この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

本の海より酒の海

(糸依&竜灯)

ぽぺ/糸依 > 「あ゛ー…………」(時は宵。兵舎の個室、壁の一面に留まらず二面を埋める本棚が特徴的な私の部屋。元々特別几帳面な性格でもないから、よく読み耽る本は床に適当に積まれており、少しの振動でずるりと横から滑り落ちて絨毯を作りそうな散らかり具合であった。足の踏み場もどこにどの物語が記されているかも私だけが把握している、云わば独壇場。寝具とテーブルと四つ足の背凭れ椅子だけが場違いに浮いた、お世辞にも綺麗とは……普遍的とすら言えない空間で、制服をだらしなく被ってはベッドのシーツに埋もれるようにうつ伏せになる女の姿があった。よく見れば顔面は開かれた本を潰すようにして突っ伏しており、いつものそっけなくよそよそしい、言うなれば堅物な態度を知る者からしたらてんで可笑しい場面だろう。古風で取っ付きにくい口調、まるでいまにも倒れてきそうな木の彫刻のように扱いの難しい……尊華帝國一般兵の糸依が、奇声を本にぶつけながらこの有り様なのだから。   (5/14 22:13:55)
ぽぺ/糸依 > 痴態を晒している原因はモチベーション、何かと頭が回らず、今朝より楽しみにしていた本も一頁と読み進めることができない。サイドテーブルの明かりだけが灯る個室、防音加工の類いこそしっかりは施されていないものの、毛布にカーテンに本とこれだけ音を吸収するような物があれば少々は騒音も漏れないだろうか。障害がなければこのままぐずぐずと眠ってしまいそうな脳内、動かす為のネジなんて、ウェンディアでもないのだからあるわけないじゃないか。そろそろ本が傷む、と顔を上げてくすんだ赤ワインの背表紙を丁重にテーブルへと置いては、ばふり、とまた顔を塞ぎ込んだ。)>クノさん。   (5/14 22:13:57)


クノ/竜灯 > 「おーい!糸依さん!糸依さーーーん!」((尊華帝國軍人寮。夜の帳が降りかけた、黄昏を少し過ぎた時間帯にて、竜灯は部屋を軽く叩いてそう呼び掛ける。部屋の鍵は空いていなくて、ガチャガチャとドアノブを回した音も貴女には聞こえているかもしれない。起きていることを祈って貴女を呼ぶ竜灯の表情は、何処か困った表情に歪んでいた。...竜灯は命の水⋯⋯通称〝狂い水〟の記憶を保持していた。忘れられるはずもなかった。あの時の記憶をしっかりと覚えていながら、竜灯は貴女に声を掛けたのだ。迷惑を掛けた、という自覚がありながら、貴女にずうずうしく声を掛ける。)「⋯⋯暇か?暇なら俺と一緒に呑みにでも行かんか?色々話したいこともあるきにの!」((どんどん、と再び扉をノックして、貴女の名を呼ぶ。夕暮れを少し過ぎたこの時間帯、ある程度寮は喧騒に紛れているとはいえ、それでも竜灯の声は大きく響く。ポケットに入った巾着袋の軽さを一切気にせず、貴女に奢ってもらう事を前提に話を進めていく竜灯であった。)「起きちょるかーー?」   (5/14 22:37:47)


