この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

趨里にて

(アスラン&ライラ)

クノ/アスラン > 尊華帝國領土の一つ。王国に攻めいられたスーリであったが帝國軍はこれを守り抜き安寧が保たれ、民草は知らぬ所で世界を大きく動かす協定会談が執り行われている土地でもある、スーリの北、辺境の街の旅宿。その二階の一室にて。こじんまりとした部屋には布団が二つ、うちの一つを敷き終えるとその上に胡座をかいて座る壮年の男、アスラン。シュクロズアリ旅団構成員である彼は一度帝國に拠点を移すべく、帝都に向かう旅の途中であった。)「⋯ライラ、明日も早い、お前は早く寝ておけ。」((ちらりと視線を向けることすらなく、上着を脱いで畳み枕元に据え。気遣いのつもりかぶっきらぼうに呟かれた言葉は、腐れ縁である「夜のライラ」に対してと考えれば愚問とも呼べるものであった。日が変わるにはまだ少し時間があったが、既に部屋の灯りは燭台の蝋燭のみ。ゆらゆらと淡く心もとない灯りを頼りに、アスランは布団の上に星の位置が詳しく記された手描きの図表を並べ、肌身離さず持ち歩いている望遠鏡を弄っていた。   (6/11 23:05:16)


〆鯖/ライラ > (湿度の高い趨里の初夏は、王国のからりとした気候と少し違う蒸すような夜だ。師のアスランと行動を共にしていたライラは、仮宿にて開け放たれた窓辺に肘をかけ、夜空を見ていた。涼しい風を頬に感じ、眼下に広がる帝国の灯りを見ながら、思い浮かべるのは神の島のこと。)「……え、ええ。」(あなたに声を掛けられて、ライラはようやくはっと我に還った。『そういえば、この男がいるの忘れてたわ。』なんて胸中で独りごちながら。)「……そうね、あなたもね……暗がりでそんなもの読むと目を悪くするわよ。」(つらつらと口をついて出る言葉は、ただ間を持たせる為に放たれたようなあまり気持ちの籠らない、上滑りした響きだった。さっさと自分の布団だけひいてしまったあなたをち 一瞥し、ふうと鼻からひとつ息を吐くと窓を閉め、立ち上がり自分の布団を探そうとした。)「……んん、もう…」(ふと、不快な音を立てながら眼前を通り過ぎる蚊の存在に気づく。さっき窓を開けていたから、招き入れてしまったのだろうか。ぷぅん、ぷぅんと耳の横を通り過ぎ、うっとおしそうに手でそれを払うと、蚊はあなたの方へ飛んでいった。)「……あ。」   (6/11 23:43:59)


クノ/アスラン > 「⋯⋯ああ、確かに、星が見えなくなったら事だな。」((アスランもまた、場つなぎのようなたわいの無い返答を返しながらも、落とした視線を上げることは無かった。がらがらと窓が閉められる音を聞きながら、ライラが立ち上がるのを意識の外で感じながらもずっと。⋯集中していたアスランの思考を掻き乱すのは、もっと矮小な存在だった。)「⋯⋯!ちっ、逃がした。」((視界の中を黒い影が横切ったかと思えば、耳元を擽るような不快な羽音に反射的に頭を振り。...ばっ、と振り返るが蚊を見つけることは出来ず今一度舌打ちを飛ばして、立ち上がるのも億劫なのか這いずるように部屋の隅の燭台の近くへと移動すると、壁に凭れてどさっと腰を落とした。)「⋯⋯これじゃあおちおち寝る事もできねえ。ライラ、俺はもう暫く起きておく、お前は寝てもいいけど手は回らんぞ。」((「もう蚊が出る季節になったか、線香の一つくらいあればいいんだけどな。」と小さく独りごちるとため息混じりに髪をかき上げて。光によってくるだろう蚊を待つつもりか、片膝を立てて腕を置き、漸くライラに視線を向けて言葉を投げかけた。   (6/12 00:15:01)


〆鯖/ライラ > 「…そう……」(あなたの言葉に生返事を返し、それなら蚊は任せて寝てしまおうかと思ったライラであったが、腕に感じる痒みに無意識に手の爪先を伸ばしてはっとした。いつの間に、やられていたのか。)「動かないで」(じっと仁王立ちしたまま、仄暗い部屋の中を飛ぶ黒点を捉えようとする。再び耳に飛び込んできた不快な羽音のする方へ目をやると、光に誘われてもう一度その忌々しい虫畜生はあなたの方へと飛んでゆき、そして、頬に止まった。)「じっとしてアスラン、殺せるッ!」(くわ!と目を見開き、右手をあげてじりじりと近づく。なるべく風を起こさぬよう、しかしこれが最初で最後のトドメの一撃になるよう力を込めて。あなたの頬めがけてライラの平手が小さく振りかぶられた。)   (6/12 00:29:42)


