この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

すれちがい

(アッシュ&レフィーネ)

クノ/アッシュ> ⋯⋯ホーリアから帰って来て目にした王都は、つい数日前の閑散とした空気など何処にも無く喧騒の中にあった。)「⋯⋯う、⋯⋯⋯⋯さい⋯。」((談笑の声すらもガンガンと頭の中を揺さぶってくる気さえして、誰とも目を合わせないように視線を下げて歩きながら、蚊の鳴くような声で現実から目を逸らそうとした。⋯⋯汚れてぼろぼろになった騎士団制服は、戦いがあった事を思わせるには十分。ホーリアが落ちた事も王都には伝わっていたが、⋯王都を襲った狂い水に対する特効薬が完成した為に、人々の表情は大方笑顔に染まっていた。騎士団本部に立ち寄った時はその限りでは無かったが。⋯王都に隣接するホーリアを守りきれなかった事は最大の落ち目である事は分かっていたから、強く叱責はされずとも感情は伝わった。)   (5/1 20:40:00)
クノ/アッシュ> 「⋯⋯やく、たたず。」((路地に入ってからアッシュはぽつりと何度も脳裏で響いていた言葉を漏らす。⋯見えてきた自宅。リルリルが無事な事は騎士団で耳にしていたから、取り敢えずは安心、するべき所なのは分かっていたのに、自分でも分かる程に、向かう足取りは酷く重かった。〝また同じ事を言われるんじゃないか。〟ホーリアを守りきれなかった事、リルを助けられなかった事、何一つ自分が力になれなかった事が悔しくて、⋯⋯怖い。すっかり前のようにモノクロに戻った視界の中、震える腕でドアノブを回し、小さく落ち込んだ鉛のような声で喉を震わせた。)「⋯⋯⋯⋯⋯⋯リル⋯。」((ただいまなんて軽い言葉はついぞ出ることが無かった。それでも貴女の名だけははっきりと口にした。   (5/1 20:40:02)


〆鯖/レフィーネ> (例の”命の水”から生還し数日の療養を経て、ようやくレフィーネは騎士団の本部に顔を出す事ができるようになっていた。軽くなった体はまだまだ本調子という訳にはいかないけれど、騎士でありながら今回の防衛戦に参じる事もできず、ただ臥せっている事しかできなかったのを謝罪するのが筋というもの、騎士道というものだ。本部では同じように病み上がりや前線から帰還した騎士達と久しぶりに顔を合わせ、ホーリア防衛部隊が帰ってきている事を知った。体調のこともありその日は早めに返されると、重い足取りで帰るべきところへ向かう。 あなたが帰って来たら、なんと声をかけるべきか…。考えても考えても答えが出そうになくて、うつむきながら歩いていたせいであなたが先に帰ってきている事に気づかず、玄関であなたの背中に頭をぶつけた。)……あ……アッシュさん。……お…おかえり、なさい……。   (5/1 20:49:54)
〆鯖/レフィーネ> (あなたの顔を見る事ができなくて、こちらを振り向くよりも先に足元へと視線を落とした。)ここ今回は、その……じゃなかった。えええっと……まずは、あああの……ご、ごめんなさい、色々……。わ、わわたし‥…。(きっと落ち込んでいるはずのあなたを励まして導くのはいつもならば自分の役目なのに、”命の水”の騒動でどれ程の迷惑を掛けたのか聴くのが恐ろしくてもごもごと口籠ってしまう。うっすらとある記憶が現実か幻かも解らないし、記憶にないところでもっと非道い事をしていたとしたら、もはや自分はここに居るべきではないという思いすら覚える。ビナとのキスも不可抗力だったとは言え、どう説明していいのか解らず、兎にも角にも…合わせる顔がなかった。)   (5/1 20:50:25)


