この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

命の水-治療失敗-

(竜灯&火津彌&糸依)

〆鯖/火津彌 > ……糸依、一般市民は無視せえ、軍人が優先や。魔術を使える者は一刻も早う治療者に回って貰わんとあかんからな。(尊華帝國軍基地内部。原因不明の流行り病に罹った民を受け入れていたここも、そろそろ許容量を超えようとしていた。誰もが『水、水』と口を揃えて呻く阿鼻叫喚地獄を眼前にしながらも、火津彌はどこか冷静であった。手袋を嵌めなおしながら長い後ろ髪を靡かせ、患者の合間を縫うようかつかつと歩きながら部下にそう指示できる程度には。『まずはアイツやな。』軍服を探そうとしなくても、『さけ、さけ』と叫びながら暴れるその男の姿は一際目立っていた。)……ええ姿やないか、竜灯。酩酊ぶりもさすが板についとるな、この与太者が。(さりげなく部下の糸依を守るようにずい、とその男の前に出て声をかける。まずは会話ができるかどうか、確かめねばなるまい。)   (4/25 12:42:25)


ぽぺ/糸依 > 「あい解っております。市民よりも……徒人を重んじねばならぬのですよね」(舞台は尊華、役者は私と佐官と、大勢の患い人。潤いを欲した狂人妄者と成り果てたそれが眼前に横たわり悶えている。異様と混沌の場で表面だけでも正気で居られたのは、火津彌佐官の支えあってだろう。救いを懇願する市民には目もくれず、私を先導していく。その迷いなき足取りはこの世界において正解択。治療方の確立していない状況、全ての命を助けるなど不可能に近い。私だって心に決めた筈だ。軍人として命に順序をつけろと。顔に掛かった影を更に濃くし、胸に抱えた分厚い文書をより大層に包み……前屈みに、なるべく視界に彼らを捉えぬように。)「……己を過信し過ぎた末路がこれとは」(庇われるようにしながら見たのは酒を欲するうつけ者。誰だっけ……り、リン坊?? あっ違う、竜灯だ。字は不明瞭だったが、自分は病になどかからぬと豪語していたことは覚えている。後ろで呟いたのは慈悲なき罵倒。しかし哀れというよりは気の毒にと思ってしまう。言葉と反して表情は哀に染まっていたのに己自身が気付ける余裕も既になかった。)   (4/25 13:14:29)


クノ/竜灯 > 「なぁぁに...っ、!?⋯⋯⋯⋯おっまえ、もうさけは、無いがか、こんのべこのかわ!!⋯⋯、さけ⋯。」((近くに居た男の両肩を掴んでぶんぶん、と何度も強く揺らして怒鳴りつける男の姿はやけに目立っていた。軍服の上から着ている羽織は普段ならピシっと決まっている筈なのに、柄にも無く今日は縒れて皺が目立っており。⋯⋯竜灯は肩を掴んだ名前も知らない相手に知り合いの居酒屋の大将を幻視していた。だがそれもすぐに終わり、視界が赤色に明滅したかと思えば突然手を離し、ふら、ふら、と後ろに後退り、壁に凭れて尻餅をついて黙り込む。突然糸の切れた人形の様にがくんと首を落とし、投げ出された足を時折跳ねさせる事しか出来ずにいた。その間も譫言のように『さけ、さけ⋯⋯』と繰り返していたが、自分を呼ぶ上司の声に幾許かの反応を見せ、ゆっくりと顔を上げ)   (4/25 13:16:30)
クノ/竜灯 > 「⋯⋯⋯⋯おぉ、おぉ?⋯⋯ほづみさんとしいさんじゃやいか、おまんら見んうちに仲良くなったのぉ独り身同士じゃきええの、俺は心配しとったぜ、いやあお似合いぜよこりゃ結婚か?結婚がか!こりゃあ祝杯をあげんといかんきにさけ、さけがいるぜよ!⋯⋯さけ⋯⋯」((暫くの間焦点の合わない瞳で二人を見つめていたが、突然かっと瞳を見開いて、敬語を使うことすら忘れ捲し立てる。矢継ぎ早に拳と掌をぽんと合わせて大笑いし、額の真っ赤なハチマキを掴んで、結び目も取らず力任せに抜き取ると天井に向かって放り投げた。⋯⋯⋯ぽと、と、ハチマキが床に落ちるのとほぼ同時に、感情の昂りは再び無理矢理に沈静化していく。がくん、と首を下ろして再び二人を見つめた時には、視線で人を射殺せそうな程に冷たい瞳で睨み付けていた。)「⋯⋯おんしゃあ、なんぜ⋯さけは。⋯⋯っ無いんか⋯⋯?」   (4/25 13:16:32)


