この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

最期の光

(ゼペタル&カヤ)

〆鯖/ゼペタル >  (スザンの攻城は、失敗に終わった。雨が止み、活火山の噴火音を耳にしながらゼペタルは走馬灯を見ていた。体中が激痛を覚え、両腕からは止めどなく溢れてゆく。このまま眠りにつけば火山灰が己を葬る事だろう。……‥走馬灯の中で、ゼペタルは笑っていた。――『俺は、シュクロズアの一番弟子だからな!』そう誇らしげに嘯くゼペタルを囲み、誂うように笑うのは旅団最初期の構成員達。輪の中心には今や偉大なる王と讃えられるシュクロズアが居て、微笑みながら蒸留酒を煽っていた。 ――『シュクロズア、俺を連れて行ってくれよ。……何でだよ、足手まといだって言うのかよ!』頭の中は武功を立てることばかりだった。唯一の師匠で、親だったあなたに認められたくて。 ――『…殺してくれよ、なぁ……!こんな目じゃ戦えない……あんたの弟子と言えないじゃないか!』視力を失い絶望した己を、もう一度奮い立たせてくれたのは紛れもなく戦だった。信仰だった。 ――『サラ、好きだよ。愛してる。』嘗て自分を愛してくれた、真名を教えた唯一の女性。それすらも奪われた人生だった。   (5/7 00:30:39)
〆鯖/ゼペタル >  ――『俺は、弟子を、やめない。……シュクロズアは生きてる、絶対に生きてる。』偉大なる王の失踪により、一度は脆く崩れ去りそうになり、そしてより強まった旅団の絆。 ――『随分増えたな、”シュクロズアリ”なかなかいい名前だしな。』  ――『俺たちの旅団に入らないか。』 『あぁ、もう俺もいい大人なんだよな。……見てるかシュクロズア』 『子供か……俺には縁のないことだ、こんな歳まで独り身なのだから。』 『孤独には慣れた。そう思っていたんだがな、……あんたの導きか?シュクロズア。』 『イシュア。イシュアだ、それがお前の名。……意味、か。ふむ。……そのうち教えてやる。』 『愚か者が…!二度とこんな事はしないと誓え。……シュクロズアに、ヨズアの神に。』 『気に入らぬなら出てゆくが良い!……お……師に牙を剥くとは何事だ!』 『……戦え。でなければ、お前は――……』    (5/7 00:30:46)
〆鯖/ゼペタル > 今にも死に絶えそうな痛みとは裏腹に、何故か体は軽い。走馬灯を見ながら、一歩、また一歩と。ゼペタルはいつのまにか歩みを勧めていた。たどり着けるはずもないのに。もう一度会いたいなどと、そんな願いがかなうはずもないのに。両腕からぼたぼたと流れる血は火山灰の上に染みを作り、彼の軌跡を彩る。ゼペタルは息を荒らげながら、死に絶えるその時までずっと足を動かした。…見たい、もっと。この景色を。…幻でもなんでもいい。天を仰ぐと、月と星の光が虹彩に映った。)……あぁ……俺も…お前のように飛んでゆければなあ。(一体、どこまでたどり着いたのだろう。その場所は生い茂る木々や花々は泣き出しそうなくらいに鮮やかだった。)   (5/7 00:30:49)