クノ/アッシュ> 「⋯⋯⋯⋯あぁ⋯⋯⋯リル。⋯⋯⋯⋯ま。」((扉を開けて中を覗いた所で背中に走った衝撃。首を回して後ろを振り返ると、歯切れ悪く声と共に視線を落とし、向き直った。ただいますらもはっきりと口に出来なかった。⋯⋯「まともに喋れねえのかよ!」⋯⋯互いに視線すら合わせられず、昔に戻ったような気さえした。我慢出来ずに顔を上げても、変わらず視線は合うこと無く。何か口にしようと唾を飲み込んだ時、また貴女から口を開かせてしまった。)   (5/1 21:16:02)
クノ/アッシュ> 「⋯⋯⋯⋯いや⋯⋯、別に。⋯⋯その」((「元気になったんだな」「元に戻ったんだな」と言葉は幾つも浮かんだが、それを口にすることは出来なかった。どう見ても元気そうではないし、元に戻ったとも言い難い。抑揚無く、感情が希薄にすら感じられる声色で意味の無い言葉を紡ぐと、悔しげに唇を噛んだ。⋯お前はまた、何も出来なかったんだよ。仲間所か、愛する人一人救う事すら出来ない奴が、国を守れるはずがない。俺はただの役立たずで穀潰しだ、一体今まで、何ができたっていうんだ⋯⋯!!)「⋯⋯⋯お前の言う通り、守れなかったよ⋯⋯俺は。」((ついで出たのは自虐的な、諦め混じりの声だった。がくん、と首を落として貴方に背を向け、家の中に入ろうと扉を開き直すのだった。   (5/1 21:16:04)


しめ鯖/レフィーネ> (言葉にならない言葉。それは二人の間で交わる事もままならず、互いの肩を、足の間をすり抜けて消えてゆく。『生きていて良かった。』せめてその気持ちだけでも伝えたい、そうして伸ばそうとした手は背中を向けられて所在をなくすと、溜息と共に漏れたあなたの一言によって引っ込められる。)……な、……い、いま、なんて……?(『お前の言う通り』確かにそう聞こえた。思い出したくない記憶がふつふつと蘇るも、まだレフィーネは認められずにいた。あの時自らの言葉で傷つけたあなた、涙を流しながら震えていたあなたはただの幻だと信じたくて。)   (5/1 21:33:05)


クノ/アッシュ> (片手間に扉を開いて、背を向けたまま固まった。顔が見えない事をいい事に、眉間に皺を寄せ口を噤み、ドアノブを握っていない方の手を強く握りしめ、肩を震わせた。⋯⋯『否定』して欲しかった。貴女が言ったこと全てを。もう一度口にしてどう感じるのか、貴女の事を考える余裕すらない程に、疲弊しきっていた。何もかも打ち捨てて、縋り付いてしまいたかった。⋯⋯同じように合わせる顔が無くて、背中を向けたままアッシュはぽつり、と口を開く)「⋯⋯俺は⋯⋯『役立たず』で『ごくつぶし』だった⋯⋯。」((貴女があの時言った言葉の数々が本心じゃなかったのだとしても、一人でまた立ち上がることはもう出来なかった。奈落まで一緒と約束した貴女の存在が大切ゆえにの事だった。)「⋯⋯リルの言った通り、だった⋯⋯っ」   (5/1 21:45:23)


しめ鯖/レフィーネ> (振り向こうともせず、目を合わせようともせずにあなたはレフィーネの問いに答えた。その答えはレフィーネにとって残酷で、恐れていたものだった。もちろん真実を知りたいと言う気持ちは嘘ではなかったけれど、いざそれを思い知れば、『否定してくれるのではないか、何でもないと撤回してくれるのではないか』とどこかで浅ましい期待をしていた自分にに気付かされる。なんとか返事を返そうと喉の奥を震わせるも、『ごめんなさい』だなんて羽のように軽い言葉を掴むことができず、垂直に下ろした手を握ったり緩めたりして徒に時を無駄にするばかりだった。レフィーネの返事を聞くためにその場に留まってくれているあなたを引き留めるために、ようやく口にした言葉は時間稼ぎでしかないようなもので……) ……わ、わたし……。………わたしは、ただ………   (5/1 22:06:55)
しめ鯖/レフィーネ> (言い訳の出だしとしては常套句。震える声で紡いだ言葉があなたの生還を喜ぶ為の言葉でも、心にもない罵倒を撤回する言葉でもなく、押し付けがましい自分の感情の吐露にしかなっていない事に気づけない程、レフィーネもまた切迫した感情の行き場所を失っていた。)……あ、あなたに……英雄になって欲しい訳じゃ、あ……りません……でし、た。ただ……わたしも…守りたかった、から……。子供にっ……見せたく、なかったからっ……。戦争、なんて……。(まるで返事にもなっていない言葉がその場に散らかっていく。こんな台詞で何を考えているのか察しろと言う方が無理な話だ。伝えたいのはただ、『愛しています』それだけなのに。)   (5/1 22:07:19)


