この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

相談

(オウガ&レフィーネ)

レフィーネ ◆ > (温かくなったり寒くなったり、神様の憂いを反映したかのような季節の変わり目を超え、ようやく春がこの大陸に腰を落ち着けようとしている。――ミトラ。何人もの騎士が傷つき倒れ、苦戦を強いられながらも防錆に成功したこの地を、騎士団の一行は今まさに発ったばかりのところであった。『わたしは、聖騎士団にお話があります。先に、帰っていてください。』伴侶の契を交わしたあの人へそう言い残し、往路よりも少しだけ減った青い制服の中を縫っていく。目的のあの人は、洗ってはあるものの血で黒ずんだぼろぼろの制服を纏って歩いていた。かたや自分はミトラで間に合わせに調達したワンピースであなたへと近づく。喪服のようにも見えてしまうかもしれない、黒い姿で。)……せんきちょー。おおおお、おつかれさまですっ…!……ご無事で、何よりですっ。……今回は…その……。
レフィーネ ◆ > (『苦しい戦いでしたね――』…その言葉をすんでのところで飲み込む。この防衛戦が成功したのは最も武功を挙げたオウガのおかげでもあるが、そもそもシントに兵を送っていなければこれほど負傷はしなかったかもしれない、あるいは密談などという危険な取引をしなければ、と、責任の一端を感じているはずのあなたにそれを言うのは憚られて。……今までのレフィーネならば、”間違ったことは言っていない”と、心の内をそのまま言葉にのせていた事だろう。自分はオウガのせいだとは思っていない、悪意はない。だから何がいけないのかと。改めて短く整えられた髪よりも大きいレフィーネの変化に、人の機微に敏いあなたは気づいてしまうだろうか。もう、少女ではなくなった事も。)
レフィーネ ◆ > ……あ、……の。お、お耳に入れたい事が、あああります。(親しげな口調を改め、レフィーネなりの騎士らしい喋り方で本題へと切り出す。すう、と息を吸い、あなたの黒い瞳を見つめながら。)……せっ、先代の、百騎長について……。どう、思っていらっしゃいますか?……その。わたし、かっ、彼のしっぽを、捕まえました。(騎士達からの反感を買い、勅命により失脚した訳ではないが逃げるようにして団を去った『バッシュ』。オウガは騎士達を纏める長というその立場上、一筋縄ではいかぬ思いを抱いているに違いない。唾を飲み込み、じっと目を逸らさずに、レフィーネはあなたの歩幅に合わて歩く。) 


オウガ > 「(春一番の強い風と、花の香りに乗り、多くの負傷者、死者の血臭さが鼻につく。勿論、もう既にその臭いは残っていない。しかし、オウガにはこう思わざるを得なかった。)おう、お疲れ。俺が無事なのは、多くの戦友が、命を導いてくれたからだ。(普段の陽気な姿からは考えられないほどに、気分が沈んでいるらしい。)…なぁ、俺のせいなのに、なんであいつらは俺のために死んでいくんだろうな。
オウガ > (花咲く季節に、儚くも友は散った。春が来て、貴方のように結婚を誓った者もいた。家族のもとへ帰れず、地に還ったものもいた。それを引きずるほどオウガは弱い男ではないが、しかし陽気なままでもいられないだろう。戦争の度にオウガは、1日だけ陽気な心を捨て、「彼ら」へ弔辞を捧げる。それは、味方の兵に限ったことではない。人の死とは、軽視すべきものではない。1日だけでもそういった日を持ち、その次の日からは、また平々凡々な生活を送るのが、オウガの過ごし方であった。)地の神よ、消え行く彼らを厚く歓迎してあげてくださいませ。(闇討ちを仕掛けた彼らに、真っ向勝負に出た若き彼らに、自らの命を擲ってまで生き残った者の道を作った彼らへ、祈りを送る。ため息を1つ吐けば、貴方の相談へ乗れるよう、少しだけ明るさを戻す。まぁ、もとより落ち込んでいたわけでは無いのだが。)
オウガ > …先代…ってーと、「バッシュ」の事か…あいつの勢いは凄かったな。俺が千騎長になって1年後に入団したんだ、あいつのことならよく知ってるよ。いつか千騎長から引きずり下ろされるんじゃねえかと思ってたんだが…ありゃ事故だったよ。本当に。…あいつが一番辛かった筈なのにな。今日はあいつの気持ちがよく分かるぜ…(「バッシュ」が抜ける少し前、彼の苦悩した顔を思いだし、唇を噛む。もう少ししてやれることがあったかもしれないのに。数百、数千万の兵の反感で閉じ籠った彼に、手は届くはずもなく、今できるかも知れないことがあるのも確かだ、と、いつだったか彼を探したこともあったが、見つかることはなかった。その頃はたぶん、あちらの国にいたのだろう。千人に勝る力など、数をもって制す人間に勝てるはずもなかった。)俺は、あいつは好きだったんだがな。(目を細くして、思い出に浸っている。数秒後にははっとして、)すまん、ボーッとしてた。(なんて、少し微笑みながら言う。)」


