この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

出会い

(火津彌&ビナ)

〆鯖/火津彌 > (熟れた柿のような太陽が顔を朱色に染め、影が細長く傾き地に落ちている。尊華帝国首都榮郷、千景神社の参道。古本市が開催されている本日のこの場所は、木の間に糸を渡らせるようにしてかけられた提灯が薄暮の迫るにつれぽつりぽつりと明かりを点していた。珍しく私服の着物に袖を通してからころと下駄を突っかけ瓶の麦酒を煽りながら、火津彌はふらふらとその雰囲気を味わっていた。今ばかりはどうにも仕事をする気になれない。王国の千騎長がまるで客人かのごとく匿われているのやぞ?あれは、僕が殺せたはずの敵やのに。)「…やってられん。やってられんわ。」(酔っているせいか、思わず口に出してしまった。直ぐに自嘲気味な笑みをこぼした後、ふらふらと裏通りのほうまで歩いた。本はもういい、読んだものばかりや。少し、一人になりたい。)   (6/2 16:21:20)


レモネード/ビナ > (西日の、潤んだ硝子玉のように沈んでいく太陽。幼毛のように柔らかく細い雲が、こぞって一方向にゆっくりと滑らせて行った。山道に並びぶら下がる提灯が、ほのかな暖かみのある光を運び、まるで昼と取り違えたようだ。異国装束を身に巻いた人の群が、興味のある古本に様々な注目を向ける。そんな中、この少女は……)「うっっわぁああはああ!わはは、すごいなぁあ。どこ見ても良さげな本が!」(提灯よりも、目をこうこうと輝かせていた。旅先赴いた古本市場の書と知恵の取引。引く手数多の本あれば、ぽつりと忘れ去られたままの本もあり。言葉に魔力が宿るこの世界において、本というのはまさに魔力の根源とも言えるだろう。綴られた言葉、単語一つ一つに価値があり、その本自体に宿る固有の魔力が未だに息を吹く。過去の魔力の残滓を現在に伝える。その価値を持つ本は、万金に値するだろう。言葉の探究者たるビナの慧眼は、その本質を貫いていた。ガフを置いてきて正解だった。この人の量では、図体の無駄に大きいガフが潰れちゃう。)   (6/2 16:42:54)
レモネード/ビナ > 「およ………。」(そんな中、本に興味を向けない男の後ろ姿が、孤独を求めて寂しい裏通りに溶けていく。ビナの鋭い嗅覚が、この距離からでも、男から酒気を嗅ぎ取った。お人好しのお節介のビナが、その後を追わぬ理由はないだろう————)「————ねえねえㅤㅤにーさん、だいじょぶ?」(少女の待ったの声が、あなたを呼び止めるだろうか。提灯のように目を輝かせた少女と、提灯のように顔を赤く染めた男の、ボーイミーツガール。夕焼けの一刻の内の、そんな短い出会いだった。)>ほずみん   (6/2 16:43:05)


〆鯖/火津彌 > 「——は……?」(声を掛けられて振り向くと、目線のかなり下、臍の当たりにその少女の頭があった。翠玉のような色をした瞳を爛々と輝かせ、思わずこちらがたじろいでしまうような無垢な表情。ふっと目を逸らし、所在なげな視線を提灯にでも注ぎながら、片手でうなじをかいて返事をしようか。)「……あー、迷子か?お嬢ちゃん。トト様かカカ様は何処や?」(ヨズア人風の見た目が引っかからないわけではなかったが、子供相手に下手な警戒をしても仕方あるまい。なにより、火津彌は女に弱かった。……それにしてもこの娘、大丈夫?と言わんかったか?なんのこっちゃ、と胸中で誤魔化すように独りごちた。)「……ふっ。」(それから、少女に似つかわしくない大人びた呼び方に思わず笑みを零してからくるりと向き直った。兄さんやて。おませさんやなあ。)「おっちゃんが、一緒に探したろか?」(腰を屈ませてようやく目線を合わせる。その顔立ちも、肌の色も、やはり尊華人ではないようだ。異国の地でぞかし不安だろうと勝手に想像を膨らませ、にたあと不器用な笑みを作ってみせた。)   (6/2 17:07:41)


