この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

無我夢中

(オウガ)

しずま@オウガ > 無我夢中・序章   (6/7 09:13:16)
しずま@オウガ > 「(お前は誰だ。俺の中に住まう、お前は誰だ。深い海のような眠りの世界で、それを見つけた。引きずり出してみれば、それは何かの蓋だったらしく、噴火するようにごうごうと思い出が溢れだす。…いや、思い出とは程遠い、どす黒い溶岩のようなどろどろした思い出だった。角の生え際がひどく痛む…これが、記憶を引きずり出す鍵だったとでも言うのか。…幸せな記憶の数々は、虚飾されたものであり、自らの心に、頭に、魂に刻み込まれた、呪いのような魔術という深い霧に阻まれ作り替えられたものだった。その霧が今、その強き呪いでさえも吹き飛ばす「角」というものの持つ霊力によって払われたのだった。)」   (6/7 09:13:34)


しずま > 「(夢は、止めどなく流れていく。)お前は国を守る戦士となるのだ。(愛に溢れて、情熱的な父の言葉だった。男なら戦士となれ、と、そう言う男気のある、黒髪黒目で右目の瞼に、昔狼に付けられたという引っ掻き傷のある熱い人だ。性格はやはり、今のオウガに似ているだろうか。怒ると怖くて、でもその怖さにも愛があって、そして力も持っていて、子供に拳なんか絶対に振らず言葉で諭し、村を襲う狼たちを薙ぎ倒していく村の英雄。しかしその漢は、英雄である前に、オウガの憧れる人だった。)」   (6/10 04:35:50)
しずま > 「(勉強して、ご飯を食べて、剣の練習を父として、それを三周と、たまに遊んで寝て起きる。そんな毎日を、順風満帆に過ごしていた。ある日のこと、大好きな母の、クリームシチューの味が舌に染み込む昼のこと。優しく柔らかく、母らしいなとそう思わせる味だ。父と一緒に暖かいそれをごく、ごくと飲み下し、ご飯をばくばくと勢いよく食えば、)今日は土曜日!(と二人で言い、家の中にその声を響き渡らせながら、顔を見合わせて、一瞬で外に飛んでいった。母は、)あらあら。(と、赤い髪を揺らしながら、振り向いて青い双眸を扉の方へ向けると、その母性溢れる可愛らしい微笑み混じりの困り顔で、おっとりとした声を家の中に静かに響かせた。)」   (6/10 04:35:55)
しずま > 「王都、楽しみだなぁ…(と、馬車から見える壁にうっとりとした表情で、オウガは言った。)きっと楽しいぜ!絶対ここを守ってやるとそう思うはずさ!(そのうっとりとした表情をさらに深いところへと持ち込んだのは、父のその言葉だ。恍惚は憧憬へと変わり、王都にいく楽しみが、確かに大きくなっていくのであった。)着きましたよ!(と、御者が大きい声で言う。扉を開けて馬車から降りると、そこには壁が縁取る、巨大で重々しい門が。ギギ、と音を立てながら扉は開き、その先のきらびやかな町並みを見せた。)」   (6/10 04:36:20)
しずま > 「(ある日、父が買い物に行っている時だった。父が待ちきれなくなったオウガは、町を探検しようと路地裏へ入ってしまう。その先には、先程までのきらびやかな町とは違う、くすんだ光景が広がっていた。…いわゆる、スラム街だ。しかし、そのくすんだ闇の中で、一筋の光が1つ。そんなにも美しい少女が、ひたすらに剣…のような、長い木の枝を降り続けるという、強く素晴らしい光景を目にしたのだ。オウガはその少女に声をかけた。)ねぇ、君!(少女は長い木の枝を持ったままビックリした顔をこちらに向ける。しかしその驚きは、オウガの持つ短い木の棒を見ることで断ち切られた。)」   (6/10 04:36:47)
