この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

出会い

(オウガ&雷鏡)

しずま > 「(ポツポツと雨を降らす雲の影に紛れたどす黒い怒りを纏う男が1つ。町にどよめきが響く中、たった1つの足音だけが、際立って耳へ届くだろう。それこそが、鬼の足音、軍靴の音。コツコツという軽い音は、炎が燃え上がる音に聞こえる。はぁ、という小さなため息は、炎を吐いているように見える。漂う洗剤の匂いは、焦げ臭く感じる。溢れ出る怒りの炎は、幻覚を、幻聴を、幻臭を、見せた。聞かせた。臭わせた。一般人には感じられないかもしれないが、魔術師にはその力をひしひしと感じるであろう。)」


雷鏡 ◆ > …なんだ…!?この異常な魔力と覇気は…まるで…鬼でも現われるような…!?(と、彼はどこからともなく流れ、感じられる異常なまでの怒りの炎をその身を持って感知する。それは、まともに出会ってしまえば、お終いのような感じであった…そして、その人間の前に彼は立ち…)あー…どうもこんばんは。何か…あったんですかね?(と、相手に聞いてみようか…もし襲いかかってきたらとりあえずは逃げに徹しようか。…いや、そういえば…アナスタシアというこの国の聖騎士に出会い、その指輪を貰ったはず。それを見せて、「あんたの同僚と知り合いだ」と伝えればもしかしたら最悪の事態は避けられるかもしれないと考える。)


オウガ > 「…(考えに更ける。自分はどうすれば良かったのか。自分が悪かったのだろうか。怒りの炎の裏には、自責の念も含められていた。その怒りの矛先は自分だったのだ。頭を垂れていると、見ず知らずの男に話しかけられる。そんな男に襲いかかるほど、オウガは猟奇的な、好戦的な性格ではないし、もっともそうであれば千騎長になどなれていないだろう。それはさておき、オウガは話しかけられて少し驚いた様子でいた。が、すぐに落ち着きを取り戻し、口を動かす。)
オウガ > 何か、はあったな。ありがとな、おっさんを心配してくれて。がっはっは、年甲斐もなく若いのに落ち込んだ姿を見せるたぁ、俺もまだまだだな。情けねぇ。(立場上、あまり多くは語れないが、心配してくれたことに、ひきつった微笑みと共に感謝を伝える。)って、あんたそれ…団長さんの指輪じゃねぇか…!…あんた、何者だ…?(指輪を見せられれば、また驚きを隠せなくなり、その後小声で話を続ける。人々は道を行き、その足音で小さな声をかき消してくれている。あぁ、なるほど。人を欺くというのは、人に隠し事をするというのは、何かに紛れさせるということなのだな、なんて感じた。些細な隠し事も、膨大な隠し事も、紛れさせればすべて同じ。知らなければすべて同じなのだ。なんとも、むず痒いものだ。小さくても、大きくても、掴めないなんて。)」


雷鏡 ◆ > まぁ…簡単に言うと、団長さんとお知り合いになったしがない傭兵ってところさ。まぁ、普段は何でも屋をしているがな。(と、彼は怪しまれぬ様にとその経緯を洗いざらい話す。内容としては…「花祭りに来ていた聖騎士団長とたまたま出くわして、そこで自分のことを話したら、ウェンディアでも営業しやすいようにと指輪をくれた。」ということである。しかし、彼自身も、今更ながらとてもすごい友達を持ったもんだな…と考える。)


オウガ > 「…なるほどな。団長さんの知り合いの傭兵、たぁまた特殊なもんだ。団長さんの指輪見せたら、そりゃもう大儲けだろうな。がっはっは。(なんて、普段の調子を取り戻し、冗談を言う。)そんな回りくどい言い方をしなくてもいいさ。俺は…そうだな…(場所を変えることを少し考えるが、周りを見れば、足音は反対側の歩道で歩いている人の方が多いことに気付く。)千騎長だからな。(少し屈んで、耳元で囁くように言う。機密かと言われればそういうわけでもないし、バレても別にいいか、と思いつつ。)ま、薄々気付いてただろうがな。(背筋を伸ばし、元の体勢に戻れば、目をそっと閉じて、顎髭を捻りながら。)
オウガ > なぁ、あんたは今回の戦争の結果についてどう思う?「ここでの仕事がしやすいように」ってことは、別の国でも仕事してたんだろ?…それについては咎めねぇから、素直に答えてほしい。(どこか虚しさを感じる錆色の瞳で、あなたをまっすぐに見つめながら、オウガは問う。)一人の少女と、多くの兵が傷ついた。それは、俺のせいと言えるだろうな。(溜め込まれた悲しみを、雨が拐っていく。人々は走り去り、犬や猫は軒下で震えている。オウガも猫や犬と同じように、軒下へ滑り込み、雨が降りやむのを待つ。)最悪だ、出るときゃ晴れてたのに、急に曇って急に降りだしやがった…寒くねぇか?(スーツの上を脱ぎ、あなたへ差し出す。差し出すのは優しさだ。優しくするのは簡単だ。騙すのは悪意だ。悪意を与えるのも簡単だ。実に簡単であった。「裏切られる」のは。何も難しいところの無い、裏切りだ。だから虚しい。…しかし、シント侵略作戦は行われた。これはつまり、その作戦の首謀者である「サクヤ」は最も信用できる人間だ、ということ。…ああ、怪しい者を考え出すのも、簡単なことであった。)」


