この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

命の水-特効薬完成-

(レフィーネ&ビナ)

〆鯖/レフィーネ> (レフィーネを苦しめているものはもはや狂い水の幻覚によるものよりも、己の行動が招いた末路だった。秘密基地にアッシュが汲み置いた水を妊婦のように腹が膨らみたぷたぷと音がするまで飲み干し、そして吐く。噴水の獅子像がそれだけを役目に生きているのと同じように、ひたすらそれを繰り返していた。ひっくり返した床の水、瓶の中の水滴。全てを飲み尽くしてもなお満たされる事はなく、緊張と弛緩を繰り返す足で水を求めて蹌踉として彷徨う足は基地の外、王都の街へと。途中途中で水を吐きながら、川や噴水や市場のミルクを探すも、たどり着く事が出来ぬまま誰にも気づかれないような路地裏で力尽き、どしゃりと地に崩れ落ちた。)……う……み…ず……(体の中にはこんなにも水で溢れており、手も唇もふやけているというのに。レフィーネは今まさに狂い水に溺れて息絶えようとしていた。)   (4/30 21:59:27)


レモネ/ビナ > 「ふへへっ……やったぁぁ……っ!やったやったっ、ついに完成したんだぁぁぁあはははっ!」(気持ちを押さえ込む、というのは無理な話だった。歓喜雀躍のステップで軽い足取りはリズムに乗って。擽ったいくらいの達成感は、涙が出そうなくらいだった。そうだ。もう大丈夫なのだ。わたしたちはやった。ついに、ついに完成したっ!身震いする程に幸せだった。ガデューカおねーさん司祭とライキョウくんの尽力によって、ついに【命の水】の特効薬が完成したのだ。臨床試験は成功した。五人に与えた所、五人に確かな効果的な薬効を示したという報告を先程聞いた。わたしたちの戦いは、勝利を飾ったのである。これを喜ばずにいつ喜ぶか。昂り、肺胞一つ一つに熱を封じ込めていたビナは、火照る体を鎮めようと外に飛び出した。そうして、前述したように、踊るような足取りで川岸の流れる清流に人目も気にせずぴょんぴょん跳ね向かうのであった。耳を撫でるような、優しいせせらぎをさらさら鳴らす川筋に沿って、しばし漂泊する。   (4/30 22:17:29)
レモネ/ビナ > そして徐に歩きながら、光をくしゃくしゃにしたような照りを見せる水面の鏡面に向かって、ビナは勝ち誇ったように笑いかけた。『お前の負けだよ、ばーか。』いたずらに、無邪気に、犬歯を見せたおのれの顔が、透明な水に映る。さららと流れる悪魔の水。飲めば幸福、その後地獄。たちまちに精神を壊し、かわりにロクでもない不要な命を吹き込まれる悪意の水。)「雨垂れの音が涙の音である必要は……もう、『ない』っ!」(それは、勝利の宣言だった。あの夕陽の空の元の誓約を果たした。今度こそ、わたしは救うことができるんだ。理不尽に怯える人々を、涙を流す苦しみに震える人たちを。かつてのわたしのように、劣情に落ち潰される思いを、背負わずともいいのだ。それを可能にさせる、この『薬』を、わたしは胸に抱きしめ、奇跡にただただ感謝しよう。水清ければ月宿るとは本当だったらしい。あぁ、祈りが届きましたことを、そして聞き入れてくださったヨズアの古い神々を。感謝、感謝します。ダー・ニト・ロロイ・シュクロズア。 ———その時、覚えのある匂いが……)「あっ………」   (4/30 22:17:44)
レモネ/ビナ > (———どうして あなたが。 ———それは きけん 川のように流れ去っていく言葉の数々。わたしの意思など見向きもされず、虚な目をしたあなたが、そこにいた。 ぽちゃり ぽちゃん ぷちょん ㅤㅤㅤ体の芯を抜かれた人間は、あのようになってしまうのだろうか。あんな、よりにもよってそんな姿で、再会したく、なかった。 涙が出たのは、なぜだろう。 懐かしいお花の香りも擦れ…… 覆水盆に返らず その事実が、身勝手に堪らなく悔しい。 幻のように、揺れるあなたの輪郭が朧気で、それは頬に伝うもののせいだ。拭った。泣いていられない。わたしは、救う人を見つけた。あなたの後をついていく。水を含んだ袋を地面に落とすように、どちゃりと倒れ込むあなたに、わたしは思わず駆け寄った。)「だ、だいじょうぶ……っ?、ね、ねぇ!あ、あっぅ、しっかりっ!!あ、 あぁ、こんなにお腹が……っ!」(崩れて、形状すら保てなくなりそうなあなたを、必死に押さえ込むようにビナはあなたを抱き抱える。間違いない。いや、見間違えるはずがない。あの時の、花祭りであったお花の妖精さん。膨れ上がった彼女のお腹には、どれだけの水を飲んだのだろうか。   (4/30 22:18:15)
レモネ/ビナ > 助ける方法を知っているのに、自分が何をすれば良いのかわからなくなってしまうくらい、わたしは衝撃に打ち拉がれていた。)「そ、そだっ、く、くすり……薬あるの……ッッ!ね、ねぇっ、飲める、かな……っ!うぅ、ぅぐすっ、ねぇえ……」(涙が抑えられない。ガンガンと頭痛で頭が熱い。でも何よりも、目が熱い。抱き抱える方とは逆の手で懐から、完成した奇跡の液体が入った小瓶を取り出しながらも、現実を受け止めるので、ビナは精一杯だった。あなたの、その、変わり果てた惨い姿が、認められなくて。思い出の中だけで微笑むあなたとは、あまりにも乖離してしまっていて。その思い出の中のあなたを取り戻したくても、今のあなたの姿を認めたくなかった。)>お花の妖精さん   (4/30 22:18:26)