しずま > 「打ち合ってみる…?(ざ、と少女は足を引き、剣を構えてそう言った。…木の枝だというはずなのに、やはり剣だと認識してしまう。それは、彼女の技量故だ。独学だというのは後に聞いた話だが、だからこそ独特で剣を感じてしまうのだろうか…強者を前にして、父という英雄の息子「オウガ」は、身震いをしていた。しかしそのオウガも負けじと幼い鬼気を放った。…両方、足が進む。どちらも、子供にしてはかなりのスピードだ。リーチを生かし、少女から見て右横腹を狙い木の枝を叩き付けた。しかしそれを受けたのはオウガの肉体ではなく、木の棒であった。)」   (6/10 04:37:15)
しずま > 「(枝を棒で横に弾く。その隙をつき、流れるようにオウガから見て左の横腹に棒を突きつける。)…参りました。強いね、君。(少女は木の枝を持ちながら手を上げて、微笑みながら言った。)君こそ。先手を取る間合い、完璧だった。(手を差し伸べて、握手を求めた。…ひんやりと冷たく、それでいて優しい手だ。ぎゅっと握られると、改めて恥ずかしくなって、少し頬を赤らめた。彼彼女は、それを見逃さず、綺麗な微笑みを意地悪な微笑みに変えて、両手で、離さないようぎゅっと手を握った…何てことをする子供なのだ。あまりにも大人びすぎていやしないか…まぁ、そこはどうでもいい。)」   (6/10 04:37:33)
しずま > 「おい、オウガ!(路地裏の方から、父の大きい声が聞こえた。)また、ここに来てもいいかな。(と、オウガはそう問う。それに少女は、)もちろん。そのうち、ワタシのおうちにも来てよ。(と、好意的に答えた。おうち…というのは、スラム街にあるがらくた小屋のことである。見せたいものがあるんだ、とそう言った顔は、とてもワクワクした様子だった。)うん、また来るよ!じゃ、僕はもう行かなくちゃ!(と、それだけ言い残して、オウガは路地裏の中へ消えていった。…それきり、彼女との記[ノイズ])」   (6/10 04:38:18)
しずま > 「(5歳の誕生日…突然のことだった。自分が前千騎長である師匠に引き取られることとなったと、告げられた。優しくて美しい二人の親はその時、涙を流していた。)立派になって戻ってきてね。(と、微笑みながら涙を流す母は、慈愛に溢れた声で言った。)お国のために強くなるんだぞ!(と、力強く言葉を口に出しながら、父は、熱気に溢れた声で言った。オウガは、その暖かさを泣き笑いで返し、絶対に強くなるよと、そう口から出した。そして、その時が、来る。師匠の待つ例の馬車駅へ歩みを進めた。そのとき…夢が、途切れる。)」   (6/10 04:38:38)
しずま > 「(そう、「夢」…それは、海の中で靄に阻まれ当てられた微かな光に過ぎなかった。)」   (6/10 04:39:00)


しずま > 無我夢中・下   (6/12 19:00:10)
しずま > 「(靄は消えて、その先の光に溶岩が、まだ見えていなかったどす黒く粘っこい記憶が。少しずつ照らされていく。照らされていく。やめてくれと、そう叫ぶ魂の声をもはね除けて、脳みそは躊躇なくその光を受け入れ引き入れ招き入れる…そして今、この時、光は…)」   (6/12 19:00:15)
しずま > 「(一生暗いままで、よかったのに。)」   (6/12 19:00:39)
しずま > 「(夢は、止めどなく流れていく。その度に、自分が誰かわからなくなる。胡蝶の夢…いや、もはや、夢見て踊る胡蝶でも、夢見て思うヒトでもない…「誰」なんだ。)お前は国を守る戦士となるのだ。(と、その言葉は、幾度となく聞いていた。愛ゆえにと、その記憶にはそう刻み込まれていた。だが。その声は、初めて聞いていた。…冷たい感情だ。あまりにも残酷で、残忍で、愛などとはかけ離れたもの。それは、「強制」だ。オウガは、赤子の時からそう言われていた。いわゆる、洗脳だ。自分との血が濃いものにのみ、「禁術」による完全な洗脳は可能。しかし物理的な洗脳を行ったのは、「死んではならない」から、そしてその考えを自然に、かつより深く脳に刻み込むためだった。)」   (6/12 19:00:55)
