘘嘘。俺は雅螺だ」(じめりと肌を濡らしていた汗も漸く引き、冷涼な風がひどく身に染みる。嘘つきを責め立てる寒々とした初夏の夜風を追い払うように片手をひらりと振り、煙に巻く言動は相変わらず、簡素に字だけを名乗ってみせた。嫌になってしまう、「貴女」だなんて。そんな丁寧な言葉、お前一体何処で覚えたんだ?嘘に真実味を持たせて貴女の中の自分の印象を書き換える為の汚い墨。嘘なんて噯気にも出さず、哀しげに首を傾けて微笑み)「あの子はよく"ヨズアの神様"の話をしてくれた。結局、最後まで話してくれる事はなかったけどね。……ヨズアの神様って、どんな神様なんだい?」   (6/14 18:05:12)


〆鯖/ライラ > 「ガラ……ガラと言うのね。」(『怒られても文句は言えない』だなんて、殊勝な言葉。なんて思慮深く、想いの深いひとだろうか。娼婦を通して真に心に住まわせた思い人を見る事なんて、よくある事で。だからこそ今の今まで名を名乗らなかったのではないか。何かを通して自分の心を写す。都合の良い水鏡に仕立て上げる。それはライラとて例外ではなかった。あなたの言う所の『神様』とは、古代ヨズアの神なのか、それとも偉大なる王シュクロズアの事なのか。それだけではわからないはずであるのに、不意に心に浮かぶのは、ライラがひっそりと信仰する『あたしのシュクロズア』の事であった。)「……ええと。」(だけど、あなたの求めているのはきっとそんな、自分語りではないのだろう。少し考えた後、ライラはヨズアの信仰について、一般論をしばらく述べた。)   (6/14 18:43:56)
〆鯖/ライラ > 「……という訳で、そう、古代ヨズアの神と繋がる手段であり、あたしたちの英雄であるシュクロズア様の再来を待ち望んでいるのよね。中でもシント、あの神の島はシュクロズア様が勝ち取った最初の領土で…….多くのヨズア人にとっての故郷であったりするし、あたしにとっても……いえ、ごめんなさいちょっと話しすぎたかしら。……尊華人であるあなたにこんな話をするなんてどうかしてる。ただ、自由になりたいというこの意思は抗えない血脈のようなものかもしれなくて、そこに反逆の意思はないのよ。」(最後の一言だけは、都合のいい甘い嘘だった。旅団の刺青を隠すようにして、話しながらライラは脱ぎ捨てられたローブを手に取りそれを被り始める。)「……胡散臭い、刺青でしょう。……ふふ。大丈夫、あたしは旅団なんかじゃないわ。信じて。」(いくら金を積まれても、これ以上は危険だろう。すっと立ち上がってあなたを見下ろした後、敵意のない微笑みを向けた。)「通り雨だったようね。……またふり出さないうちに別れましょう。ありがとう、いい夜だった。」   (6/14 18:44:51)
〆鯖/ライラ > (牡丹の刺繍がされた手拭いから、ほんの数枚だが金を抜き取りあなたの手に握らせるのと同時に、首筋に唇を寄せた。やっぱり、こんなに多くは貰えない。だって、あたしは———旅団の意思とあればあなたの国だって弓を引くことだって辞さないのだもの。次に向かうは、シント。あの島だけは、譲れない。その思いを宵闇に隠すには、帝都はやっぱり少しだけ明るかった。)〆   (6/14 18:45:35)