この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

白き誓い

(火津彌)

〆鯖/火津彌 > 【ソロル/咲夜様へ:白き誓い】(目が覚めた時、火津彌は自室でもオウガの屋敷でもなく、軍内の医務室に居た。佐官という身分にも関わらず、まるで隠されるかのように隅に追いやられながら。……その理由は、自業自得としか言いようがない。愚かにも捕虜に喧嘩をけしかけ、むざむざと返り討ちにされ、そして、上司を巻き込んだ。巻き込んだといえば、まだ聞こえのいいほうだ。正確には自分の軽率な発言によって、死の淵へ追い遣る程の失態を演じたのだった。……それは、巫女がかいつまんで話してくれた”噂”と、自分を尋ねてきたあなたの姿を見て点と点を線で繋げるかの如く、導き出された答えだった。)「……中将。」   (6/13 03:45:53)
〆鯖/火津彌 > (ぽつりと零した声は、蚊の鳴くような力のない響きだった。火津彌はあなたの顔を見て、柄にもなくぼろぼろと大粒の涙を零した。何故、助けたのか。そんな姿になってまで、なぜ。……佐官を殺したとなれば、オウガの立場がまずくなるから?……だとしても、命を賭ける理由になろうか。……いや、きっと、理由は一つではない。複合的なものなのだろう。オウガへの誠実さと尊敬、もしかすればあなたが抱いていた希死念慮、そして、部下である自分にずっとずっと目を掛けてくれていた事。あなたは、強くて厳しく、そして優しかった。どうして、今までそれを見てみぬふりなどできたのか。)「……度重なる、……裏切り、……申し訳…うっ…ございま、せんでしたっ……!……この腹を掻っ捌いて、どうにかなるのなら……そうしたいくらいに……思っておりますっ……!」   (6/13 03:45:59)
〆鯖/火津彌 > (裏切り。――ついに、口にした。いや、火津彌にとって初めからそんなつもりは毛頭なかったけれど。良い部下でなかったこと、これだけは確かだ。浅ましい野心に身を窶し、複雑な思いを燃やし、あなたへの気持ちを持て余し続けてきた。あなたを超えれば、楽になると思っていたのに。――何故、自分はこれ程にまで、あなたに執着してしまうのか。分かりたくはなかった、直視できない事実だった。だけど、女でも男でもなかったあなたは、今この瞬間、たしかに人であるのを見て、解りたくなくてもわかってしまう。そうか、僕はあなたにずっと、甘えていたんや。子が母を、『母という生き物』としてしか認識していないのと似たように、あなたのことを『咲夜』という生き物だと思っていたのだ。)「……それがっ、……許されないのであれば……ぼ、ぼくの、命をっ……捧げさせてください。あなたの魔術ならば、造作もありませんでしょう。ぼくの為にそのようなお姿になられるなど、た、耐えられませんっ……!――気が狂いそうや!」   (6/13 03:46:05)
〆鯖/火津彌 > (髪の毛をかき乱し、ぎりぎりと唇を噛み締めた。……自分でもわけのわからない感情だった。罪悪感などと言う言葉で言い表せないこれは一体なんなのか。しかしそれは火津彌をまるごと飲み込む強い劫火とは違い……『気が狂う』事も許されぬような、切なくて、複雑で、無数の絹糸で心を締め付けられるかのような繊細な感情だった。ああいっそ、怒りや悲しみに狂えれば楽だろうに。そう、いつものように。)「………中将、いえ、咲夜様……っ。」(布団から這いずるようにして、あなたの足元へ跪いた。気位の高い火津彌が見せた、精一杯の誠意だった。)「……誓います、神明に誓います。これから先、あなたの側を片時も離れずに、武器として役目を全うする事を、この命果てるまでの忠誠を誓います。」   (6/13 03:46:10)
〆鯖/火津彌 > (それでも、頑固なあなたは受け入れてくれるかどうかわからない。この想いが遂げられないのならば、舌を噛み切って死んでやる。その決意を表すかのように上げた顔――唇からは、血が滴り落ちた。)「……八百万、忠誠の白を誓わせ給へ……。香々夜くあなたの榮えを、この手で支えうる事を、神明に結び得給へ。……月光の、我が真名の名の下に。」(あまりにも一方的な、呪文だった。こうでもしなければ聴いてもらえないと考えた末の、愚かなる作戦だった。よもや、神を裏切ることはすまい。火津彌は白に誓う。――今後の己の人生を、あなた以外に染めさせない事を。)   (6/13 04:35:59)