〆鯖/火津彌 > (糸依の無慈悲な呟きを背に受けて少し身構える。竜灯、こんな事で猛ってくれるなよ。しかし竜灯の口から溢れたのは気味の悪い程底抜けに明るい軽口で、それがどんどんと拍車を掛けてしまいには一人で大笑いをはじめる。何がそんなに可笑しい……地面に落ちた鉢巻を見て、はぁとため息を着いた。きっと今のこいつは、箸が転がっても腹を抱えて翻筋斗打つ事だろう。とにかく、かろうじて返事ができることだけは解った。火津彌はこちらを睨みつける竜灯の後ろに周り彼を羽交い締めにすると、糸依の顔を見やる。)……喜べ竜灯、酒よりももっと上等なのをくれてやる。…‥糸依、私が後ろから抑えつける。お前は前から抱きつくようにしてこいつを抑えつけろ。魔術じゃ負ける気はしないがなんせこいつは馬鹿力やからな。……躊躇うな、いい、いけ。それから、魔術の詠唱だが少し長いのでな、私が前半を詠むさかいに、お前は後半をたのむ。…型は”十種の大祓”。出来るな。(捲し立てるようにして言い切り、すう、と息を吸う。)   (4/25 13:54:12)
〆鯖/火津彌 > 榮の宮処と黄泉国に神留坐す 皇神等鋳顕給ふ 十種瑞津の寶を以て かけまくも畏き 守護四神 八百万 至尊の 授給事誨て曰く 汝此瑞津寶を以て 吾らが尊華 麒麟の躯に天降り 蒼生を鎮納よ 蒼生及萬物の病疾事あらば 神寶を以て 御倉板に鎮置て 魂魄鎮祭を為て 瑞宝布留部其の 神祝の詞に曰く 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸み ひふみよいむなやことに、瓊音 布瑠部由良由良 如此祈所為せば 死共更に蘇生なんと誨へ給ふ 天神の御祖御詔を稟給ひて 天磐船に乗りてま 守山の麓 白庭の高庭に遷座して 鎮斎奉り給ふ。   (4/25 13:54:15)


ぽぺ/糸依 > 「ばっ……戯言ばかり倩と……え、あっ……!?……竜灯さん、暫し辛抱なされ!!」(結婚などとは不愉快な冗談、豪快な笑い声の後に貫くようなその視線、あまりに異様で気分が悪い。眉間には皺、ギチと本をにぎりしめれば不快感が襲う。悶々と立ち尽くしたままの私とは違い、隣の佐官は既に行動を起こしていた。所謂羽交い締め、病人とはいえ彼は中々の強力だから、佐官で抑えられるとも限らない。唐突な指名に捲し立てるような説明、ひょうきんな声をあげるもこの後に及んで引いてはいられぬ。本を乱雑に床に捨てては己より大きな体に腕を回し抑える。……今彼を救わずしてどうする!!!)「号て石上大神と申し奉り 代代神宝を以て 万物の為に布留部の神辞を以て司と為し給ふ 故に布留御魂神と尊敬し奉り 皇子大連大臣其神武を以て 斎に仕へ奉り給ふ 物部の神社 天下万物類化出む大元の神宝は所謂都鏡 辺都鏡 八握剣 生玉 死反玉 足玉 道反玉 蛇比礼 蜂比礼 品品物比礼 更に十種神 甲乙丙丁戊己庚辛壬癸 一二三四五六七八急十 遍く音 布留部由良と由良加之 奉る事の由縁を以て 平けく聞食せと 命長遠子孫繁栄と 常磐に堅磐に護り給ひ幸ひ給ひ 加持奉る 神通神妙神力加持」   (4/25 14:39:58)


