この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

散らぬ男が迎えけり

(雅螺&白梅)

極夜@雅螺 > 「何が勝利か。お前が無事でないと意味がないだろう」(連銭葦毛、と呼ばれる馬がいる。葦毛に斑点を有する此の馬は、血を浴びると酷く目立つは道理というものだ。跨っていた馬が怯えたように足を止め、進み掛けていたしなやかな脚が空を掻いた。普段の和服で馬に乗る事は厳しい事もあろうが、何よりあの衣服では軍部の人間に怪しまれる。そんな事で時間を取られたくはない。馬が止まった拍子に揺れる現役時代の軍服の裾に、ぴしゃ、……嗚呼、誰の赤だろう。血飛沫が小さく散った。其処を地獄と言わずして、何と言いましょう。元は青々繁っていた草花は命流れる戦場の徒花へと姿を変え、落ちた花を、匂い立つ初夏の青草の香りを、戦火の濡れた匂いが覆い尽くす。其処に倒れ伏す二つの人影の片方……尊華帝國元帥にして己が腹違いの妹に、馬から降りて足を進めようか。──……相手が相手か。無茶をする。此の子は何時もそうだ、尊華の為に身を投げ捨てて、自分自身が誰かの涙になり得る事を考えない。右腕……嗚呼、我が身を犠牲にしたね。いや、褒めないと駄目だよ。言いたい事は、山程あるさ。けれど──)   (6/2 23:04:29)
極夜@雅螺 > 「──頑張ったね、白梅。お前の子達には僕が言っておこう。少しお休み、大丈夫、全部終わらせておいてあげよう」(血に濡れたあざやかな御髪をするりと梳き、ひどく柔らかく、其れは人間らしく、嘘偽りもなく微笑みを。大丈夫、何も心配しなくて良い。此れでも元帥としての手腕は持っている。朽ちる寸前の華をそっと水に浸すように、真実の甘言を穏やかに落として貴女を抱え上げた。命の証の赤色が流れた貴女の体はひどく軽い。生きる為の力がみるみる抜け落ちて行く。ざわり、背筋を撫でた悪寒から目を背けて貴女を先に馬に乗せ、自分は貴女の後ろ側から手を回し手綱を握る。成る可く揺らさないように、穏やかに赤い草原を闊歩する馬上で、現役の頃袖を通すのも嫌だった上着にするりと目を向けた。千切れて、ボロボロ、嗚呼、此れはもう如何にもなるまい。せめて此の華を護る役程度、果たせていたなら良いのだけれど。腹の底で煮える敵への業火の感情を無理やりに宥め賺し、ただ、一度馬を止め、微かに見える"敵“の姿を嘲笑って投げ掛けた)   (6/2 23:04:44)
極夜@雅螺 > 「痴れ者が。軍部から身を引いた事、此れほど後悔した事はあるまいよ。……口惜しい。口惜しい。懺悔に溺れさせてやりたかったが」(紅く、瞳を細めて小さく吐き捨て、視線を前へと戻そうか。今は華を繕うことを最優先と致しましょう。和やかに妹の体を支えつつ、軍帽を目深に被って遠方に見える尊華軍の方へと馬を駆けさせて行った)   (6/2 23:04:52)


