この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

赤き炎、蒼き炎

(オウガ&火津美)

オウガ > 「(黒き瞳は赤く染まり、霞の中に光り進む。積雪はその足取りを一層重くし、故にしっかりとひとつひとつ踏み潰されていく。ああ、雪の気持ちがよく分かる。踏み潰されていくそれのように、彼らは我々を見ているのであろう。一応、この可能性も読んではいた。しかし軍勢はほとんど神島へ送ってしまった。此度の戦争は、厳しいものとなるだろう。いくら千騎長たる「オウガ」がいたとしても、数に勝るものはない。雪に紛れて闇討ちを仕掛ける兵士は、強化魔法による剣撃により何度も何度も切り伏せた。もはや迷いはない。怒りなどという感情に任せたものでもない。…戦の世界にて、情は最も戦士の足を取り、目を眩ます。ちょうど、目の前に広がる真っ白な世界のように。)
オウガ > …炎よ、人の目から消え行く景色を照らす光となれ。人の体から消え行く温度を戻す光となれ。太陽の名のもとに。(静かに唱えれば、オウガの周囲で回転する魂が如し炎が現れる。それは霞の広がる町を照らし、視界を確実にした。そしてそこにいるのは…「見たことのある姿」だった。)ホヅミ…てめえが仕組んでたんだな、この作戦を。(相手に見つからぬよう民家の影に隠れ、剣を強化する魔法、炎を纏わせる魔法、それぞれを発動し、再び民家の影から飛び出す。)「卑怯」とか言うんじゃねえぞ。ウェンディア王国千騎長オウガ!(彼に自分の存在を認識させるため、まず叫ぶ。)…ホヅミ。貴様に一騎討ちを申し込む。(あなたは重圧を感じ、鳥肌を立たせるだろう。重く、低く、「死」という一言に尽きる声が、辺りに響く。密談で見せたあの雰囲気を、遥かに越える。これが戦場の鬼、一「鬼」当千、オウガの本領である。)」


火津彌 ◆ > (白い霞の中にぼう、と現れた鬼。比喩などではなく背中から出ている煙は、あなたの静かなる怒りをまざまざと火津彌に見せつけた。あなただけではない、この火津彌の身体も熱く火照っている……だからこそ解る。霞と雪とで地平線が消え、幽世のような美虎は神々を代弁する戦いの舞台にふさわしかった。火津彌は黒い手袋をはめ直して口角を上げる)……またお会いできて嬉しく思いますわ……オウガさん。あなたを殺す機会をどれだけ待ち侘びた事か。……くくっ、やはり食えぬお人だ。今は神島にいらっしゃる筈やのに、なぁ?火津彌 ◆ > (そして、先ほど霞の奥から聞こえた言葉にもまた返事をする。)卑怯で結構、どいつもこいつも戦というものをまるでわかっとらんのですわ。……あなたは違うと思っていましたよ。さぁ、鬼退治といきましょうか。(……これだけ挑発すれば、真正直なオウガの事。呪文を詠唱する時間くらいは稼げるだろう。静かにその呪文を口内に響かせ、神仙を呼ばう。)…葛の葉。(白い世界に青い狐火が浮かび、それは半分人間、半分狐のような男の姿となった。その手にはすらりとした刀を持ち、にい、と笑った。赤き炎と青き炎、熱いのはいずれか。ばさりと袂を翻しながら手を上げると、”葛葉狐”があなたの首めがけて一直線に飛んだ。) 