しずま > 「(狂っていると、そう言えるだろう。否、それ以上にこの家族を表現できる言葉はない。「勉強」「食事」「鍛練」を三度繰り返した後、「寝て」、「起きる」。それが毎日だ。なんの異常がある?それを認識することができない。異常じゃない。普通で、凡庸で、簡単な生活だと、オウガはそう思っていた。だが、その生活を断ち切り、自分に新しい世界を見せてくれたのは、自分と10歳も年の離れた、錆色の髪と青い瞳、柔らかいまなじりの兄だ。兄は勉強をする自分を連れ出してくれた。…親は「自分」に興味がない。「鬼」に興味があるのだ。だから、終わりを告げるまでは、勉強をする自分の部屋には入ってこない。そこをついて兄は連れ出したのだ。)」   (6/12 19:01:11)
しずま > 「(自然が微笑み、木々の喜びが聞こえてくる、静かで神秘的な森、生命が廻り、鳥たちの歌う声が聞こえてくる、雄大で美しい山、風が吹き、草たちの囁く声が聞こえてくる、心地よく広い草原、そして、勉強の時間がいつもより長い土曜日には、村の外れにある馬車駅から馬車に乗って、人海が流れ、人々のざわめきが聞こえてくる、町の明かりに照らされる王都…様々な場所に連れていって貰った。)」   (6/12 19:01:38)
しずま > 「(初めてで、これまで新しくなることのなかったその恋は、貧民街でのこと。長い木の枝をただひたすらに降り続ける、少しべたつく黒い髪に、やつれていて白い肌にぼろ布を身に付けた少女だった。独学で「長剣」の使い方を熟知したらしい…長い木の枝を、長剣に見立てるとよくわかった。独特な剣筋だ。驚くほど鋭く、そして乱暴…木の棒だけで、人を切り裂くことができるのではないかと言うほど。)マイル!(と、そう呼んだのは、兄だった。マイルという字は兄がつけたもので、スマイルから来ているというのは後に聞いた話。そう呼ばれたその人は、とてとてと可愛らしい足音をたてながら、すぐに駆け寄ってきた。)この人がおにいちゃんの弟?(美しい顔を俯かせ、(と言っても兄から見たらだが)不思議そうにオウガを見下ろしながら言った。)」   (6/12 19:01:57)
しずま > 「あぁ、そうだよ。(兄がマイルの頭を撫でながら言う。)なぁ、マイル。オウガ。(兄は、ずっとこうしたかったと言うように、快活な微笑みを見せ、)お前ら、友達になれよ。(オウガの方も頭を撫でた。オウガは少し混乱して、そしてマイルはというと、すごい勢いで首を縦に振り続けていた。…そして、友となったその帰り道。…世間の厳しさを、思い知らされた。突然、他の子供たちが、オウガに石を投げてきたのだ。そして、その石の盾になったのは、兄だった。ボグ、ボグ、と、肉が石を弾く音がする。オウガが、鬼であるが故だ。…決して、そこから動くことなく。暴れることなく。ただ静かに耐える…。それがどれだけ辛いことか、知らなかった訳がない。ただ、兄として佇んだだけだ。それでも兄は、オウガがマイルと共にあることを望んだのだった。)」   (6/12 19:02:16)
しずま > 「(4歳になってのことだ。あの人と会ってから、もう一年が経とうとしていた。いつものように、木の棒で打ち合っていた時だった。…右の横腹に、深い痛みが…)…私…いや、もう繕う必要もないかな…(木の棒が横腹に突き刺さっている。どく、どくと、赤いものが溢れていた。そして、思いきり引き抜かれ、傷口に木の破片が突き刺さる。自分を刺したのも、膝を落としそうな自分を抱き締め、足に絡み着いてきたのも、その少女だった。…足に、ぼろ布のざらざらとした感覚と共に現れる固い感覚。こいつは、少女ではない…?)ボク、きみのこと、好きなの…殺しちゃいたいくらいに。ねぇ、ボクのおうちにいこ。ボクの可愛いお人形さん…(恍惚とした表情で、その幼さからは考えられないほど、「熱い」視線を放っている。またオウガも、幼いながらに博識で…その視線の意味を、ひしひしと感じていた。両者、息が荒くなる…それを止めたのは、買い物に行っていた兄だ。)」   (6/12 19:02:40)