レモネード/ビナ > 「うえっ…………————いいよいいよ!私のことなんかっ、気にしないで。あはは。」(ビナは、目の前の男の提案に慎ましく遠慮の姿勢を見せた。変に、気を遣わせたく無かったのだ。ビナの両親は、もういない。それを態々言って何になるのだろう。だから、遠慮という形でお茶を濁させてもらう。出会いやふれあいが暖かさ、そんな喧騒が遠くに聞こえて、ここはそれよりも静かだった。夕闇の手先が薄らと伸び始め、夜の訪れを告げようとしていた。もう赤の反対側は青のようだ。そんな中で、閑散とした路地裏に立つ貴方の、不器用な笑みは、なんだかお化けみたいで、それがおかしくて)「ふふっ、にーさん、笑い方下手すぎ……っ!優しいんだね、にーさん。」(その不器用さから、不器用なりの、この男の優しさが滲み出ていた。普段からあんまり笑わないのだろう。取ってつけたような不格好な笑みがへんてこで、見る人が見れば怖がるかもしれないが、ビナは幼く見えることはあれど、それなりに修羅場を潜り、成熟した精神を持っているのだ。今更なんのなんの。)   (6/2 17:25:25)
レモネード/ビナ > 「それよかっ、にーさん、酔ってるみたいじゃん。ふらってたの見たよ、さっきさ、こう、ふらふら〜って。」(それより、そうだ。先ほどの言葉では、安否確認の言葉も心得違いに受け取られてた為に、その真意を口にして。)>ほずみん   (6/2 17:25:37)


〆鯖/火津彌 > (あなたの反応に一瞬の戸惑いを見たようにも思えたが、明るく、あっけらかんとした笑いにすぐに塗り替えられた。なんや、嘸かし不安やろうと思ったが見当違いやったか。なんだか肝の据わった娘や。尊華人なら、こうはいかなさそうなものだが。)「ん……そう、か?」(歯切れの悪い返事を返し、どうしたものかとまた項を掻く。あなたの鈴を転がしたような愛嬌のある笑いを耳にして、なんだかほっとしたように火津彌もつられてにへ、と更に表情を崩した。)「あ、あぁ……参ったな。よう言われんねん、それ。お嬢ちゃん、見る目があるなぁ。……そうやな、女の子には優しい方やで、僕は。」(自分で自分を褒めるという、彼なりの遠回しなジョーク。貴族らしさに拘って皮肉ばかり捏ね繰り回している普段から比べれば、随分とキレのないものではあるが。続くあなたの言葉に細い目をぱちくりと瞬かせ、酒瓶を持っていない方の手で顎を擦りながら唸るような感嘆の声を漏らした。)「……嬢ちゃん、ほんまによう見とるな。あー、まぁな。この古本市だって、小さい祭りみたいなもんや。祭りの日ぃくらい酔っ払ったってええやろ?」   (6/2 17:49:46)
〆鯖/火津彌 > (『色々あるんよ、大人にはな。』そう言いかけて辞めたのは、目の前の慧眼な少女に少し経緯を払ってもいいのではないかと思っての事だった。何となく、この娘とは対等に話ができる気がする。こんなに小さいのに古本市だなんて渋い場所に顔を出すくらいなのだから、なまじ阿呆な大人より賢いかもしれない。そうやな、竜灯とか、あのへんよりは。)   (6/2 17:50:02)


レモネード/ビナ > 「ん………ちゃんとわかるよ。なんたって、わたしってば『目が良い』からね。えへへ、『人を見る目』も、良いのさぁー、あはっ。なーんて。」(なんて、自分にしかわからない言葉遊びを弄する。ごめんね、わからないでしょ。視力が良く、『総てを見通す目』を持つビナの、秘密のこの国に習った尊華節。なんだか、自分でも笑ってしまう。えぇ、それだから、見えてしまうものなのです。貴方の子供には優しくしてあげようという心情も、なのに接し方が分からなくてへんてこになってしまうのも………。わたしは、ちゃんと見据えていますから。貴方のような男が、酔わなければならない、それほどの理由が、ある事も。『大人には色々ある』。貴方が口に出さずとも、どこまでも見通して、弁えているよ。慧眼なれば。それしき。)   (6/3 15:14:27)
レモネード/ビナ > 「そーかもね。ん〜〜………でもなぁー、心配だものなぁ………。じゃー、ちょっとわたしとお喋りしない?あんまり、お祭り楽しめてないみたいだったし、酔えるくらいには暇なんだろーしさ。」(なんて、貴方の顎に触れていた手を両手で引き、そんな細やかな提案をしても、良いだろうか。)「ほら、さっきそこで買った『鼈甲飴』、あげるからさ。」>ほずみん   (6/3 15:14:38)