オウガ > 「(怒りの前に、不思議と思考は冷静だった。自分は心身ともに戦士になっている。興奮は怒りに勝る。今は、一心不乱に戦うことばかりが頭の中で浮かんでいく。憎たらしい皮肉も、この身にじわじわ染みていく。)ああ、今ここで、てめえに殺意が沸いたよ。(炎は静かながらも強大で、確かにある憤怒を存分に曝け出す。ごうごうと燃え盛り、瞳に宿る炎は、真っ直ぐにあなただけを見つめて、刺し殺すかのように鋭い眼光を飛ばすのだ。)俺が知略無しでここまでのしあがってきたと思ってたのか?…読めてんのさ。可能性だけは、だが。(剣を構え、相手が攻撃して来るのを待つ。) 
オウガ > …そこに伏せて、コンコン「泣」いてやがれ。(その詠唱をする隙に攻撃するでもなく、ただ待った。オウガは真剣勝負を望む。先の見えぬ未来を掴むため、自分の信念を掴み続けるため。…刹那、風がオウガの横を舞う。いつもそうだ。極めた頃から、「風」となって、攻撃の筋が見える。細剣である「炎剣」を空中に放り投げ、曇り空を照らす。両手で持った「剛剣」を首元へ構え、飛んでくる剣を貴方の体ごと弾き返し、降ってくる炎剣をスムーズに受け取り、そのままの勢いで腹部に向かって降り下ろす。そして十字を描くように、剛剣を水平に振る。…洗練された動きだった。一瞬の迷いもなく、それを行った。その行動には1秒の隙を与えない気迫が込められており、実際にそれを成功させた。)伊達にここまで生きてる訳じゃねえんだぜ、若造。(霞のせいもあって、オウガは一層巨大に見えた制服は人の血に塗れていて、赤鬼の皮膚のように猟奇的であった。双剣の鬼は一言言えば距離を取り直し、またカウンターの構えに入る。)ちっぽけな狐が鬼を倒す、か。面白い童話が出来そうじゃねえか。…やってみやがれ。悪い結末にはならねえさ。」


火津彌 ◆ > (葛葉による一瞬の構えと、あなたが細い方の剣を空に投げるのはほぼ同時であった。――なんのつもりだ。そう思った刹那、刀身は僅かな光を反射する。太い方の剣で葛葉の剣戟に、真っ向から力比べをするでもなくただガキンと鈍い音を立てて受け止めそのまま弾き返されれば、神仙とはいえ線の細いすらりとした葛葉の身体は一歩、あなたから退いた。…その太剣で葛葉に傷を付けるつもりか、やってみればいいい。……一騎当千、一目置いていたのだが……荒神に心奪われた筋肉馬鹿であったか。神に傷をつけられるのは、ただ神のみであるというのに――…。しかしあなたは太い剣から片手を離し、空から細いほうの剣を受け取った。葛葉の腹に縦一閃、そして太い方の剣による横一閃。片手と片手で重そうな剣を軽々と振り辻の印を描く。……ゆらり、腰を翻して葛葉が嗤う。それは葛葉の御身体に確かに届いた。しかし、やはり剣では神に傷をつける事は出来ないのだろう……。そう思ったのもつかの間、葛葉の腹からちりちりと燻るような音がなり、たちまちボウと音を立て、赤き焔となった。)
火津彌 ◆ > ……魔術だと言うのか?……成る程……。その仰々しい剣はただの護身用という訳では無いらしい。(葛葉は獣の咆哮を霞の中に響かせ、再びあなたへ向かう。みるみる燃えてゆく身体ごと火の玉となりながら頭に飛びついてゆく。…まずは頭を捉えてから、ゆっくり首を切るつもりなのだろう。) 