ぽぺ/糸依 > 「……………ぁ゛、ぅ゛……うっさいうつけのがまぁたせびって……は?私??」(意識を泥に沈ませる直前、木の乾いた音とガチャガチャという金属音、それから無駄に五月蝿くて耳障りなテノールの声。最早尊華の軍兵の中では日々の風景の一部となりつつあるこの迷惑行為。事の首魁は私と同じ兵である男、訛った口調と阿呆を通り越した思考回路が特徴的なうつけの竜灯である。彼の金集りは最早代名詞となっており、同じ位の兵には留まらず佐官にまで被害が及ぶ始末。絶っっっ対に、何があろうと関わりたくない人種である……のだが、私は彼に貸しがある。麗しが刃を剥いたあの惨事、『狂い水』と巷で呼ばれるあの忌々しい記憶。私が彼を救えなかったことが、水に溺れそうなアイツを、掬えなかったことが。殆どが悪いものではあるが、彼の噂を小耳に挟む度に気持ちは重く沈んで。嗚呼、寝付きが悪くなるじゃないか。なんて他人事のように文句をぼやいて暫く放っていたのだが……ふと、ある地点で彼が呼んでいるのが私だということに気付く。   (5/14 23:11:30)
ぽぺ/糸依 > 暫く大きな音を出していなかった声帯は裏返り、持ち掛けられた話の内容を頭で整列させるのにも時間がかかる。……いや、どういう神経してんだアイツ、呆れることすら馬鹿馬鹿しい。)「よ、ほ……はい、起きております、が………」(彼の噂はよーーーーく知っている。いつかお詫びを兼ねて金でも渡しておこうとは思っていたのだが、色々と気持ちの整理もつかぬまま、彼に迎えにこさせる結果になったのは少し申し訳ない。ただ此方としても気まずい雰囲気で酒を酌み交わすだなんて御免だった。……気の置けない相手ならまだしも、仮にも異性。晩酌の駄賃だけ渡して追いやってしまおう、と巾着に包んだ硬貨を手に入り口へとひょい、と進んだ……ところで、渋って。……もしかしてこれ、友達作る好機? つい先程まで関わりたくないだのとほざいていた癖に、寝起きの頭はとんだ計算違いを起こした。それにあの竜灯は共に呑みたいと誘ってきているのだ。それを面と向かって断るのも……いつもならば容赦などしないが、相手が相手なだけに負い目を感じてしまう。ドアノブの鍵に手をかけたまま、暫くの硬直と共に思考を巡らせて。)   (5/14 23:11:31)
ぽぺ/糸依 > 「…………随分と待たせてしまい申し訳ない、竜灯殿。準備は整いましたので……では、詣りましょうぞ」(ゆっくりと戸を開き、いつもよりも髪の結い目を下げて、最低限の身だしなみを整え貴方の前に姿を見せる。選んだのは共に着いていく選択肢。理由なんて“気分”が殆どを占めている。頭も冴えず、このまま一日を終えるにはどこか華々しさもない。たまにはこうやって、まだ片手を折り数えられる程の晩酌に想いを馳せるのも、良いか…なんて。呑まれる前に、私も随分と惚けているようだ。)>クノさん。   (5/14 23:11:42)


クノ/竜灯 > 「...お。」((蚊の鳴くようなこの返事は貴女には聞こえていないだろう。心は昂りつつも、大声で返す程ではない。ここで大声で返してしまえば、糸依さんは心変わりしてしまうのではないか。黙って扉を開けるのを待つのが得策だろう。余計な時だけ回るその思考回路が竜灯の声を落ち着かせる。タダ酒は最高、そんでもって...、糸依さん、おまんにはお礼をしておきたい。二律相反な想いに振り回されるまま戸が開くのを待つ。その時間も待ち遠しくて何度手を伸ばしたことか。タダ酒か、それとも自分に手を差し伸べてくれた貴女へのお礼か、それすらも自分の中で決着が付かぬまま、扉はゆっくりと開かれる。絹のような黒髪にさふぁいあの様な青い瞳。相変わらずよくよく見れば美人じゃのう、そんな気持ちを抱えながら羽織った羽織を翻して背を向けて、ニヤリと笑うのだった。)   (5/14 23:46:51)
クノ/竜灯 > 「⋯⋯の!遅かったじゃなか、糸依さん。ちゃっちゃといこうぜよ、狂い水明けのせいで居酒は日夜満員じゃ、遅いと寿司詰めどころか門前払いぜよ!!」((ほら、いくぜよいくぜよ、と貴女の手を取って一押しの店へと案内していく。そこはいつか火津彌さんと顔を出した小洒落た料亭でもあった。はようはよう、と大きな歩幅で貴女を先導していく竜灯の表情はとても楽しげなものなのだった)「折角なら旨いもん食いたいしの、俺の病明け、んでもって糸依さんの優しさに乾杯、そんなところかの。」   (5/14 23:46:54)


ぽぺ/糸依 > 「は、はぁ……ぁ、ちょっ…!!」(扉を開けばそこには例のうつけの姿が。赤と黒を基調としたごくシンプルな色使いの風貌なのに、性格のせいでとても騒がしく喧しい。鞄を持たずに空だった右手を掴まれれば、準備の間もなく先導される。エスコートの下手くそな彼に「かえすがえす無礼な……」と、せめて聞こえないように揶揄してみせたり。稚拙なプライドが貴方への無礼を抑制するから、がら空きの背中に何かしら喰らわせてやるのは控えてやろう。これからの愉しさに心を弾ませる声。竜胆車が描かれた背中からは、残念なことに一抹の遠慮や心苦しさなんて代物を読み取ることはできなかった。合わぬ歩幅を間に合わせるようにパタパタと駆け足。どうせ、羽織の下にちらりと見える腰の巾着はお飾りなのだろう? 勘定を受け取るのが私だと考えると過度の贅沢は控えたいところなのだが、そうはいかないらしい。恐らくは彼お墨付きの、そして幾度となく他人の金と共に夜を明かしたであろうその店は小洒落ていて。暫しの贅沢の我慢を察しながら、私には些か敷居が高いそこに怖じ気づいていた。   (5/15 15:29:25)
ぽぺ/糸依 > 引かれていた腕の反発を強め、一度立ち止まろうとはしたものの。最早無垢とまで言えそうなコイツの笑みを見ていると、拒むことすらちゃちなプライドに思える。)「祝いの宴…ですか。げに、少しの奮発ならそれも良かれ。とことん付き合いましょうぞ」(マントの下で鞄の紐を弄りながら、急かされては慌てて後ろを着いていく。声色こそやれやれ、と言いたげな様子ではあったが、顔は裏腹ににっと歯を見せては表情を綻ばせる。素直に楽しむことはできずとも、折角の機会。毒を吐けども根は浸ることのできる暖かさを求めている。何か新たな物を求めて心を踊らせていたのは、どちらも同じなのかもしれない。)>クノさん。   (5/15 15:29:28)


