この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

戦争前夜

(アッシュ&レフィーネ)

クノ/アッシュ> 「⋯⋯ああ。リル、ちゃんと、いるぞ。」((リルだけが知る俺の本当の名前。何処か上の空な声色ではあったし、先日の罵倒も正直に言えば引き摺っているけれど、貴女の声で紡がれた名を耳にして、アッシュは変わらない愛しさを抱きしめた。赤翡翠と視線が交わる。以前と比べてやせ細ったその姿は更に心配の感情を昂らせるには十分で、淀んだ瞳を憂いに染めて、真名を呼び返した。もう少し話していたい、という気持ちからその場を動けずにいたアッシュは、続いた次の言葉に僅かに瞳を見開いて困惑の表情を浮かべたが、⋯⋯まさか。心の中で呟いて寝台で横になるレフィーネに近付くとそっと小さな手に自分の掌を覆うように重ねた。)「⋯そう、だぞ。俺は⋯、騎士だ、レフィーネの騎士だから。⋯⋯ちゃんと傍に居るから。」((いつかの秘密の叙任式を思い出しながら、安心させようとして言葉を掛ける。優しく掌を握って、無理矢理に、不器用に口角を緩め、しゃがみこんで視線の高さを合わせるのだった。   (4/28 23:53:49)


〆鯖/レフィーネ> (風邪をひいた子供を看病する母親のような眼差しを向けて近づくあなた。ゆるゆると重ねられた手は、どう接していいのか解らないけれどなんとか励まそうとする父親のようで。いずれにせよ、あなたは騎士ではなかった。濁すような言葉に充血した目を見開き、もはやレフィーネは何も言わず軽蔑の表情をあなたに手向ける。それが隠されていた本心というわけではない、もはやこの狂い水はレフィーネという人格そのものを喰い、取って変わろうとする魔物そのものだったのだから。)……退いて、ください。(目線を合わせてしゃがみ込むあなたの肩を弱々しく突いて、寝台からよろよろと立ち上がろうとする。あなたの手が支えようとするまでもなく起立は失敗に終わり、床にどしゃりと崩れ落ちた。)……うるさい…!!!(「リル」とか「大丈夫か」とか。幻聴か、否か。おそらくそう言われるであろう言葉をレフィーネは食い気味に、かぶせるようにして打ち消す。)……さ、さ、さよなら、アッシュさん。……わたし、いっ…行かなきゃ。まもら、なきゃ。ホーリアを、……ウェン…ディアを…‥。騎士、ですから。いのちに、変えても。   (4/29 00:00:30)


クノ/アッシュ> 「⋯⋯っ!?⋯⋯リ⋯ル⋯⋯」((肩を突かれれてもその力は酷く弱々しく、倒れる事は無かったものの、向けられ慣れた筈の軽蔑の視線に気圧されて、アッシュは苦しげに喉を鳴らした。床に崩れ落ちるレフィーネを心配してか、手を伸ばそうと翳した所で、強く否定する言葉を掛けられ、アッシュはその手を止めて押し黙ってしまった。⋯⋯予感は的中した。ひた隠しにしていた秘密をレフィーネは知っていた。言われるまでもなくそれがホーリア攻城の報せに対するものだと気付くと、立ち上がろうとするレフィーネの正面に素早く回り込み、両肩に手を当てて止めた。)「っだ、駄目だ⋯⋯!!だめだ、リル⋯。⋯⋯今は、行っちゃだめだ、今のお前じゃあ⋯⋯っ。だめだ⋯⋯っ!!」((首を落とし駄々を捏ねるように頭を振ると、何とか言い聞かせようと僅かに顔を近づけ、悲しげな瞳で真っ直ぐレフィーネを射抜いた。)「⋯⋯な?⋯俺が、ちゃんとレフィーネの傍にいるから、だから、今回は⋯⋯任せよう?⋯⋯な、リル⋯⋯」   (4/29 00:10:51)


