この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

再会

(火津彌&神音)

〆鯖/火津彌 > (卯の花の匂う垣根に時鳥早も来鳴きて忍音漏らす。立夏を過ぎたところの帝都は少し汗ばむくらいに暑く、箪笥の奥から引っ張り出した黒い絽の夏着物に袖を通し、竹の網代の夏草履をつっかけながら、火津彌は風呂敷包みを抱えて尊華帝國軍榮郷本部基地へと向かっていた。)…夏は来ぬ、か。そろそろ風鈴を出してもええ頃合いやな。(白い紐で括った長い髪を涼しき風がさらう心地よさに思わず目を閉じると、何者かにぶつかって風呂敷包みを取り落してしまい)…うお…っと。……これは失礼。   (5/11 14:44:00)
〆鯖/火津彌 > (その人物に目をやるよりも前に、ついつい地面に落ちた包みを確認してしまう。それは、守山防衛から帰還した部下に差し入れてやるつもりのものだった。三国を襲った狂水の大災害に見舞われた彼を自分は救う事が出来なかったし、守山防衛も事情により馳せ参じる事が出来なかった。極めつけにその部下は魔術の暴発で片手が不自由になっていると聞くから、詫びやら見舞いやらを兼ねて様子を見に行ってやるくらいの事はせねばなるまい。奴は辛党だから煎餅や酒の類でも良かったのだが、不自由な身体で碌なものを食しているかどうかも疑わしいと思うところもあり、火津彌が選んだ風呂敷の中身は馴染みの店の松花堂弁当だった。煎餅であれば、こんなふうに無残に地面に散らばって砂にまみれる事もなかったろうに。たは、と掌で額を抑え、己の失態を呪った。)   (5/11 14:44:04)


餡団子/神音 > 「いえ、こちらこそ軍人さんに迷惑かけてしまい申し訳にゃあか」(ふらりふらりと行き場のない旅。目的もなく生きるなど、死んで生きているものだと偉人は述べた。ならば、自分は時代に置いてけぼりにされた死人。立夏の爽やかな風に感じた思いはどこへゆく。蔑まれ、嘲笑われ、投げつけられた軍服は未だ売ること叶わずされど捨てることは出来ず意味のない布と化した。軍服に想いをはせたせいか、周りを見れば尊華帝國榮郷本部に綴る道。こんな場所にいたら、かつての部下にあってもおかしくはない。急ぎ足で、来た道をもどろうと振り返れば、人の壁。なんたる失態。衝撃に体はよろめき、数秒後べちゃりと間抜けな音と共に、落ちるは自分が求めてやまない食い物。大将軍時代好んで食べていた記憶がある松花堂弁当は綺麗な身なりから一変砂塗れの姿に、息を呑む。頑張って運んできたのに申し訳ない。相手がどんないい人か確かめるために視線を向ければ、時がとまる)   (5/11 15:07:03)
餡団子/神音 > 「火津彌……」(鈴のように透き通る声は遠くにいる戦友にも届く、唯一無二の音。声を聞かれた時点で言い逃れは出来ない。あらゆる楽器を弾いていた美しい手は、手入れが行き届いてないせいで爪が割れ、心ない人から踏まれたりしてアザだらけ。髪には魔力が宿るんよと白い紐で結ばれていた長く艶やかな濡羽色の髪も、謂れのない罪に対しての尋問によるストレスから白混じりとなり老人のよう。絹のように透き通る肌も、引き締まった体も身体は栄養失調によりボロボロで痩せこけたが、声だけはいつまでも変わることはない。背中に背負うは陰陽太極図模様が描かれ、白い帯が巻きつけられた杖。言い逃れは出来ない。逃げなければ、捕まりかの方と会えなくなる。それだけはなんとしてでも避けなければならないのに、厳しいながらも寂しげに任務をこなしていた貴方の顔がチラついて足が動かなかった)>〆鯖さん   (5/11 15:07:11)