しずま > 「(兄は、頼り甲斐のある好青年。若いながらに村の自警団に勤め、スポーツ万能、頭脳明晰という、絵に描いたような好青年だ。村の英雄と言われる、オウガ家の「隠れ蓑」で、「良心」だ。…弟のことを見捨てられるはずのない、好青年。だから、「村の英雄」止まりだ。「国の英雄」には、なれない。)---っぁ!(枝が自分の方へ向く前に、蹴りを放った。子供で、あくまで女性と思っていた子供を、蹴る。その行為に迷いがなかったのは、愛ゆえだ…しかしそれでも、もちろん本気の力は出ない。英雄だ、弟と大差ない歳の人間に殺意を向けるのは人より難しい。しかし、人より強い勇気と弟を思う気持ちが勝ったのだ。その程よく筋肉のついた健脚が、少年を射抜く。)」   (6/12 19:03:01)
しずま > 「(鞭が振るわれるが如く風を切る音、空気の爆ぜるような肉がぶつかり合う音、割れる氷を思わせる骨の折れる音、それが同時に生まれたように聞こえた。防ぎきれず、速すぎる足が無防備な右腕の肉を打ち、小さい子供の軽い骨が折れた。…狂ったように、その優しいはずで可愛らしいはずで美しいはずの笑顔が歪む。かわいらしい美少女の顔から一転して、苦しみに、痛みに、怒りに、憎しみに駆られた狂人の顔をしながら、彼は地面に叩きつけられた。)」   (6/12 19:03:18)
しずま > 「あぁぁぁ痛い…痛いいいいぃぃぃ…あ、あぁ、あれ、あれが、あれを、あれのために、あれがあるから、あれのおかげで、あれとともにあるがゆえにいいいいいい!(狂ったような、いや、狂った叫び声をあげると、ぼろ布へ左腕を引っ込める。また出てきたときには、なにか、注射器のようなものを取り出していた。それをおもむろに腕の静脈部分に刺し、あられもない声を上げて、瞳から光を抜いて、何を見るでもなく視線をとにかく上へ向けて、そしてばかと大きく開けた口から舌と共に、呂律が回らないまま悶える声を出した。)」   (6/12 19:03:44)
しずま > 「あぁ…あぁ…ははははは…ァ!(折れた腕を恍惚の表情で眺めている少年を見て、おぞましさを感じながら兄は傷ついたオウガを抱き、応急処置に回復魔術をかける。)光よ、太陽の光よ、今ここに集え。集いし光は癒しを与え、傷閉じ血塞ぎ肉繋ぐ。太陽の名の下に。(太陽の息吹とともに、光がオウガの身に落ちて、傷の跡が茶色く残ったまま、木片は弾けて傷口から吐き出され、皮と仮の肉だけで血を塞ぎ止めている状態となる。呼吸が浅い。早く、早く、早く!向かっているのは家ではなく、病院だ。…これをしたら、抜け出したことがバレてしまうのは、兄もわかっていた…それでも、大切なのは弟の命だ。…早く、病院に!)」   (6/12 19:04:07)
しずま > 「こ、こ、か…(よたよたと、力のない足で歩き、重い引き戸を開ける。汗だらけで、口からつ、と血を出す弟を抱き、兄はここまでやって来た。人々は心配する目付きでこちらを見ている。それは瞬間、忌々しい目に変わった。それでも兄は、歩みを止めず、受付の男に)たすけてください(とだけ伝え、眠るオウガを渡すと、疲れきった体は眠ってしまった。そしてオウガを渡された受付の男は、とにかくその少年を抱き、医務室へと連れていったのだった。)」   (6/12 19:04:25)
しずま > 「(ふと、成長痛のような横腹の痛みと小鳥たちの歌で目を覚ますと、辺りが白で染められ、いくつものベッドが並んでいる部屋にいた。…病室だ。オウガも、そのベッドの上で眠っている。どうやら、代謝を促進する魔術をかけられ、放置されたらしい。太陽が眩しい…日が射してくる窓のある方へ、首を傾けた。するとそこには、ベッドと同じ高さの椅子に座り、太陽を背負ってぐっすりと眠っている兄がいた。しかし、その佇まいに微笑みを溢したのも瞬間であった。)」   (6/12 19:04:41)