雷鏡 ◆ > まぁ、あれ以降…ウェンディアでなんでも屋をやっていたら依頼の数がもとが少なかったのもあるが、倍以上に増えたわけさ。まぁ、結果的には儲けさせて貰ってるのかね…?そのへんにいる警備さんなんかとも顔見知りにはなったしな。(と、その右の中指に嵌めた指輪を見ながらそういった。事実として、もとは週に一つくらい依頼が来るか来ないかぐらいだったものの…騎士団長と出会ってからというもの、依頼が大量に転がり込んでくるようになったからだ。それこそ、トイレ掃除から人や物探しなんかもである。それからは万事屋開業までのもともと予測していた時間よりも大幅に短くなった。少なくとももう後10年以内には必ず開業できているという確信があるのだ。)なるほど…千騎長…ってぇと、魔術千人分の実力を持つってことか…(と、彼なりに自分の推論をまとめる。何度か小耳に挟んだことはあるものの…こうして実際に出逢うのは初めてだ。…にしても、俺はなんでかはしらないが、ウェンディアの実力者たちとよく出逢うな。)
雷鏡 ◆ > んー…今回の戦争の結果…ね。この前の尊華の国からの攻め込みのことか。あれに関しては俺もウェンディア側として引き受けた。しかし、俺としても依頼の目的の完遂は叶わなかったから、俺としても良くない…と、言いたいところだがな。俺は3カ国すべてを渡り歩いては商売を続けてる。だからどの国がどうなっても同情しちまうってわけだ。…それに、ウェンディアにも多大な被害が起こってしまったことに関しても俺はそのときに戦っていた俺にも否があると考える。何分、依頼主もとい、依頼主国の被害を抑えられなかったのだからな…(と、相手にそう答えた。そうすると…雨が降ってくるのを感じるが、普段から水というのは彼にとってはこの上ないほど価値のあるもの。だからこそ…)雷鏡 ◆ > いや、寒くないぞ?むしろこれしきのことくらいならば、普段からサバイバル生活をしていたら慣れるもんよ。(と、相手に再び返答して、相手のスーツの差し出しを、丁重にお断りした。)むしろ、今雨が降るのはありがたい。(と、彼はかばんから鍋を取り出して、雨水をため始める。ある程度溜まったら煮沸して飲み水にするのだろう。)


オウガ > 「がっはっは、そりゃあ良かったじゃねえか。団長さんもさぞ喜んでることだろうな。(倍以上に増えた、という言葉を聞き、その指輪の効果を確信する。…しかし、)ま、始まりはその指輪のお陰とはいえ、あんたの実力は確かだってことはわかる。実力が無けりゃ、依頼量は減っていってるだろうしな。がっはっは!(声高らかに笑いながら、あなたの実力を称賛する。)あんたも、難儀な仕事に就いちまったもんだな。しかし…あんた、タフだねぇ。生き残る為にはそのタフさが必要なんだろうな。(話しているうちに、悲しみや怒りは晴れてきた。すると、雨も止み、空は晴れてくる。)…急に降って、急に止んだな…夕立だったのか?まぁいい…ありがとな、あんたと話したら大分楽になった。そろそろ時間も時間だし、俺は帰る。…あぁ、そうだ。こんな物で依頼が増えるかは分からんが…これ、やるよ。「我が肉体に宿りし燃え上がる魔力よ、白く輝く銀貨に流れよ。太陽の名のもとに。」(すると、赤い魔力が一枚の硬貨に宿り、きらびやかに輝いている。その硬貨をあなたに手渡し、オウガは手を振って家に帰っていく。その背中は、最初に出会った時とは違い、頼もしく、少し大きく見えた。)」〆