骨牌/カヤ > (目を醒ますと知らない場所にいた。なぜこんな場所にいるのか分からず寝台から飛び起きようとしたが、強い手足の痛みと頭痛、そして喉の渇きに襲われて断念する。二重に重なってみえる天井、汗で額に張りついた前髪を掻きあげ、その人の名前を呼ぼうとして気が付く。その人はもう傍にはいないのだと、貴方の懇願を無視して戦火に飲まれる神島に過去もろとも置いてきた。貴方の制止を無視して飛び出していったのはそれが最初ではなかった、そして最期になるとも思っていなかった。心の隅ではどこかで結びつくものがあると信じていた、運命。それはきっと赤い糸だ。どんなに道に迷って苦痛と絶望に身を焼かれることとなっても、貴方がわたしの光となり導いてくれるのだと)   (5/7 01:02:25)
骨牌/カヤ > ……くそ。(悪態を吐いて掛け布団をはねのけると、壁に手をついて立ち上がり衣類を整える。ここはいったいどこだというのだろう、なぜ自分はこんな場所で寝ていたのだろう、分からない。それがとても怖くてふらつきながらも扉を押して外に出ると人目を避けるように森の中へと入っていく。太陽が西へと傾きつつある刻限であれば草木が鬱蒼と茂る獣道を歩くのは堪えたが、豊かな自然の姿がある日のことを想起させた。それは初めて人に助けられた時のことだ、あの時も恐怖に駆られて寝台から抜け出し、どこへ続くのか知れぬ道を歩いた、そして……。視界が開けたかと思うと美しい花々が咲き乱れる草原に貴方がいた)   (5/7 01:02:36)
骨牌/咲夜 > ……ゼペタル?(豊かな黒い髪、優しさと同時に厳しさを感じさせる精悍な風貌、閉じられた眼、そこに立っているのは在りし日の貴方だった。あぁ、夢をみているのだ。こんな夢ひとつでさえ貴方に支配されていることにカヤは、イシュアは笑ってしまう。夢の中なならば少しくらい甘えたっていいだろう?そう自分に言い訳して貴方の大きな背中目掛けて駆け寄った、だが)ゼペタル、なんだよ、なんだよ、その手は! 嘘っ、なんで、どこで怪我したんだ、待ってろ! 今、オレがなんとかするから!絶対に、なんとかするから!(貴方の誇りが刻まれていた筈のそれが見当たらず、流れ落ちる赤をみて足は止まった。双眸を見開き動転のあまり叫び声をあげるとそう言いながら転がるように前にすすみ、貴方の背中を両手で掴んだ)   (5/7 01:02:57)


〆鯖/ゼペタル > (もう足は動きそうもない。ここが墓場か、上等ではないか。不思議と穏やかな気持ちに包まれながら森に抱かれるようにして座っていたゼペタルだが、その呼び声に振顔を向けた。……星月夜、鮮やかな花。全て幻に違いないけれど、なぜだかその声と姿だけは現実だと思いたかった。いかにも生意気そうな赤き眼差し、虚飾めいたきらきらとした金の髪。細身の体。頭の中で思い描いていたあなたの姿が今目の前にあり、ゼペタルは力なく微笑んだ。叫びながら、赤子のように背中にしがみつくあなたに優しい声を掛ける。)イシュア……何故ここに……。手…?あぁ、ちょっとな。……やらねばならぬことが……あったんだ。なあ、なあ。……顔を、顔を見せてくれ。(そう呟き、黒い瞳にあなたを写した。)……お前はこんな顔をしていたのか。……ふ…俺の、…若い頃に、そっくりじゃないか……。(お前の頬を掌で包んでやりたくとも、もうそれも叶わない。ただその視線だけがお前に限りない愛を注ぐだろう。ゼペタルはその頬に映える金の産毛の一本一本までもを、網膜に焼き付けんとした。)>イシュア   (5/7 01:27:01)


骨牌/カヤ > やらなきゃならないことって、なんなんだよ!こんな目にあってまで、やらなきゃならなかったことなのか!どうしよう、どうしたら、(鼓膜を震わすその声は間違いなく貴方のものだった。師匠然としたいつもの声音よりもずっと優しいその声が呼び水となって不安を掻き立て、腕を失ったその体を支えるように腕を添えながら前にまわると黒い瞳を覗き込み、矢継ぎ早にそう問いかけたが)……ゼペ、タル。(限りない愛に満ちたその眼差しには苦痛の一片すら浮かんでおらず、神経がとろけてしまいそうな優しい視線に喪失という名の恐怖を感じてなにも言えなくなった。貴方の服を掴んだ指が震えて思わず離れそうになるが、なんとか指先で繋ぎとめたまま俯くと、ぽたり、足元に咲く花の瑞々しい緑の葉を濡らしたのは涙だった)……いやだ。どこにも、いかないで。   (5/7 01:45:48)