〆鯖/火津彌 > (あなたの言葉の意味を読み取ろうと、細い目を一層細め凝らすように透鏡(レンズ)の焦点を絞った。こうしている間にもみるみる宵闇の帳が落ちてゆき、暗闇に合わせて黒色の瞳孔も広がってゆく。いつもの癖で翳目をしぱしぱと瞬かせ、それが一層堅物そうな人相に拍車をかけて。)「ふむ……?」(続くあなたの思いがけない誘いに、は、と息を漏らすが早いか、顎をさする手を軽く引くようにして掴まれて、蹲み込んでいた爪先がつんのめりそうになった。)「おゎ、なんや。え?お、お喋り、って…」(なんと行動力のある少女だろうか。年の頃は多く見積もって12,3くらいであろうが、将来有望というかなんというか…。男と違って女は、やはり幼くても女やな、と火津彌は思った。3つの赤子ですら父親を掌の上で転がすようになるのだから。早熟な子であればあと3年もすれば、男を手玉に取れるようになるのだろう。自分にはないその部分に少し憧れたような眼差しを向けて、あなたの誘いに『尊華節』の返事を返そうか。)   (6/3 16:11:19)
〆鯖/火津彌 > 「……鼈甲飴、か。くく……僕はこれに『目がない』んや。ようわかったな、嬢ちゃん。」(ニヤリとわらった。差し出された棒付きの鼈甲飴を受け取りぱくりと口に含みすっと立ち上がると、火津彌はあなたに手を差し出した。)「僕の事は火津彌のおっちゃんでええよ。本でも見ながら、駄弁ろか?」   (6/3 16:11:34)


レモネード/ビナ > 「ぷっ………ぷふふっ…………そかっ、良かったぁあ……。あっはは、楽し。やっぱキレが違うねえ〜、わたし好きだなぁ、そーゆーの。」(本場の尊華節に、思わずころころした笑いでユーモアを讃えた。すこし、息が軽くなる。)「わたし、今までこの味を知らなくて。あはっ、この味が好きでさ。なんだろ、ん…………と。ほろ苦くて、甘い……?————『懐かしい』味が、するんだよね。」(その鼈甲飴に夕陽に似た、憂愁を蒸発させんばかりの黄金を見出した。ふと、追憶する。ビナの人生において辛い記憶には、いつも夕陽が燃え盛っていた。痛いくらいの黄金が、心に染みる。心が、痛かった。でも、貴方がわたしを笑わせてくれたおかげで、その憂愁は蒸発した。あなたは、暖かい人だね。鼈甲飴を貴方にあげた。彼はパクリと豪快に一口で口腔に含んでしまって、どうやら、甘い物は案外好きなようだ。そのことに、少なからず安心を覚えた。)「火津彌の………おっちゃん……。いい字だね。」   (6/3 16:42:33)
レモネード/ビナ > (だから、その手を、安心して取った。自分のと比べると、数段大きく太い男の人の手。包み込まれてしまうようだ。)「わたし、ビナ。色んなところ、旅して、色んな国の人の言葉、聞いて回ってるの。『言葉の探究』をね、してるんだぁ。」>ほずみ   (6/3 16:42:47)


〆鯖/火津彌 > 「良かったぁ…?ふ、何を言う嬢ちゃん。そないな『甘言蜜語』で誘っておいて、その気にならん程野暮やないで、僕は。」(様子を見るような軽い言葉遊びであったが、わりと受けている様子に火津彌も調子づいてく。じわ、と口の中に広がる甘味に小鼻を少し膨らませながら喋るたびに串をぴょこぴょこと上下させた。こくがありながらも雑味は少なく、童心に返りそうになる味。)「あぁ、解るなあ。懐かしい味か、うん、その通りや。」(火津彌も一瞬だけ追憶に浸りそうになって、睫毛を伏せた。まさか、こんな事まで見抜かれる訳はあるまい。すぐに視線をあげて、またなんでもないような言葉を紡いでいく。)「うん。嬢ちゃんの言う通りほんの少しだけ苦味があって…それがなんとも言えんのよな。ふ、目だけやなくて、舌も案外肥えとるんやないか?」   (6/3 17:32:34)
〆鯖/火津彌 > (父と子か、兄と妹かのように手を繋ぎ合って、二人は初めて互いの字を明かす。あなたの自己紹介は少し予想外だったけれど、妙に納得がいってしまっている自分がいた。)「陽那……あぁいや、ビナ、か。」(それは些細な訛りで、尊華の名前を頭の中で当てた事など自分にしか解らない事なのに。ざわざ言い直してから、自己紹介を返そうとした。)「言葉の探求……ふむ?それでこないな場所に居る言うわけか。……言葉の探求、なあ。そうやな……僕も似たようなもんや。それで、尊華で収穫はあったん?面白そうやなぁ、ビナの話は。」   (6/3 17:32:49)