レフィーネ ◆ > (らしくない表情で自分を責め、神に祈りを捧げるあなたから少しだけ目を背ける。そんな姿は見られたくないのではないか、なんて勝手に思って。きっと根っこから人間が好きなあなたの事だ、仲間のみならず散っていったすべての命を弔っているのだろう。レフィーネもあなたに合わせ、黙祷を捧げた。数秒の後、はっとなりながらこちらの相談に応じてくれたあなたの心意気を汚したくはなく、ただ何も言わず、その相談を続ける。美虎での事はこれ以上……自分も思い出したくはないから。)……は、はい。そ、そうです……。す、好きだった、ですか。……で、では、千騎長は、バッシュさんが戻られる事について、悪い感情は無い……と、おおおもっても、いいんですね?……あ、ああなたの意見が、一番大事ですから。(団長と副団長は二人で一人だ。士気を上げる為の聖性の権化である姫騎士、そしてそれを補佐する副団長。彼らが聖騎士団のトップに据えられているのは間違いないが、”騎士”の長は彼なのだ。一鬼当千・オウガの力添えがあればバッシュの帰還は随分と心強いものになるだろう。) 
レフィーネ ◆ > ……ああああの人を、わっわたし、聖騎士団に連れてきます。……つ、罪から逃げるのではなく、聖騎士団の中で、きちんと、償っていかなければならないと、おお思いますし。……それに、戦力についてだっていっいつも、ああ頭を悩ませているでしょう。……次の戦では、共に戦って、くれるはずです。……絶対。(強い意思を秘めた口調でそう口にする。わたしが罪から逃さないのだ。あの人は、わたしの為に戦うのだ。そんな確信がレフィーネにはあった。)……い、いっ、言いました、よね。…しっぽを掴んだって。……任せて下さい、千騎長。


オウガ > 「(あの時降り注いだ雪は、彼らをちゃんと導いてくれただろうか。雲となって空へ送り出してくれただろうか。空の上には何があるだろうか。空の上で彼らは何をしているのだろうか。笑っていてくれているだろうか。時代の犠牲者よ。自分を信じた者よ。せめて空の上では平和に…なんて考えていれば、いつの間にやら空に伸ばしていた手が、嫌に卑しく見えた。掴めないものを掴もうとする、亡者の手が、卑しく。す、と手を下ろせば、しかしこの手にも掴むことができるものがある、と確信した。)
オウガ > なんだよ、お前のことだから制裁を与えようとでも言うのかと思ったぜ。(やっぱり変わったんだな、と思いながらも、口に出さず。それがいい変化だから、少女…いや、今や「彼女」だろうか。その人は、あなたには、その変化に気づいて無にしてほしくないからこそ、口を閉じた。すっかり逞しくなりやがって、なんて微笑み、その理由を濁すように、あなたに、)…そうだな、可愛い子には旅をさせよ、だ。任せてみようかね。(その変化を仄めかすように、もう子供扱いされたくないであろうあなたに、「可愛い子には~」なんて、ちょっとした冗談を入れて。)」〆