〆鯖/ゼペタル > (産まれて初めて顔を突き合わせて見たその顔は、あなたらしくもなく涙に濡れていた。頭を撫でてやりたくて、肘から先がなくなった二の腕を動かしてみるも、距離感も何もかもつかめずに、赤い血があなたの額を汚した。)あ…ああ、イ…シュア……すまない……。もっと撫でてやればよかった。…もっと…抱きしめてやればよかった。(黒い瞳からぼたぼたと涙がこぼれ落ちる。『行かないで』と言われても、返す言葉もなくて。)……何を、遺してやれるだろうなぁ。……なあイシュアよ…儂以外に、真名を……教えるなというあの言いつけを。……ちゃんと守っているか?……済まない事をしたな。すまない…すま…な…(話しながら、ゼペタルの世界はひとつずつ色を失っていく。この幻も、長くはみせてもらえなさそうだ。)   (5/7 02:08:12)
〆鯖/ゼペタル > ……ほんとうは、戦ってなど……ほしく、なかった。……だが、おまえの師で居ることでしか、い、……られなかった。……俺も、親を、知らない……から……。(このまま死ねば、あなたはもう魔術師として戦う事はできないだろう。それが一番良いのかもしれないと思いながら、だけど、『お前から、空まで奪いたくはない』という相反する気持ちを、この期に及んで持て余していた。ゼペタルの髪は白く、瞳は灰色になってゆく。)………お前に、刺青を入れた男。覚えているか。……もし、お前が………お前次第、だが。……最後まで、俺の、弟子で居ることを選ぶのなら。……奴を尋ねろ。そして、「”アシェド”の名を貰った」と、……そう言えば。……わか……る……。(最期の言葉は、やはり酷く身勝手だった。押し付けがましい愛だった。しかし、他に贈ってやれそうな”言葉”をゼペタルは持って居なかったのだ。愛しているの言葉は、ついぞ伝えられないまま――――。)   (5/7 02:08:17)
〆鯖/ゼペタル > ( その日から、守山の森には約一ヶ月間雨が降り続いたという。大きな川が形成されるまで止まず、ようやく止んだそれは火山の溶岩流によりせき止められ、堰き止め湖とその出口として、滝となった。神秘の森に作られた滝は不思議なことに、晴れた昼間と月のある夜には虹が出続けた。後にその滝は、守山の名所として主にヨズアの民の間で語り継がれる事となる。『アシェドの滝』――いや、『イシュアの滝』だったかな? 噂と伝言は形を変えて大陸を遍いた。人づての噂なんて、そんなものなのだ。……やがて、誰ともなく定着したその名は、華瀬戸(ケシェト)の滝と言った。)  〆 (5/7 02:08:32)


骨牌/カヤ> (貴方の手が動く気配を察して顔をあげた。すると、短くなった貴方の腕がひらひらと動き、カヤの額に触れた。額に暖かな貴方の温度を感じて、また涙の雫が頬を流れ落ちた。激怒した客に四肢を切り刻まれた時も、劇団に捨てられた時も、一縷の涙すら流さなかった泣くことを忘れた赤い瞳が、ただただ貴方を思って涙を流す。頑是ない幼子のように何度も、何度も首を左右に振って貴方の『最期』の言葉を否定するけれど、徐々に色褪せてゆく貴方の光彩がその刻を知らせようとする)   (5/9 03:49:16)骨牌/カヤ> ……っ、うっ、(どうしたらこの時間をすこしでも引き延ばせるのか分からなくて、がむしゃらに首を縦に振った。反抗的な弟子だった、貴方の言葉のひとつひとつに反発しては杖で殴られ、家を飛び出し、貴方が叱ってくれることが嬉しくて、貴方の愛を試すようなことを繰りかえした。それでも『貴方以外に真名を教えるな』という約束だけを今日までかたくななまでに守り通りしてきたのは、それが貴方から初めて貰った宝ものだったから。貴方だけが知っていればいいと思った。ふたりだけの秘密だった。それで、よかったのに)   (5/9 03:49:26)
骨牌/カヤ> ……いや、いやだっ、だめ! お願いだから、まだ、(伝えたいことが沢山あるのに、貴方としたいことだって、見たいものだって沢山あるのに、神はすべてを奪い去ってゆく。ゆっくりと力が抜けて倒れてゆく貴方の躰を慌てて抱きとめ、首筋に頬を寄せるが、貴方の吐息が耳朶に触れることはもうなかった。貴方の躰はこんなに軽かっただろうか、両腕に掛かるあまりの軽さにまた涙が零れた。嗚咽がひっきりなしに溢れ出て呼吸すらままならない。これは悪い夢なのだ、またいつか貴方が自分を叱ってくれる、そう自分に言い聞かせて地面に膝を折り、貴方の躯に縋るしかなかった。時は黄昏、迫る闇に美しく見えた草花の色あいさえも褪せてみえる。ぽつりぽつりと降り出した雨がその体を濡らしても、カヤはその場を動くことはなかった。だが、どれだけの時間が経ったのだろう。雷鳴がなり響き近くの大樹に落下したのを契機に両手で顔を覆う。その指の間からは赤い涙が二筋の流れとなって零れ落ちるのだった)……オレを導いて、父さん。〆   (5/9 03:49:39)