クノ/竜灯 > 「な、なんだ、おんしゃあ、おっ!?⋯⋯っほづみさん何するがか、おい⋯⋯っ!さけが零れゆう⋯⋯っ!」((何やら火津彌が糸依に話し掛けているのを「んあぁ⋯⋯?」と掠れた声で眺めている竜灯だったが、生気の感じられないとも例えられる程に気の抜けた瞳で後ろに回っていく火津彌を遅れながら追い掛け。突然羽交い締めにされると瞳を再び見開いて。意味の分からない戯言を口走りながら首を回して何度か後ろに視線をやろうとし、両腕に力を込めて逃れようと試みる。⋯⋯なんでこがなことになっとるんだ?そんな思考も今度は眼前に飛び込んできた影によって遮られる。後ろに夢中で気付くのに遅れてしまったお陰で、完全に密着してから漸く抗議の声を上げた。)「おま、ん、も⋯⋯!しい、さん、やっ⋯めとうせ⋯⋯!おれはまだ、⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯まだ、しにとうない⋯っ、嫌や、しにたく、ないぜよぉ⋯⋯っっ!!」   (4/25 14:57:31)
クノ/竜灯 > ((暴れようにも両腕を火津彌に、腰に抱き着く糸依によって下半身を抑えられており、ぼろぼろと涙を流しながら首を振って必死に抵抗した。じたばたと足を暴れさせても、体を捩っても拘束から抜け出す事は出来ない。いつしか聞こえてきた呪文の型は〝十種の大祓〟。知識の無い竜灯にはそれがなんの呪文か理解する事も出来ず、自分を殺す為の呪詛の様にすら聞こえて、瞼を閉じて情けなく涙を溢れさせ続けていた。)「おっ、俺が!俺が悪かったぜよ、ほ⋯⋯ほづみさんいつも迷惑掛けてすまんきに、確りはたらく、しいさんも嫌な顔しとるのにはなしかけちょってすまん、すまん、すまん⋯⋯⋯⋯俺が悪かったか、ら゛⋯⋯っ!やき、ゆるしとうせぇ⋯⋯ゆるし⋯⋯」((譫言のように続けられた謝罪は留まることを知らず、呪文の詠唱が終わり拘束が解かれてもぶつぶつとそれこそ呪文のように永遠と、虚ろな瞳で二人への謝罪を零し続けていた。   (4/25 14:57:33)


〆鯖/火津彌 > (じたばたと暴れていた竜灯であったが、我々の詠唱が終わりかける頃には力なく命乞いをするのみになっていた。『これは……どうなんだ?』糸依に目配せをして再び竜灯へと視線を戻す。……軍人どころか男の尊厳をかなぐり捨て、ぼろぼろと涙を零す姿に掛ける言葉もなかった。)……たちどころに治るという訳にはいかんようやな、私も治療魔術が得意という訳ではあらへんし…。うーむ……。(腕組みをして竜灯のつむじを見下ろして数秒、ふうと、と息を吐いて腕を解くと、首を軽く 回してもう一度己に喝をを入れる。)……私は次の治療に向かう。糸依、そいつの鉢巻を拾ってやれ。(踵を返しながら流し目を糸依に向け、……次はあの男か。火津彌は背を丸めてぶつぶつと念仏のようなものを唱えているもじゃもじゃとした毛玉の妖怪のような人物に向けて、そのまま二人に背を向けてつかつかと歩き始めた。)   (4/25 15:27:25)


ぽぺ/糸依 > 「っ、私だって……貴方を死なせたくない!! こんなところで……貴方を助けられずに殺したくなんてない!! だから、お願いします……どうか安静に」(これが最善策とはいえども、困惑状態で急に四肢の自由を奪われれば不安に駈られるのも無理はないだろう。危なっかしくもどこか安心して見ることのできていた彼が今はどうだろうか。すっかり衰弱しきって弱音を溢すその姿に、私の心がぐっと鈍い音をたてた。死んで欲しくない。古きの音で偽ることなく、叫ぶように発露したのは一瞬。何もかも埋まるようにうつむき、いつの間にか抵抗を止めたその身を変わらず抑えつける。__詠唱が終われば体を起こし火津彌さんと視線を交わす。『……まだ成功かは判別つかぬようですね』なんて、違う。彼の命を危ぶめた可能性が怖いだけだ。)「……承知しました」(苦く暗く沈んだ顔も向けられず、命に従うままにしゃがみ込んでは鉢巻を手に取る。頼りなく足を進めては半ば放心気味の彼にそっと鉢巻を握らせた。発症などしていない筈なのに。今頬を伝うのが汗か涙か。溢れた謝罪が示唆するものが。彼を生かしたか殺したか。そんな思考を放棄する程には、私も衰弱していた。)   (4/25 15:49:05)