しずま > 「(扉が蹴り開けられる音がし、二人とも、びく、と驚いて反応する。)リアムゥゥアアアアアア!(黒目黒髪の大柄な父が、開け放った扉の方から、腕を引き絞り、こちらめがけて走ってくる。…その拳を止めてくれたのもまた、兄であった。)ぐ、は…(腹に強い力を受けて、兄は嘔吐する。…それを、「鬼」とはいえまだ小さく傷も負った子供に振るおうとしていたのか。…兄とは違う、愛なき暴力。それを目の当たりにして、オウガはひどく絶望した顔になった。兄でさえもここまでなんて。自分の親が、どれだけ暴力的なのかを、本当に思い知った顔だ。だが父は、それで満足したらしく、それだけやるとふんと息を鼻から吐き、オウガと兄を引っ掴んで連れ帰ってしまった。…廊下の椅子に座る母の、心ない微笑みが、オウガにはひどく印象的であった。)」 「(そうしてオウガは、幼いながらに愛する人に全てを裏切られ、兄にも会えなくなり、埋められつつあった心に風穴が空いてしまった。)」   (6/12 19:05:03)
しずま > 「(5歳の誕生日は、薄暗く、防音の魔術が掛けられ、「禁術」の施行準備が完全に整えられた地下室で行われた。…洗脳だ。ある日、不意に眠りの魔術がオウガの体にかけられた。眠っている間、暗闇の中を、あるようなないような意識がさ迷い、そしていつかたどり着いた時には、そこにいた。それは、四角い箱のような、簡素で、蔦の巻く石の板に上下左右を囲まれ、階段が中心にある十字架の柱と向かいになっているだけの部屋。彼とは違い、冷静さを欠いた一人の少年の、何かに防がれてごもったような声が響く。微かな光は松明と太陽。しかしその片方、自分を照らす太陽の光は、土の魔術の呪文を唱えられた瞬間、消え去った。…泣き叫ぶでもない。笑うでもない。なにも、ない。そんな顔で、オウガはその全てを見届けた。)」   (6/12 19:05:24)
しずま > 「(二人の人間の口が開き、呪文を唱えた。)「「我が子に命ずる。」」「幸せな心を。」「強き心を。」「偽りの記憶を。」「作り替えられた記憶を。」「偽りの認識を。」「作り替えられた認識を。」「見せよ。」「聞けよ。」「「我が子の心に命ずる。新月の名の下に。」」(そう唱えた二人の魂が、少年の魂が、その身から飛び出すのが、目に見えた。その魂は、オウガの心へと入り込み、強い痛みが心臓に走った。…数分後、オウガは気付けば、泣いている兄の前に立ち、「お父さん、お母さん、いってきます。」と、言っていた。泣き叫ぶ兄を、オウガは泣き笑いで出迎えた。まるで、感動の別れと言うように。…待て、と言う叫び声を背負いまた、師匠の待つ馬車駅へと、オウガが歩を進めたところで、視界が赤くなり、記憶が、)」   (6/12 19:06:29)
しずま > 「(止まっ…た?)」   (6/12 19:06:48)
しずま > 「…だ…れ…だ…(止まったはずの記憶の住人が、自分自身が、目口を狂気的に赤く染めて、こちらを見て笑っている。嗤っている。…これを見ている俺は。…いたい…。僕は、私いたいは、己はいたい、我いたいは、妾はいたい、彼いたいは、いたい彼女は、あんいたいは、お前さいたいは、いたい方は、貴いたい、いたい、いたい、いたい、君は。君は。君は。君は。)」   (6/12 19:07:02)
しずま > 「だ れ だ ?」   (6/12 19:07:16)
しずま > 「(…あの記憶は…幸せな記憶は…妄想などという、生半可なものではない。全てが、嘘偽りだ。虚飾された幸せ。否、「新しい記憶を飾り付ける」などそんな可愛いものではない。根本から「作り替えられ」、そしてどこかに、「元の記憶を飾り付ける」というのが、本当だ。だから、本当の、元の記憶が、はっきりと、はっきりと、はっきりと、こびりついて、こびりついて、こびりついて、離れない…自分が誰なのか、わからない。そんな苦しみの、虚しさの中からはもう。)」   (6/12 19:07:31)
しずま > 「(抜け出せや、しない。)」   (6/12 19:07:45)