この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

悔恨

(ヴァンジャンス)

大和守.ヴァンジャンス > 「────ッ、……は……ぁっ……」(──勢いよく体を起こす。途端、痛みが全身を駆け抜けていく。思わず腹に込めていた力が霧散し、ヴァンジャンスは再び布の中に沈む。此処は一体何処だろうか。見慣れぬ天井、その光景にヴァンジャンスは首を傾げてしまう。しかし、直ぐにそこが本部の医務室だと理解する。理解が及んだ所で、不意に違和感に……妙に左側が軽い事に気付く。気を失ったせいでその直前の出来事がやや薄れているのだろう。視線を移せば、そこには“何もない”。普通ならばある筈の腕が、そこには無いのだ。それを見て、ヴァンジャンスはようやく今の状況を理解する。そうだ。攻城戦、そこで尊華の元帥と戦って。そして……嗚呼、──『失敗』、した。“普通ならば”その何の変哲もない二文字。……しかし、その言葉は彼女の心に大きな“傷”を残しているものだ。それが脳裏に浮かんだ瞬間、ヴァンジャンスは。…………嗚呼、)   (6/7 05:02:00)
大和守.ヴァンジャンス > 「…………しっ、……ぱ……い………………ぁ、……あぁ“、……ッ、……ェ“、お“ッァ“、……は、ッ、“………ッ”」(──気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。込み上げる吐瀉物。それを感じ取れば転がるようにして横を向き、木製のバケツを手に取れば、思い切り吐き出す。──『失敗』。失敗したのだ、嗚呼、何と情けない。何と愚かな。──『アイン、ッッ──!』──『やめて、ねぇ、死なないで、ねぇ、……ッ、まって、待ってよ、ねぇっ……!!』──『……わ、わた、ッ、私、私をッ、……ひッ、……ひとりにっ、しないで、よ、……ぉッ……!!』────『ど、ッ、どう、してぇ……ッ、』────後悔に沈んだあの日。友を亡くした虚しさに心を引き裂かれたあの日。あの日、お前は誓った筈なのに。『失敗』をしないと。二度と亡くさないと。それなのに。──嗚呼、お前は。また繰り返すのか、『失敗』を。気持ち悪い。気持ち悪くて仕方がない。一通り吐き出し終えれば荒い呼吸を繰り返し、その苦痛に溢るる涙がぽたぽたと地に落ちていく。深呼吸を一つ。涙を溢し、一瞬瞳を強く閉じた後、ヴァンジャンスは口を開く。)   (6/7 05:02:12)
大和守.ヴァンジャンス > 「…………やく、……やくたたず、ぅッ、む、のう、が、……ぁ、……あぁっ、この、……ッ、」(溢れるのは、自身への言葉の数々。『無能など邪魔でしか無い』。──嗚呼、無能は貴様だというのに。役立たずで無能で、しかも失態を犯してしまった。そして勝利以外を享受している。──嗚呼、全く愚かなッ!『私は失敗を許さない』?『私は勝利以外を許容しない』?──『決して敗北するな』?命有る限り足掻き、持てる全てで勝利をその手に掴み取れ──なんて。──嗚呼、馬鹿らしい!少なくとも、お前が吐けた台詞ではないだろう!勝利も手に出来ず、貴様は何をしているのだ。貴様は失敗を手にした。嗚呼、全く……)「…………──しんじゃえ、ぇッ、!!」(──いっそ、消えてしまいたい。死んでしまいたい。そんな言葉が叫びとなって木霊する。自身に対する呪いの言葉を叫ぶ。何て事をしてしまったのか。何と馬鹿な事をしてしまったのか。無能としか表現できまい。そんな言葉ばかりが胸中に響き、余計に彼女の心を重く苦しくしていくのだ。ヴァンジャンスの、失敗を許さぬと宣言した騎士団長の、敗北の叫びは。静かに響いて、そして。消えていったのだった。)____〆   (6/7 05:02:34)