この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

命の水-治療失敗-

(ゼペタル&カヤ)

〆鯖/ゼペタル > (放火魔は必ず現場に戻ってくるのだと言う。己の手で作り上げた惨状を見届ける、それをして始めて〝仕事が終わる〟からだ。ゼペタルもまた王都の街の片隅に舞い戻り、道の真ん中にぽつんと立ち尽くしていた。自分が降らせた雨は止み街全体がもぬけの殻になったかのような静寂。いつもなら賑わっているはずの大通りが廃墟のようになっている異様な空気を肌で感じ取り、歪な笑みを漏らした。一度は喪った真名をもう一度蘇らせた時に、もう〝ヨズアと共に滅ぶ〟という甘い逃げ道は断たれたのだ、生きる事も死ぬ事もままならないのであれば、どちらともつかぬ死神にでもなってやる。それがゼペタルの覚悟だった。 こつこつと杖の音を湿気た空に響かせて手負いの足を引きずりはじめる。さあ、もう充分だ。)……おや。   (5/1 01:09:06)
〆鯖/ゼペタル > (人目を憚るように道の端から路地裏に移動して歩いていると、杖の先が何かにぶつかった。杖の先でぐりぐりとその感触を確かめる。ぐ、と沈み跳ね返される肉の感触。大きな野良犬でも行き倒れたのか……。 否、小さなうめき声を耳にしてそれがまだ息のある人間であることをようやく悟った。)……っ…!これは……申し訳ない。儂は盲でしてな。……あぁ……もう、聴こえていないのか……?(その場にしゃがみこみ、刺青の入った手を見られるのも構わずその人間に手を伸ばす。丸められた背中に触れると、ぐちゃ、と濡れた布の感触がした。)   (5/1 01:09:16)


骨牌/咲夜 > (ぐるぐると視界がまわる。まわる、まわる、硬い地面がまるで泥沼のようで、地面に指を這わせてみるけれど自分が触れているものにすら現実感がなく、近付く足音にすら気付くことができなかった。猛烈に喉が湧いて、四肢は痛み、舌は縺れて、正確に言葉を吐き出すことさえできない。一度、どこか天井のある場所に導かれた気もするが症状は快癒に向かう様子をみせず、恨みつらみばかりがをひたひたと心を満たしていく。その時、なにかが脇腹を突いた。腹を小突かれた衝撃で新鮮な空気と水を求めて開いた唇の隙間から、「あ゛ー、あ゛―」という意味のない言葉の羅列が零れ落ちる。整った歯列の間から赤い舌を揺らめかせて、自分になにが起きたのかと視線のみをもちあげた)   (5/5 23:26:00)
骨牌/咲夜 > あっ……あぁ、う……ゼ、つぅ…ぐ!(背中へと伸びた手に刻まれた模様は、歪んだ視界でもはっきりと見て取ることができた。忘れるものか、その手が、その指が、貴方だけが、わたしを助けてくれたのだから。あぁ……その先は胸の中でさえ唱えることが出来なかった。これは幻覚がみせる夢だと分かっていても、もがくように両手を伸ばして貴方の腕に縋りつく。この苦痛の海から救い出してくれるのはいつだって貴方だった。ただ記憶のなかの光景と違うのは掴んだ腕が随分と痩せて細っていること、猛烈な違和感と痛み、そして水への渇望がごちゃ混ぜになり激しい頭痛となって発露し、ぎゅっと両目を瞑るとその言葉を口にした。)あ゛、あぁ、……たす、けて、ゼペタル。   (5/5 23:26:19)


〆鯖/レフィーネ > (間違いなく己の名を呼ぶその声に思考の一切を停止し、ゼペタルは目を見開いた。お前と初めて出会った日を否応なく思い出す。野良犬のように倒れ、今にも命を落とそうとしてたお前をなんの気まぐれか助けたあの日。”幻”にすがりつくように伸ばしたその手を掴み、握り返す。ゼペタルが命の次に大事にしているその杖が石畳の上に落ち、からんからんと音を立てた。俺の降らせた狂い水は最も奪ってはならないものに手をかけていたのだ。)……イシュア……ッ!(己が死に損なったのは、お前をもう一度救う為に神が生かしてくれたのだと思った。そうでなければ辻褄が合わない程の数奇な出会いなのだから、必ず――必ず償う。かつてお前に言いかけた『償え』の言葉がこんな形で返ってくるなどとは思いもよらず、ゼペタルは、震えた声で、かつて呼ぶ事のできなかった真名を呼ぶ。あの時には無かった名前。)…助ける…助けるとも。……我が子よ。(雨がやんだはずの王都。石畳に、ぱた、ぱた、と水滴が落ちた。)   (5/5 23:49:35)
〆鯖/レフィーネ > ……誰ぞ、誰ぞ手を貸してくれ…!(ゼペタルは老体に鞭を打ちあなたを起き上がらせると、そう叫んだ。己の手で苦しめたウェンディア人に対して、それはあまりにも身勝手な要求。しかしそれほどまでに必死だったのだ。そのうち宿屋と思しき人物が現れ、二人は部屋を充てがわれる事になった。ゼペタルはあなたが目を覚ますまでの数時間か――数日か。その間中ずっと、宿屋に平謝りをしながらも看病を続けた。……主人の恩義のおかげでツケにして頂いてるこの宿賃を払う宛はもちろんない、あるとすれば、それは――)……ホーリアを、奪い返したばかりだと言うのに……。全く儂も、どこまでこの老体を酷使する気だろうな。……しかし……そうだな……(宿屋の窓を少しだけ開け、外の風を頬に浴びながらつぶやいた。)ようやく死ねるのかも、しれん。   (5/5 23:49:41)


骨牌/咲夜 > (掴んだ指が縺れて剥がれ落ちる前にその両手は捕まれた。貴方の手に刻まれた模様がまるで生命をもった植物の蔦ように動いて見えた、その蔓が未だ治りきらぬ傷のせいで刺青をいれることが出来なかった両腕に絡みつき蕾をつける。膨らんだ蕾はすぐに綻んで白い花を咲かせた、杏の花だ。カヤはその花をみて心底幸せそうに笑った。貴方のもとに帰ってきたのだ、帰って……ぐるぐるとまわる視界の中で神島の美しい景色が鮮やかに蘇っては混ざって姿を変える。さながら万華鏡を覗いているかのようだ。ぽたりと、地面に落ちた涙に指を浸した。その水面からも緑が茂り、花が咲く。多くの者を偽りの幸せ絵に浸した生命の水すら与えてはくれなかった幸せが脳髄を溶かし、呼ぶべき名前をなんとか紡ぎ出したその舌は、呪が抜けるまで二度と貴方の名前を呼ぶことはなかったが、貴方に導かれた先で子供のように甘えたのは確かだろう。   (5/6 00:15:40)
骨牌/咲夜 > この世に生を受けてから一度も、誰かに甘えることのできなかった、許されなかったその身が果たしてどこまで貴方をどこまで受け入れたのか、ただしく人の子のように甘えられたのかは分からないけれど、きっとその言葉のすべてに頷き、貴方の与えるものを受け入れたことだろう。それが、カヤの望みだったから)……ん、あっ、あぁ……う、……。(けれど、幸せは長くは続かない。寝台に横たわりながら頬に風があたるのを感じて目を開いた。窓から流れ込む初夏の風に揺れる貴方の白い髪。いつの間に雪でも振ったのだろうか、白くなってしまったそれに触れようと手を伸ばすが、感覚の狂った瞳では距離を把握することができず指先は宙を切る。その耳に貴方の決意に満ちた呟きは届いてはいなかった)   (5/6 00:15:53)