この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

夕陽の追憶-母-

(ビナ)

レモネード/ビナ > (真夏へ、真夏へ、風の流れは引き潮のように流れていくように感じた。草原の地平の奥に見えるのは、沈むと言うより、燃え尽きようとする太陽だった。)『どうした。何か、見えたのか。』「なにも、見えません。なにも……」『そうか。』(母は、厳格な人だった。短くそう切り上げ、沈黙を挟んだ。わたしは、この間が好きだった。)『なにも見えぬということは、ビナ、お前の心がそれを見るのを拒んでいるということだ。』「………はぁ…」(禅問答の様なそれに、言っている意味を少し考える。)「それは、えと、つまり、心に意識を強く持つと言うことでしょうか。」『その必要は無い。そのような事をしても、見えぬ物は見えぬ。心が受け付けないからだ。』「………」『ひたすらに見聞を広げて、そしてやっと見える物が増えていく。』「すると」『今まで思い浮かべた事もない、強い【言葉】を見つける事ができる。簡単な道理だ。』「わかりました。」(なにが簡単なのだろうか。それをどう説明しようと、難しいことは難しい。)   (6/5 00:48:12)
レモネード/ビナ > 「綺麗です。」『………』「夕陽、わたしは、その、好きです。」『そうか。』「はい。」『そう【見える】お前の心は、きっと綺麗なのだろう。』(ただ、何より好きなのは、その母の言う、誰よりも強い言葉だった。)   (6/5 00:48:29)