〆鯖/レフィーネ > (自分の体が自分のものではなくなっていく感覚に、いよいよ”飲んだのではない、飲まれたのだ”と悟る。びくびくと痙攣する体。割れるような頭痛。もはや自分がどこにいるのかもわからずに、レフィーネは北国の海の打ち際を幻視していた。こちらへ駆け寄るだれかの姿。抱きかかえられると思ったよりもその腕は細くその体は小さく、あぁ、水を飲みすぎて自分の体はこんなにもむくみ、膨れ上がったのかと妙に納得がいっていた。 ――『⋯⋯、レフィーネ⋯⋯?』『だ、だいじょうぶ……っ?』『⋯⋯⋯───レ、レフィーネ⋯ッ!?っおい!』『ね、ねぇ!あ、あっぅ、』『しっかりっ!!』『しっかりしろ!!!』『あ、 あぁ、こんなにお腹が……っ!』『おい、おい!!⋯⋯ほら、俺に合わせて呼吸…』『そ、そだっ、く、くすり……』――『レフィーネ⋯⋯!』頭の中で声が反響し、重なる。)「……あ、あ……な……」(『あなたは――……』もはやその一言すらも紡げず、魚のように口をぱくぱくと動かした。レフィーネの唇が求めているのは水、いや、酸素。いや、違う、もっと別の何か……。――何があるって?)   (4/30 22:40:49)