〆鯖/火津彌 > (頭上から響く、自分の名を呼ぶそれは人の声というにはあまりに玲瓏な音色だった。夏を告げる風鈴のように爽やかで、透き通って、人の心を打つような、魔力のある神の音―――。どくんと心臓を跳ねさせ地面を見ていた顔を俄に上げると、肩をぶつけた人物は脳裏に浮かぶあの方とは似ても似つかない見ぐるしい乞食の姿で……火津彌はごくりと喉を鳴らし混乱する情報を手繰り寄せるように思考に変えた。導き出された、ひとつの答えは。)……かっ……神音……大将……官……。(数年前の元帥の代替わりがあったあの頃、帝國軍内部はずいぶんと荒れたものだった。政治、策略、権謀、狐と狸の化かし合い。その渦中に居たあなたは、元帥暗殺計画の首謀として軍を追われて。今はどうしているのか時折思い出さないと言えば嘘になる。現大将官の神楽はまだほんのうら若き乙女でしかなく、比べるなという方が難しかったのだから。)……そっ……あ…あの………あ………   (5/11 15:34:25)
〆鯖/火津彌 > (いざ対峙してみると、火津彌は己の身の振り方が全く解らなかった。女性は好きだ、弱き立場にある彼女らは、守るべき存在だ。しかし上司となると話は別。彼女らはただ守られていればいいだけの存在であって、己の席を脅かすようならば忠誠は誓えない。それは神楽大将官にも、白梅元帥にも抱くともなく感じている思いであった。したがって、雅螺先代元帥や神音大将官の居た頃の居心地の良かった帝國軍に、少なからず郷愁のようなものを抱いていたのだ。……だが、それもあくまで個人的感情に過ぎない。元帥暗殺計画がまことであったとするならば、今すぐひっ捕らえるのが憲兵としてやるべきことか。逡巡のすえ、火津彌ははあと息を吐き、今にも逃げ出してもおかしくないあなたに、いや、あるいはもう逃げ出しているのかもしれないあなたに声をかけた。)……どうせ引っ捕らえるのならば、共に食事をしてからでも罰は当たりますまい。……駄目になってしまった弁当を買い直しに、店に戻ります。……思い出話でも、していきませんか。   (5/11 15:34:29)


餡団子/神音 > 「……わっちは"大将軍"じゃにゃか」(二度呼ばれることのない名前(大将軍)は、過去にトリップするには充分すぎた。あの日の虚無が顔を覗かせるだろう。元帥に成ったばかりの義妹君は、先代元帥様とは似つかない方。水のように漂う方とは違い、天真爛漫であるにも関わらず冷徹を兼ね備えていた。自分を含め、先代元帥だからこそついてきた者達からしたら目の上のタンコブ。いつ殺されてもおかしくない状況でも、あの方は変わらず自分を突き通すが故に不満が膨れ上がる。あれやこれやとしているうちに突きつけられたは、元帥暗殺計画主犯の烙印。必死に叫んだ。わっちは違うのだと。しかし、声は届かない。冷徹故に、彼女は妨害となり得る自分を切り捨てるのは仕方がないことだった。冷たい牢獄の中で、国を呪いたくてもかの方が愛した人(国)を憎むことも許されず。血で描く詩は歌われる事もない。知らずに死ぬだけの存在になるぐらいならば、一度だけかの方の為に唄を歌わせて欲しかった。それすら、許されないのかとへばりつく絶望の海に溺れそうになった自分に呆れてか、狐火は燈る)   (5/11 15:54:05)
餡団子/神音 > 「捕まる気にゃかぁ。やけんどぉ、乞食は飯くれる人にはよわいから《ええよ》」(本来ならば逃げるべきだ。だけど、悲しげに見つめる貴方を見捨てるほど非情にもなれない。困ったようにへにゃあと笑う姿は、大将官と変わらない陽だまりの優しさで郷愁につかる火津彌に寄り添おうとし)>〆鯖さん   (5/11 15:54:12)


〆鯖/火津彌 > (猫のようにふにゃふにゃとした独特の訛り。ええよ、の言葉と共に痩せこけた頬に携えた笑みは痛々しさすらをも火津彌に覚えさせた。)……では、参りましょうか。こんな往来ではなんですから、たい……や、えーと……あなたは、陰で待っていてくだされば構いません。(自分の背に隠すようにしてあなたを先導し、躑躅に囲まれた小さな庭園へ入り込むと芝生に風呂敷を敷いた。ここならば、躑躅が壁になり身を潜める事ができるだろう。あなたを置いて徒歩数分の店へ出戻り、程なくして同じ弁当を4つ抱えて戻ってくると)……どうぞ、腹いっぱい、食べて下さい。   (5/11 16:26:20)
〆鯖/火津彌 > (火津彌も芝に胡座をかき、自分の分を開いた。『最後の晩餐がこんな弁当ですみません』とは言えなかった。この方をひっ捕らえてしまえば、もう獄ではろくな食事は与えられない事だろうが。『思い出話でも』だなんて言っておきながら何を切り出していいかわからず、煮物を箸でつついてもくもくと食をすすめるのであった。改めてあなたの姿を見れば、死装束に汚れた鉢巻のような布に、枷に…あまりにも異質で、さすがになんとかしてやりたいと思ったけれど、夏の陽気に軽装で出かけたせいであいにく羽織りはないし、差し出せそうなのは竹の網代の夏草履くらいだった。)神音様……裸足ではないですか。私の草履でよければ差し上げますが…………『下駄を履かせる』という訳にはいかず、申し訳ありませんな。はは……。(佐官程度の力では、あなたに下駄を履かせて軍に戻す事などできない。そんな申し訳無さを、尊華風の皮肉にひっそりと込めて漏らした。)   (5/11 16:26:24)