クノ/アッシュ> アッシュは背中を向けたまま、紡がれ始めた貴女の言葉を黙って待っていた。顔を合わせる勇気が無くて、こうして吐露する事を自分で選択したにも関わらず、視界に貴女が映らない事に苦しさを覚えてしまう。振り向いてただ、『愛してる』と伝えたいだけなのに。自信も勇気も何一つ握られた拳には掴めていなくて、言い訳じみているような言葉に、求めていた言葉が来なかった事に自分勝手に肩を落としていた。)「⋯⋯俺だって⋯⋯守りたかった。⋯⋯救いたかったよ、⋯⋯⋯⋯何よりも、お前を⋯⋯、俺が⋯⋯」   (5/1 22:31:48)
クノ/アッシュ> ((ぎゅううと一際強く拳と喉を締めて絞り出されたのは⋯⋯悔しさと嫉妬とやるせなさと。灰に戻ってしまった心の中でぐずぐずと燻る感情の凝り固まった何かだった。俺が一番誰よりもリルを愛している筈なのに。誰より大切に思っているのに、共犯者なのに。指輪だって。⋯⋯普段なら御しきれる筈の感情達が止めどなく溢れ出て、それを必死で飲み込むのに精一杯。⋯⋯扉の枠に片手の拳を叩き付けるように預け、そのまま体重も預けて、俯きがちに背中を丸めた。)「⋯く、そっ⋯⋯!!!⋯⋯俺が⋯⋯一番、お前を⋯⋯、⋯⋯いつも俺ばかり⋯⋯っ!⋯⋯なんで⋯⋯だよ⋯っ。なんで俺には⋯⋯」((いつもいつも、手を差し伸べられるのは自分だった。俺が引っ張ってやりたいとずっと願っていたのに、結局大事な時に自分はこのザマで。自分に力がなかったことが悔しくて堪らない。⋯⋯愛する貴方に頼られるような人間に、なりたかったから。歪んだ視界がまた波打った。   (5/1 22:31:50)


〆鯖/レフィーネ > (荒々しく感情を露わにするあなたらしくもない姿に、レフィーネはびくっと肩を強張らせてたじろいた。レフィーネの弁明は焼け石に水、火に油でしかなかったようで。軽く握った右手を口の前に、左手を胸の前に持ってきて、涙声が出ないように堪えながら立ち尽くした。自分が犯した失態、取り返しがつかない失言の数々に、『いつも、わたしは…どうして、私には……。』と、蓋をしていた劣弱の意識をあなたと全く同じように共鳴させる。もはや自分が何一つ信用できずに、意味のある言葉を発するのを恐れて譫言のようにあなたの名前を呼んだ。)……う……シン…。シンっ……。シンシアぁ………(それは、レフィーネしか知らない名前。何もかもすれ違う二人の間で、それだけが確かな絆の証だった。はずだ。)   (5/1 23:28:12)


クノ/アッシュ> どきりと胸が跳ねる。⋯⋯家族はもう居ないアッシュにとって、その名は貴女だけが呼んでくれる秘密の愛言葉だった。丸まった背中のまま、はっと首だけを僅かに持ち上げて、我慢出来ずに横目で貴女を見た。白と黒と、灰色の自分の単調な世界の中に一つだけ。どうなってもあなただけは眩しく綺麗に彩られていた。⋯⋯想いが昂るに連れて、体がゆっくりと貴女の方に向いていく。最終的には再び向き直って、胸元に当てられた左手の手首を掴んでぐいっと貴女を引き寄せた。)「⋯⋯⋯⋯っ、⋯⋯⋯⋯リル⋯。⋯⋯その、名前は、お前だけが呼んでいい、名前だから。⋯⋯⋯⋯だから、お前のその名前も⋯⋯俺だけ⋯だよな⋯⋯っ⋯!?」   (5/1 23:53:23)
クノ/アッシュ> ((守れなかったこと、救えなかったこと、役立たずでもごく潰しでも今更、貴女を失うなんて事はもう耐えきれなかった。自分だけを見ていて欲しかった。それがいつかの約束で、いつかの誓いで、いつかの勇気を出して自分から口にした想いの結果。手首を掴んだまま、胸元に引き寄せた小さな貴女の肩に両手を置いて。弱々しく潤んだ瞳で貴方を見下ろした。)「⋯⋯こんな俺だけど、必ず守る、リル⋯⋯お前を助ける⋯⋯支えるから⋯⋯⋯⋯だから、俺だけ⋯⋯っっ!」((肩を掴んでいた手はとても弱々しくて、いつしかするりと肩を通り越し、そのまま首に回してしまいそうだった。   (5/1 23:53:33)