レモネ/ビナ > 「ひぐっ……うぅ、あぁ、くそっ、くそくそっ……なんでぇ……なんで……っ!ばかぁぁあ、なん、んで!こんなに……」(何が、『言葉』の探究者だ。何も言葉が出てないではないか。今だけは、そう嘲笑されたっていいくらいに、わたしは無様に見えた。かける言葉がない。言葉の探究者と我儘にも名乗るわたしが、皮肉すぎる。)「『揺籠の微睡嬰児の安楽孺子の逡巡壮者の猛り老輩の達観人間の断片夕陽の玉響揺らめいて主は洞観すダーニトロロイシュクロズア』ぁぁ……っっ!——いいっ、いいんだよっ…もう喋らなくても、わかるからぁ……!」(持ち前の早口で、一息で呪文を唱え切ってしまった。もう、無心だった。祈りだって、違うものだった。あなたを助けたい。助けたいから、唱える。『言葉』自体に力を宿すこの世界で、本当に良かったと思った。)「くすりっ、あるから……!助かるんだよっ!」(きゅぽん。栓を抜く。)「あ、あぁっ、でも……っ!どうしたら……っ!」   (4/30 22:56:33)
レモネ/ビナ > (原液の強い薬だ。水に薄めて使うものだが……あなたのお腹は、たっぷりと薄めるものがある。丁度、いい。だけどどうやって…… その時、わたしの脳に、あなたの『思考』が、路地裏の通り風と共にビナの心を揺れ動かした。くち、うつし……。い、いやっ、でもでもっ、そ、そう!緊急事態!しかも、同性だから、その、ノーカン……?こんな時だからこそ、馬鹿っぽい思考になる自分を軽蔑する。栓を開け、揺れる薬。あなたの唇。交互に見て…… えぇい、ままよ!)「強烈なの飲ませるから、我慢して……初めてだったら、ご、ごめんね……っ?わたしも、初めてだから……っ!んっ…!」(薬を咥内に含み、焼けるような苦さに顔を青くさせるビナは、すぐさまあなたの唇と唇を繋ぎ……薬を注ぎ押し込む。暴れても仕方ない。でも、あなたがどんなに暴れようとも、これしか方法がないのだから、救う責任を持つ者として、あなたを放す訳にはいかなかったのだ。)>お花の妖精さん   (4/30 22:56:46)


〆鯖/レフィーネ > (あなたの小さくて柔らかい手と唇が触れ、レフィーネはそっと祈るように目を閉じた。自分が見ているものが幻覚であると頭のどこかでは解っているのに。それが感触として与えられた不思議に、何か霊性めいたものを感じて。それは自身を包み込む太陽神の光のよう…いや、もっと優しい、そう、夕陽のような暖かさだった。『……アッシュさんじゃない。女神さま?妖精さん……。あなたは…?』くたりと手足を投げ出しとろりとした意識の中に沈もうとすると――突然の焼けるような苦みが、気付け薬のようにレフィーネの意識を殴った。)……ッ……!……!?   (4/30 23:23:50)
〆鯖/レフィーネ > (目を見開いて一瞬――正気のあぶくが一つ。こぽ、とレフィーネの淀んだ水のような意識中を上がる。目の前の妖精さんだか女神さまだかの顔はあまりに近すぎて見る事は敵わず、あなたの瞳の代わりにかち合ったのは額に入れられた刺青の眼差しだった。正気の泡沫は水面に消え、そしてまた一つ、二つ。こぽ。こぽこぽ。レフィーネの淀みの中を空気の玉が上がってゆく。『……驚かないで聞いてね。そして、信じて。』夕陽と共にフラッシュバックするあなたの姿。…王都で会った旅人の少女。名前は、たしか――)――……ぃ…………ナ……‥?(あなたが口内に流し込んだ薬は、”命の水”を制圧しようとしていた。弱々しく拳を握り、レフィーネもようやくこの悪意に抗う意志を見せたのだった。「生きたい」と。)   (4/30 23:23:54)