オウガ > 「(成る程、こやつからは…彼が言うには神らしいが、溢れる血肉を目にすることはできないらしい。これが信仰の力、有象無象の神をも創製できる魔力。自分一人の不信感では、現実をねじ曲げることはできないか。)俺に炎で勝負を挑むか…ならば、目には目を、だ。信仰勝負よ…!(業火の音に耳を立て、近づく風を認知する。その一瞬の間に、原文を短縮した呪文を唱える。)炎よ、燃え上がれ。消えて灰となれ。太陽の名のもとに!(こちらへ向かってくる炎を堂々と見据え、汗水1つ垂らすこと無く、どんどんと強大になっていく炎を見つめる。じりじりと、炎が赤と青で彩られた制服ををちりちりと焦がしたとき、その炎は燃え尽き、消えた。)炎は強すぎるといけない。燃料を燃やし尽くしてしまうからな。
オウガ > (狼煙だけが妖狐の頭に残り、襲い掛かる狐は剛剣によって軽々ととまではいかないが弾き返される。)開戦の狼煙が、改めて上がったな…上げたのはてめえだ。そして、盛る炎は消え行く。がっはっは、てめえらのようにな。(漆黒の瞳は笑っていなかった。当たり前だろう。深い、深い、不快と、炎の渦巻く瞳に、笑いなどが含まれるはずもない。その大笑いはため息のようなものであった。呆れ返る心と、奮い立つ体と、燃え上がる魂、それらを表すため息。) 
オウガ > 風の行く道に炎は流れ、流れる炎に竜は行く。炎よ、風に乗りて彼奴へ。竜よ、炎に乗りて彼奴へ。風と太陽の名のもとに!(千騎長たるもの、魔術を覚えることは必須条件である。いくつもの魔術を知識として脳内に蓄え、そしてじっくりと理解する。それこそが魔術の強化。)この小狐に戦わせて、貴様は高みの見物。偉くなったもんだな、てめえ。…それを卑怯という気はないが、俺にそれは通じねぇ。ちょっと強いだけの狐と魔術師には負けねぇ。…俺は、千騎を一騎で落とす男だ。(錆色の髪は、炎の発する風に煽られて逆立つ。そこに角でも生えるのか、といったほどの気迫。貴方は飄々とした態度を取るが、)いつまでもそのふざけた態度を、続けられると思うな。」


火津彌 ◆ > (あなたと葛葉とが、炎と炎とで火花を散らしている間に、火津彌は小さく呪文を詠唱する。……さすがに、一柱では渡りあえまい。今のうちになんとかしなければ。)…… 三相、我を清浄なる天命へ導き給へ。四智、妙観察智の赤と 大円鏡智の青とをさずけ給へ。五行、紅蓮の火生土を。六道、陰陽のまぐわいを。(黒い手袋した指を開きながら数えられてゆく、3,4,5,6…。火津彌の前に現れる七つの狐火。葛葉はやがて燃えつき、ふすふすと煙を残して弾き返される。……そしてあなたに"神殺し"をさせる前にふっと消えた。残されたのは依代になった火津彌への同調。汗が滴り落ち、喉が灼けるように熱い。あなたの詠唱を耳にし、こちらも呪文を結ぶため、灼けた喉から掠れ始めた声を振り絞る。もはや、貴族らしい上品さなどどこにもない。怒号に似た咆哮となり響く。)
火津彌 ◆ > …ッ…劫火の縅よ!…いざたまえ…!(七つの狐火は柱になり、鎧のようにつづり合わされる。火津彌の前をぐるりと囲んだ。炎に対して炎で応じるのは愚策かもしれない。盾のつもりで出した劫火に焼かれ、自滅するかもしれない諸刃の剣。しかし、刹那の間に自分が出来るのはこれしかなく、またオウガはその炎と炎との真っ向勝負をやってのけたのだ。『アンタにできて、僕に出来ない訳が…』)……はぁ゛ッ……!(もはや、無駄口も叩けない程の熱気。あなたの言葉は火津彌が使役する狐達を体の良い身代わりだと思っているらしい。文化が違うとは、そういう事なのか。……ちょうどいい、同調し灼けたこの喉の事は知られないほうが良い。しかし、竜を吸い込みますます勢いを増していく劫火に囲まれ、今度は煙が火津彌の目を、鼻を、口を襲った。)
火津彌 ◆ > ……く……!(玉藻の前を降臨させようと、炎の中で乾いた口を開く。)…かけ……ま゛く……っ、……かっ、かっ……くぅっ…。あ゛ぁっ…!(しかし、声が出ない。…あなたの言う通り”燃やし尽くしてしまった”のだ。今撤退しなければ魔術師生命を絶たれる。火津彌は熱さも厭わず炎へ突っ込んでいった。…あなたとは反対側、逃げの方向へ。……炎の柱が足止めとなり、逃してくれる事を願う。そうすれば、雪がこの身体を癒してくれるだろう…このままでは終われない、一"鬼”当千、次の戦で会おう。)〆