クノ/竜灯 > 「⋯⋯すまん、すまん⋯⋯⋯すま、ん⋯」((座り込んで四肢を投げ出し、汗と涙が混じった液体を頬に伝わせ、ぽつ、とズボンに薄く染みを一つ。口からは幾度と無く意味をなさない謝罪だけを繰り返し続けていた。⋯俺は昔からそうだった、何かに縛られるのが嫌で守山を飛び出して軍人になった。何年働いたんじゃろう、分からん。だけんど俺はまだ雑兵の一人、今までもきっとこれからも。当たり前じゃ、火津彌さんに迷惑ばかりかけて好き放題やって何が自由じゃそがな事では何も見込めん────俺はただやりたい放題したかっただけじゃやいか⋯⋯⋯⋯。めぐるめく思考の中では己のやって来た事をひたすらに否定し続けていた。いつもいつも自分の都合の良いように考えていた竜灯は初めて、こうも客観的に己を見ることが出来ていた。⋯⋯そんな、灰色に染まりきった虚ろな視界の中に、一つの色が差し込むまで。)   (4/25 16:17:07)
クノ/竜灯 > 「あ、あか、あっあかじゃ、⋯⋯血の色のっ、ち、血じゃ、⋯⋯しいさんっ!⋯⋯っはあ、血はっ、嫌ぜよ⋯っ⋯⋯っはぁ⋯⋯!はぁ⋯⋯っ」((腕に握らされた鉢巻。額に巻いていた赤色を握らされて竜灯は思わず貴女に鉢巻を投げ付けた。酷く脅えた表情で体を震わせ、臀部で後ろに這いずろうとしても背には壁、それ以上後ろには下がれず四肢だけをゆっくりと動かしただけ。荒い息のまま、瞳を見開いて貴女を見つめ竜灯は口元だけを笑顔に染めた。)「だ、誰の、俺の血?⋯⋯でも、殺さ、んといかんちやな、俺は、兵、しいさんも兵っ⋯⋯!⋯⋯お、俺らは殺さんといかんぜ、俺はそれに伝説を作る男じゃき血なんてへっちゃらぜよ!あは⋯⋯⋯っは、いや、じゃあ⋯⋯しい、さ⋯嫌だ⋯⋯」((壊れたように乾いた笑い声を零したのも束の間、すぐに表情は恐怖と脅えに彩られ、投げ出した両手の指先をぴくりぴくりと跳ねさせながら、俯いて力無く頭を振っていた。   (4/25 16:17:10)


ぽぺ/糸依 > 「え、血……わっ!? り、竜灯さんどうか冷静に! 之は血などでは…………。嗚呼、げに失敗したと。力及ばすか……はは」(確かにしっかりと握らせ、主の元へと返した筈の朱は。悲鳴にも似た叫びと共に、項垂れていた私を襲った。視界をたゆたう赤で覆われれば思わず声をあげ、おそるおそる彼を見れば……腰を地につけ、まるで蛇に睨まれた蛙のように怯え、しかし確かに治療前と変わらず譫言を吐く竜灯さんが居た。直感だが失敗したとわかる。きっと私の実力不足だ。もう一度鉢巻を返す気力も資格もない。暫く立ち尽くしていたが、気づけばペタリと床に座り込んでいた。……そう、私は兵だ。一の命を守る為に幾つもの命を摘み、戦場でこの手を汚すと決意したのだ。それがどうか!! 群衆を犠牲に得たものは皆無。選別の末に私は何一つ救えなかったのだ!! 揶喩を交えた笑い声を響かせ、感極まったのか涙が止め処となく溢れる……悲しむ資格などないのに。)   (4/25 17:09:21)


クノ/竜灯 > 「⋯⋯⋯」((再び黙りこくってしまった竜灯。阿鼻叫喚の地獄絵図の中で二人、座り込んでただ雫を垂らす。乾ききった喉は水を欲して居たけれど、他の患者のように求め、喚き散らすことはなかった。自分の涙はとうに枯れ、貴女が泣いている事すら気づいているのか気付いていないのか、それすらも竜灯には分からず、俯いたまま誰に対するわけでもなくぼそぼそと口を動かす。)「⋯⋯俺達は所詮、力も地位も何も無い羽虫、何もかもおこがましがったと。⋯⋯⋯⋯すまん、みな⋯。すまん⋯⋯不甲斐なくて、迷惑かけて、すまん⋯⋯いつか、必ず⋯⋯」((『──になる』⋯⋯何か言いかけた言葉は喉の奥で詰まり。それから座り込んだまま何一つ言葉を発することは無かった。⋯落ちる意識の中、夢を見る。ウェンディアも尊華もヨズアも皆で集まって大騒ぎして、その中で一番目立つ所に居る自分を。⋯⋯⋯幸せな夢物語に憧れながら、指を最後に跳ねさせる。再び目覚める時まで、暫しの休息と相成った。〆   (4/25 17:25:26)