レモネ/ビナ > 「〜〜〜〜!にっがぁー……」(ソフトな唇の感触。自分の口の中の物が、あなたの体の中に入っていく感覚。なんだか妙な気分になるが、これしか方法が無かったのだから仕方がない。深海に沈むあなたの体を、ビナは掴んで引き釣り上げる。あなたは、まだ、生きてていい。涙を飲み、苦痛に喘ぎ、それでもあなたを信じ続ける、あなたの帰りを『待つ人』が、きっと居るはずだから。あなたは、まだ、『生きたい』と願っていい。泡沫のような命は確かな意志を持って、命を燃やす。あなたの変化、わたしの名前を呼ぶあなたの声が)「っ!び、びな!そう!わたし、ビナだよ!妖精さん、おぼえてる……っ?わたしのこと、わ、わかるかなっ!」(———こんなに、わたしの胸を弾ませるものに、なるとは。 人生、流るる川のように、生生流転。あなたの声でわたしは涙が流れるように。あなたの決意は確かな心臓の脈動となって力強く流れるように。底流。形に出ない変化の流れを、尊ぶべし。【命の水】は、それをわたしたちに教えてくれた。雨は、晴れ、わたしの頬を伝う嬉し泣きの涙滴は、プリズムに″虹″を顕した。あなたの瞳に映った少女の顔は、左手で描いた似顔絵みたいだった。)   (4/30 23:43:15)


〆鯖/レフィーネ > (レフィーネの頬にあなたの涙滴が落ちて伝う。体はまだ思うように動かないし、頭は痛いし、お腹は張って苦しいけれど。もうその水を欲していない事が、ようやく水面上に上がる事ができた唯一の証だった。――あなたは悪意に打ち勝ったのだ。『ビナ……』あなたの言葉に言葉を返そうと口を開くも、口内に響くのは唾液の水音だけ。『妖精さんなのは、あなたです。』伝える事のできないもどかしさに、レフィーネも水を溜め込んでいたダムを決壊させた。涙腺から瞳、瞳から頬へ、頬から耳へ流れ落ち、レフィーネの長い耳の先へ、地面へと水が出ていく。晴れに向かって、虹に向かって、太陽の輝きに向かって。止まない雨はないというウェンディアの言葉にますます信仰と魔力が滾るのを感じ、レフィーネは最後に最も「力のある言葉」をあなたへ贈る。)……わ……(弱々しく手を胸の上に置き、「わたし」の意を表す。)……り……る…りる。(力を宿す為につけた名前は少し長くて、一番短い形で自分を表す愛称を伝えた。言葉の探求者であるあなたであれば、古きエルフのこの言葉の意味がわかるだろうか。――もしかしたら自分よりも深く。)   (5/1 00:09:02)


レモネ/ビナ > 「りる、りる……リルリル。そかっ、いい『真名』だね。」(人の思考を覗く魔術。あなたが名乗った名の二つの意味を、ビナはちゃんと知っている。一つの意味はその名が『真名』であること。もう一つの意味とは、その名に含まれた『真の意味』。古い、とても旧いエルフの古語。言葉の探究者であるビナであったからこそ、その名の意味を推し量れた。リルリル。リル(lil)とは『小さな』という意味があり、その他にもリル(Lilou)『可愛らしい女の子につける名』としての意味も持つ。しかし、もっと古くは、『リル・リール』という言葉もある。リール(rire)とは『笑う』ともあり、そしてリル(Lilou)とは『百合』という意を持つことを、ビナは知っていた。百合の花言葉は、『無垢・陽気な』。『陽気な・無垢の笑みを浮かべることができる子になってほしい』という願いが、ビナを察しつけた。)「泣いてちゃ、だめだよ———、あなたには『笑顔』が似合うのだから。」(幸せには、涙は似合わない。喜びの後には、必ず『笑う』もんなんだぜ。だから、お手本として、ビナはㅤㅤㅤにへっと、満面の笑みを浮かべようか。)   (5/1 00:47:07)
レモネ/ビナ > 「わたしの真名はね、『リモ』っていうんだ。リルリルちゃん。意味は、秘密だぜ。」(だから、これからは、あなたが、ちゃんと笑えるような道に、わたしが戻してあげるだけだった。気持ちいい風が吹く。水の音を、掻き消して、過ぎていく。)〆>お花の妖精さん   (5/1 00:47:17)