クロ:白梅 > _ふわり、と甘くて柔らかい" 何か "に包み込まれる。 ゆらり、ゆらりと波のように心地良い揺らぎに身を任せる。 微かに鼻腔をくすぐるのは、懐かしく愛しい人の香り。 低くも優しい声色が、脳内をとろり、と溶かして行く__ ここは_何処だろう。きょろきょろを辺りを見渡せば、美しい花が咲き誇る草原に1人、[ 幼子 ]が立ち尽くしていた。手には取った覚えの無い小さな野花が1輪。 _嗚呼、そうだ、わらわは、あにさまの為に花を摘み渡そうとしていたのだったな…。あにさまは、どこだろうか_ 小さな頭を必死に振り、兄の姿を探す。まだ肩下まで伸び切ってない薄茶色の髪の毛は、首を振る度にさらさらと音を立てる。   (6/6 00:46:16)
クロ:白梅 > 夕焼けが幼子と草原を照らす。 きらり、と花達が夕焼けの柔らかく暖かい陽の光で光る。ふ、と後ろから微かに馬の足音が聞こえ、少しずつ此方に向かっているのか、徐々にその音が大きくなるのを聞き取った幼子は其方に目を向ける。そこには、馬に乗り此方を向いて優しく微笑む愛しい兄の姿が。 ぱぁっと頬を緩め笑顔になり、嬉しそうに駆け寄って必死に声を掛ける。 『 あにさま、あにさま!おしごとお疲れさまです!わらわは、あにさまの帰りをまっておりました! 』 __暗転。   (6/6 00:46:22)
クロ:白梅 > 気が付けば、少女は愛しい兄と共に馬に乗りゆらり、ゆらりと揺れていた。 揺籃の様にゆらゆらと優しく揺れ動く。 あ、と声を出し右手を見る。そこには、一輪の花が。 軽く首を回して、兄の方を向いて片手で花を差し出す。 きょとん、とした兄の顔を見れば、クスクスと子供らしい純粋で悪戯で笑みを零す。 _兄様が、よろこんで下さればよいのだけれど、ふふ、楽しみであるなぁ_ そんな事を心の中で言えば、もう一度クスクスと笑う。兄の喜ぶ姿を見れるのが、それはそれは嬉しいようで。 『 この花は、あにさまが無事に帰られるように、帰ってきたら、わたそうと思い、つんだ花なのです。ですので、この花はあにさまに! 』 __暗転。   (6/6 00:46:55)
クロ:白梅 > ハッとして、辺りを見渡す。 雨が振り続ける草原には、静かに、静かに兄の帰りを待つ女性の姿が。 新品の番傘をさし、雨音を聴きながら馬の音が聞こえないかを確かめる。 だが、何時まで経っても帰ってくる気配はしなかった。 眉を下げ、雨により湿って水溜まりがそこら中に出来ている地面を見る。 綺麗に整えられた和服と髪が、普段より暗く光って見えた。 _その日は愛しい兄は帰ってこなかった。 『 嗚呼、兄様…どうか、ご無事で 』 __暗転。   (6/6 00:47:01)
クロ:白梅 > 軽やかに馬が奏でる音色を聞き、ばっと其方の方に走り込む。 若干雑ではあるが、高く、一つで縛った薄茶色の髪の毛を風に靡かせ、駆け寄る。 大きくて優しい風が、ふわり、と兵とその兄を包み込む。スカートがゆらゆらと揺れ、軍帽が取れかけるが、真っ白な手袋をした左手でそれを支え、顔を上げる。 幼い頃から変わらない、明るい笑みを零し、愛しくて尊敬する兄の姿を目に焼き付けて大きく口を開いた。草原に凛とした声が響き渡る。相も変わらず優しげな顔で此方を向く彼を、少し誇らしげな顔で見詰め返す。 『 妾は、兄様の世界が見たいのです。兄様の様に、立派な軍人となり妾が尊華を天下一にするのです!そしていつか、いつか!兄様のその[ 上着 ]を着て、元帥になる事を此処に誓いましょう! 』 __嗚呼、兄様。妾は誓を…__   (6/6 00:48:11)
クロ:白梅 > ふ、と薄く目を開けば、夢で見た時と同じ所で同じ姿の兄と共に同じ様に馬に乗っていた。 相も変わらず優しげな兄を見て、安堵の一息を吐こうとするが、口からは血が流れ落ちる。 _嗚呼、そうか、先程妾は騎士団長と、…_ 思い出す先の死闘。そして、思い出す。 _誓を破ってしまった事を。 それを理解してしまえば、白梅は左目に涙を右目に血涙を浮かばせ、ぽろぽろと零す。 先程の夢と現実がぐちゃぐちゃと混ざり合う……。 震える左手で兄の服をきゅ、と持ち、上手く動かない口を無理矢理動かしてぽつり、と。 「 ぁにさま、妾は、わらわは、折角くださった、ものを…無様、にも…散らせてしまい、ました…嗚呼…兄様、兄さまが…ぶじで良かった…どうか、どう…か、この花を… 」 混乱していく頭の中で、必至に訴えかける。受け取ってくれ、と言い終える前に泣きながら白梅が差し出したのは凍り付く右手。 小さく囁くように「 夢の思ひ出 氷の物語 記憶の断片 鏡の如く 華は散れども 背を見つめ 春のお告げに 雅 な 華を 」 __小さく光る右手には、夢で見たものと同じ野花が作り出されていた。   (6/6 00:50:43)