〆鯖/レフィーネ>(手首を掴み強引に惹き寄せられ、驚きで目を開きながら逃げるように逸らしていたあなたの顔を見る。初めて出会った時を思い出すような光のない淀んだ黒に、レフィーネも灰色の世界を垣間見る。必死な顔で紡がれる言葉にレフィーネは思わず凍りつき、声にならない声を漏らした。)……ぁ……の……そ……れは………。(あなたの手には抵抗をせず、されるがまま。しかし、その願いだけはどうにも叶えられそうになかった。)   (5/2 00:15:40)
〆鯖/レフィーネ> ……ごめ……なさい……わ、…わ、わたし、わたしっ……!あ、あの子に……た、助けて、もらってっ……命を……救われて…だから………で、でも……でもっ…!こ、こ、後悔してません!シ、シンだけのものはっ……真名、だけじゃないから……えっと、例えば、その……こ、こうしていいいっしょに、暮らしたり……あの、い、いいいいっしょに寝たり、その、ミトラでのことだって……は、はじめて、でしたしっ……キ、キ、キス、しちゃったけど、あの子と…でも、それは、その…!(焦りのあまり余計な、言わなくても良い事まで口にしながら、レフィーネは捲し立てた。失言が失言を呼び、転げ落ちるかのように冷静さを失っていく。)   (5/2 00:15:45)


クノ/アッシュ> (共犯者から始まった俺達の不思議な関係。リルの言った通りゆっくりじゃあ無かったけれど⋯⋯その位。俺はリルに心を奪われていた。きめ細やかな肌も、宝石のような自分とは違う綺麗な瞳も、可愛い笑顔も何もかも、好きになっていた。愛している。いつだってそう、お前だけを見ている。⋯⋯それを口に出せなかったのは少し自分が嫌になるけれど⋯この気持ちは確かに本物だった。だからリルが俺だけを愛してくれているなら、もう俺は───)「⋯⋯⋯⋯⋯⋯、⋯⋯えっ⋯。」((何もかも、崩れ去っていく音がした。⋯俺が居ない間に。⋯回し掛けていた腕から一瞬力が抜けて、思わず一歩後ろに下がる。⋯⋯俺が助けられなかったから?俺が負けたからか、⋯なんで。)「⋯⋯⋯⋯なん、で、」   (5/2 00:41:23)
クノ/アッシュ> ((目を見開いて、気持ちだけがそのまま零れた。視界がぐらついた。⋯⋯この世界にたった一人で放り出されたような気さえした。一度切られた堰、止めどなく溢れる、隠していた激情がぽつぽつと息と共に、漏れだす。)「⋯⋯なんで。俺はお前をこんなに愛した、のに。⋯⋯俺じゃ、駄目なのかよ、やっぱり⋯⋯俺じゃ⋯俺なんかじゃ⋯⋯!!⋯そんなもん、だったのかよ⋯」((⋯⋯俺は愛してるのに、愛してるのに⋯⋯!!視線を下げて、だらんと両手を垂らしてから震える程に力を込める。短い睫毛に雫が輝いた。ブレる視界の中で掠れた息を絞り出すことしか出来なかった。   (5/2 00:41:24)


〆鯖/レフィーネ> …シン、ちがう…わたしだって………聞いて…シン……。(弱々しい否定の言葉は届かず、徐々に語気を荒らげるあなたの姿に青ざめながらレフィーネは首を振った。相手が小さな少女だった事や、薬を飲ませてもらう為の不可抗力だった事。伝えようにも躊躇してしまうのは、言い訳にしかならない事だと思っていたからだった。谷の古いしきたりじみた貞操観念の高さゆえというべきか、生来の思い込みの激しさゆえか。レフィーネのほうこそ、『シンシアだけ』に拘っていたからこそそれは否定するにしきれず、確かなる不義、不貞に己を責めた。)……ごめん、なさい。ごめんなさい……!!もっ、も…う……あ、あなたに、愛される資格、ありませんよねっ……ごめんなさい……あああ愛してくださいと、わわわたしが、いっ、言ったのにっ……(ぼろぼろと涙を流して、なりふり構わずに顔をぐしゃぐしゃにして。――そのまま踵を返して”ふたりの秘密基地”を後にしたのは、あなたの返事を聞くのが辛かったからというよりも何よりも、レフィーネは自分に科した罰だった。一番つらいのは、あなたの側にいられない事だから。)〆   (5/2 01:15:03)