〆鯖/レフィーネ> (レフィーネの肩を掴んで放たれたあなたの言葉は、彼女にとって今度は駄々を捏ねる子供のように感じた。レフィーネを守りたいとする必死の訴え、たった一人に仕える罪深き騎士の姿はその赤い目にはどんどんと小さく、矮小に映ってゆく。肩に置かれた手を払うようにして叩き落とすと、その乾いた唇からは重く冷たい音が溢れた。)……任せる……誰に……?だ、だれが…そんなこと、きめられるって言うんですか…?団長…?法皇…?太陽神様…?ふっ……くすっ……え、えらく、なったものですね。……やくたたずのくせに。……あ、あなたが……行かなきゃ…わ、わたしが…いくだけ、です。……はじめから、百騎長は、ひとりでよかった。……ふたりは、いらない。(あなたを傷つけるため選びぬいたように放たれた譫言のような言葉。もはや瞳はあなたを見てはおらず、幻と対峙しながらレフィーネもまた、戦っていた。)   (4/29 00:21:06)


クノ/アッシュ> 再びの、明確な拒絶。フラッシュバックする過去の記憶に視覚も聴覚も全て塞いでしまいたかった。それすらもアッシュには怖くて出来ず、続く言葉をそのまま受け取ってしまった。)「り、る⋯⋯俺は⋯⋯やくっ、立たず⋯⋯⋯⋯リル⋯⋯っ!」((誰に言われるよりも、ただ貴女一人に言われる事だけがアッシュにとって何よりも辛かった。アッシュは既に、レフィーネを支えられれば、レフィーネの傍に居られれば、それだけで良いと思う程に溺れ、心酔していたから。⋯⋯だけど役立たずじゃない、とは言葉では言えなくて、貴方の前で両の拳を握りいや、いや、と頭を振る事しか出来ない。貴女にとっては騎士としての誇りも何もかも捨てた矮小で惨めな男に見えるかもしれない。最早貴女の目の焦点が合っていない事にも気付けず、情けなく涙を浮かべた瞳を下げて、濡らした睫毛から水滴を一滴零す。   (4/29 00:35:14)
クノ/アッシュ> ⋯⋯これ以上貴女の心が離れていってしまうのが嫌で嫌で、縋り付くように貴女の腰に手を回して泣きつこうとさえ思ったけれど、もうそうする力すら体には残っていなくて、よろけながら立ち上がり、そのまま縺れ倒れるように壁に背中を預けると。拳を握って弱々しく言葉を紡ぐのだった。)「⋯⋯お、俺が⋯⋯⋯行くから⋯⋯、リルは、来ないで、くれ⋯、かなら、ず、守る、から⋯っ!!──役立たず、じゃない⋯⋯から、俺は⋯⋯!!!!」   (4/29 00:35:16)


〆鯖/レフィーネ> (あなたの叫びに共鳴し、レフィーネの線のひとつがまた、ぷつりと切れる。「守って」だなんて、そんな弱い言葉――騎士になるよりもずっとずっと前に捨てた。そんな烏滸がましい言葉を言える程、レフィーネはただの”女の子”にはなれない。私が護らなきゃ。愛してるから、大好きだから。私はお嬢様じゃない、お姫様じゃない。そんな身の程知らずじゃ、ない。――感情のままの慟哭、ヒステリックに絹を割くような高音が響き渡る。)……あなたなんかに……っ……ウェンディアを、まっ、任せ……はぁっ……うっ…られない……!!リル…リルって……、めのまえのことしかっ…‥ない、あなたにっ……!!わ、わっ……わたしが死ねと、……いっ、いったら、死ぬのですかっ……!?……い、いいいっしょに、騎士を辞めて、……はぁっ、はぁっ……駆け落ちでも……心中でも、なんでも……しますか!?……とくい、ですもんねっ……!逃げるの……!   (4/29 00:55:18)
〆鯖/レフィーネ> (ぼろぼろと流れる涙を手で受け止めようとする様は、苦悩と葛藤の仕草に似ていた。水が…わたしの水が。)…うっ、ううっ…、あぁああぁあっ……!!(弱りきった体を震わせ、声にならない声を上げる。むせび泣き、そしてどっと地に伏し、そのまま気を失った。幻と現実の境は生と死の境に移り変わってゆく。その中で見たのは、戦争の終わった土地で笑うアッシュとレフィーネ…少し大人びた彼女の胸には黒い髪をした可愛らしい赤子が抱かれ、もはやふたりは騎士団の制服もまとってはいない、平和そのものの光景だった。……目の前の幸せを求めて駆け落ちでも――レフィーネがそうしなかったのは、その先にある終戦を心から望むようになっていたからということは、ついぞ届く事はなかった。)〆   (4/29 00:55:22)