極夜@雅螺 > (──鮮やかに、花が咲き乱れていた。青い香りに混じる甘ったるい花の芳香に紛れた、己が跨る馬の軽やかな足音。酷い疲弊を笑顔に隠し、誰も知らない冷酷過ぎた自分を覆い隠し、鮮烈に焼き付く美麗な景色の中、ゆっくりと馬を歩ませて行く。遠い遠い空は夕暮時、燃え盛るような煌々と明るい焼けた空。思わず目を逸らしたくなる程眩しい夕焼け。はんぶん沈んだ夕陽がもう少し眠れば、夜になる。嗚呼、燃える世界に華が咲いている。花に紛れて、たった一人、たったひとつ、ずっと僕の心であってくれた心が咲いている。とんとんと駆け寄って来た凛とした少女を見る瞳は、自然、するり和らいで。気高く響く声が告げるのは、純粋無垢な宣誓。夕焼けが見ていた。花が見ていた。終わりのような赤い世界で、鶴はじっと、何も知らない梅を見詰めていた。嗚呼、鶴は何と言ったのだったか。貴き梅に、何と)『──鶴の代わりに梅が咲くならば、きっと此の国はもっと綺麗になるさ。大丈夫、お前の存在は尊華を高めてくれる。せめて僕の築いた道が、お前を導かん事を。──白梅』   (6/6 01:36:50)
極夜@雅螺 > 「あまり話さない方が良い。多分内臓も傷付いているね。……白梅。僕のあげた花は、お前を守ってくれたかい。……僕のあげた花は散るのが本分だ。誰かを守って散れたなら、無価値でなかったのだと……そう思えるから。…………いいや、戯言だ。直ぐ治療するから、もう少し辛抱しなさい。お前は散ってはいけないよ」(柔らかな髪を指先で梳いて、瞳から溢れる透き通った赤い命を一滴も逃すまいと掬い上げる。──僕の上着など命を賭して守るものでもないだろうに、馬鹿な子だ。けれど、そうだね、……僕のあげた花は、花とも言えない古いただの道標。其れがお前を守れたのなら、お前の心の一部にでもなれたなら、僕が一番嫌っていた最悪の日々にも意味はあったのだと、……いいや、エゴだよ。何時だって鶴に意味をくれるのは、梅の花だけだ。全く、此の子は何時もこうで。困るね──軽薄な笑みは鳴りを潜め、ただ、人を愛しむ者の穏やかな陽だまりの笑みだけがはっきりと浮かび上がる。しずかに、詩吟を歌うように、子守唄のように紡ぐ戯言の意味など、貴女は知らなくて良い。夢の中、貴女の字の後に紡ごうとした言葉なぞ、どうか知らないでいて)   (6/6 01:37:07)
極夜@雅螺 > 「蒼の神、信奉捧げし清き方。応えよ……うつつの想い出。穢れなき物語。夢の断片、硝子の如く羽を喪えど──花を見詰め、夕暮れに立つ。……雅な花を」(小さな、野花。何時だっただろう。光となった小柄で凛と立つ花。微かに震える手を握り締め、そっと野花を受け取り、詠唱を口遊む。水は形を作れない。ゆえに、咲き誇るのは刹那の間。其れでも如何か、何時しか君が僕の心であったように、貴女の道であれるなら。貴女の手に、しゅる、と水が渦巻き──繊細に咲くのは、スターチス、と呼ばれる花。何処かで見た花。言葉を尽くして伝えましょう。花を捧げて何度でも。貴女は久遠、僕の花だから)   (6/6 01:37:17)