クノ/アスラン > (「動かないで」仁王立ちのまま放たれたその言葉にはっ、と顔を今一度向け。やる気みたいだな、なんて心の中で呟きながら自分も黒点を捉えようと視線だけ動かす。が、アスランの場所までは羽音は聞こえて来ず、ライラの視線が動いた先に同じように瞳を向けることで見つけようとしたが、アスランにはついぞ捉えることは出来ず、頬に止まることを許してしまう。近付いてくるライラに、蚊が近くに居るのかと思ったのだろう、両手を広げていつでも叩ける体勢を作ったが。そのまま目の前まで近付いてきたライラに思わず体を硬直させてしまった。)「⋯⋯おい、ライ⋯⋯っ!?」   (6/12 01:10:00)
クノ/アスラン > ((ぱぁん、と乾いた音が響いたのは一瞬。痛みを感じる暇もなく体に走る柔らかい衝撃。立てていた片膝の内側に滑り込むように飛び込んで来たライラを思わず、蚊を叩くため広げていた腕を使って抱いてしまう。左手は腰辺りに、右腕は背中辺りに回されて、丁度ライラの顔を自分の鎖骨辺りに埋める体制となった。弟子であり、相棒であり、女であるライラを守ろうという本能の為か、直ぐに離す訳でも無く数秒の間抱き留め。後に遅れてやってきたぴりぴりとした頬の熱さに、ライラの耳元に掛かる形で深い溜息を吐き。突き放すことは無く僅かに背中に回していた腕を緩め解きながら、立てた片足をもぞ、と動かした。)「......ったく、足元は見ておけ、お前が燭台に倒れていたら大変なことになってたかもしれねえぞ。お前の顔に傷が付いたらどうすんだ。」   (6/12 01:10:02)
クノ/アスラン > ((大事な商売道具というニュアンスにも、女だから、や、綺麗な顔に、なんて意味にも複数取れる言葉を最後に、緩めた腕で乱れた黒髪の下を潜らせるように首元辺りをほんの僅かに押して、退くように意志を示すと、襟のずれた浴衣から視線を逸らすかの如く、ライラの腰辺りに当てていた手で自分の頬を撫でると指先に着いた羽を見て、再度深い溜息を吐いた。)「...はぁ、俺が居て良かった、気をつけろよ、ライラ。大人なんだからよ。」((髪から香る匂いに鼻を擽られて、ずっと弟子だったライラが今更ながらに「女」だというのを感じて。思わず付け足した大人という言葉に内心気付きながらも、何度か首元辺りに当てた手で貴女を押す事で誤魔化したアスランだった。   (6/12 01:10:12)


〆鯖/ライラ > (勢い余って、壁に凭れていたあなたの腕の中に、ライラは倒れ込んでしまった。頬を思い切り叩いてしまった事とも相まって、すぐに謝ろうとは思い至ったものの——…ほぼ反射的に回された両腕の意図が解らず、一瞬の戸惑いからライラは身体を硬直させた。しかし、1秒後には『いつまで触ってんのよ!』だとか、『気安くさわるなー!』だとか。それらしく取り繕う言葉を思い浮かべ、今まさに発しようとしたところであった。)「……な、あっ……」(思いがけず耳に吹きかけられた吐息に困惑の色を強め、出遅れているうちにするりと解放されてしまった。ライラは、あたしはこんな事で今更戸惑えるほどうぶでもない。戸惑ったのは、別にその皮膚感覚によるものからではなく、ただアスランが、あんたがあんまりにもらしくないから。弟子の一人として、そりゃあ困惑の一つくらいするっていうか……。嘗て、それこそ10年程前に、いくら誘っても応えようとしなかった鉄仮面なあなたを、いくら金を詰んでも自分のことを財布としか思っていなさそうなあなたを思えばこそ、『なに?なんなの?』と詰ってやりたくもなる心持ちにもなる。   (6/12 02:07:26)
〆鯖/ライラ > ……だけど、ライラに許されたひとつの選択肢はただ、口を噤むこと。ただ咄嗟のことでお互い驚いただけで、勝手に一人で冷静さを欠いたような台詞を放ったところで、ばかみたいだもの。)「……悪かったわね、引っぱたいたりして。でもこれでゆっくり眠れるでしょう?そうねありがとう、受け止めてくれて。」(襟元を正しながらすっとあなたから離れると、部屋に敷かれた布団へふらふらと歩み、広げられた紙と望遠鏡を丁寧に脇に寄せた後、あなたがあなたの為に敷いた掛け布団の中に迷いなく潜り込んだ。)「……………。」(おやすみなさいとかなんとか、締まりのいい言葉を言うべきなのだろう。だけど、言ってやるものか。いまいましい蚊を成敗して、あなたは間抜け面を晒してぐーすかと安眠するのだろうけど。図々しくも枕のかわりにしたあなたの上着から漂う微かな煙草の香りが鼻について、ライラはなんだか眠れそうにないと思った。ああ臭い、くさいくさい。———なんだか、すごく、男臭い。)〆   (6/12 02:07:52)