この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

命の水-プロローグ-

(ザフメトゥ)

ひよ。@ザフメトゥ > 夜風が解放された窓から吹き込み、私の横髪を、机上を照らす蝋燭の炎をそっと揺らす。仄暗い部屋、やや古い紙に洋墨を滴らせた羽根ペンを走らせていた私は、軈て其れを一度置き、そっと息を吐く。──ヨズアの領土が失われてから、どれほど経っただろう。遂に我らは帰るべき場所を失った。それも全ては此度の不毛な戦争、その為であるのは明白である。「師よ、戦争を須らくこの世から葬り去る為の策を、貴方は知っていられるのでしょうか」特に誰に語るわけでもなく、尤も、それはある人物に宛てた言の葉ではあるが、しかしその相手は今を共に生きてなどいない。半ば主に祈り加護を望む敬虔な信徒のように零れたその言葉に数拍の間を置いて、私は言葉を続ける。   (4/23 19:36:21)

ひよ。@ザフメトゥ > 「──戦争、それを望むものを討ち亡ぼす。この一点にのみ他なりません。ですから私は、あの愚かな二国に制裁を下さなければならない。侵すべからざるヨズアのその土地を剥奪した冒涜的な行いに、私が喝を入れてやるとしましょう……これを以ってして、な」ちらり視線を机上へ戻す。ガラス製の実験器具、その中に入れられたごく透明な液体は炎を透過し、妖しくも流麗な輝きを放っている。人は風によりて雨季の到来を知り、そして備えるのだという。此度もまた、その自然の摂理の一部と何ら変わらない……ただ、忘れてはならない。降り頻る雨とて、積もれば牙を剥き人々の命を奪うということを。   (4/23 19:36:33)