クノ/竜灯 > (かなり強引に連れ出してしまったのに、糸依さんからは特に目立った反応を見せることは無かった。糸依さんの事だから暴言の一つや二つ、若しくは暴力の三つや四つ覚悟していた。『暴飲暴食で返してやろうかの』と半分冗談で思ってはいたのに意外にも素直に付いてきてくれる。珍しい、この人がこの人じゃないみたいだ。たわいも無い思考を泳がせていると既にもうそこは料亭の前。気付かぬままに早足になっていたのかすぐだった。振り返って声を掛けると漸くまともな反応が返ってくる。⋯返っては来たけど、やはり拍子抜けするような返答で内心困惑気味なのは隠しておこう。)「おお、げに!まっことその通りちや。優しいじゃやいか糸依さん、今日はとことん飲もうぜよ!」   (5/16 06:19:37)
クノ/竜灯 > ((竜灯は貴女の放った言葉に反応し、同音の言葉を繰り返したが、恐らくは意味が違うのだろう。しかしそれに気付くことも無く、貴女が着いてきているのを確認して、青い暖簾を潜って戸を引いた。ガラガラと子気味良い音と共に、封じ込められていた熱気と料亭特有の良い匂い、そして談笑の声が解き放たれる。やはりこれだ、この空気が一番だ。先に一歩中へと踏み入れるとまあまあ顔立ちの良いいつもの中居が現れた。竜灯を目にしては口に手を当てて深いお辞儀、いつもありがとうこざいますといった簡単な口上に、ぼさついた髪を掻きながらニヒルな笑みを浮かべる竜灯だった。)   (5/16 06:20:09)
クノ/竜灯 > 「こんばんちゃ、いや、今日は火津彌さんじゃなくての。此方、糸依さんと言ってな、俺の大事な友人で客人やき、今日は宜しく、楽しませとうせ。」((一歩横にずれて貴女に手を向け、多分互いに初めましてだろうからと貴女を中居に紹介した。先程までの軽々しい口振りは少しだけなりを潜め、見栄を張ってかどうやらカッコ良くエスコートしたつもりらしい。一拍置いていつもの流れで先に酒とつまみを注文してしまおう、といった所で「あっ。」と声を上げ。ちらりと視線を向けると貴女に問いかけた。)「糸依さん何飲むがか?ウェンディアの麦酒っちゅうのもさっぱりして美味いけんど、やっぱり清酒かの?よう分からんかったら俺と一緒にしちょくきに。」   (5/16 06:20:32)


ぽぺ/糸依 > 「……優しい、と。ははっ、やはり貴殿は誠、脳天ばかりが極楽の阿呆だ」(ふと目を丸めいぶかしそうにする私を置いて、青に隠れたのは先を行く竜胆車。カラカラと鳴る引き戸と桟、ふわっと漂う匂いが腹を啼かせ鼻を擽る。熱を孕んだ風に衣と髪を靡かせながら、そのまま全て後ろへと流すように小さくケタケタと嗤った。私が優しいだなんてとんだ冗談だ、当人を嗤わせるには十分だがそれでは客は笑わないぞ青二才。エゴと気遣いを一緒くたにしてもらっては困るのだ。今日貴方の後を大人しく着いていったその理由が、荒んでも濁ってもいない清流だとでも思ったのだろうか。誰として顔も知らぬ輩の談笑すら野次、寝起きの頭はようやく嬉しくもない通常運転を取り戻したようだ。肩を竦めて頭を下げては薄い暖簾に腕を通し、肥溜めから投げるように揶揄を吐く。)   (5/18 09:47:31)
ぽぺ/糸依 > 「御初御目に掛かる、糸依と申します。……今宵はどうぞ、良しなに」(横へ捌けた貴方の向こうに見えたのは、既に散って青葉を芽吹かせた桜の色を彷彿とさせる源氏香小紋だった。春を纏う可憐な仲居は、清潔な純白の腰巻きが相まって清楚な出で立ちに見える。会釈と共に脱帽を試みた手が空気を掴んで、それを誤魔化すように横髪へ手櫛を通す。癖の落ちぬ毛はリボンに縛られていないせいかやけに毛先が広がっていて、すっきりと手を滑らせずに突っかかるのが逆に安堵をもたらす。隠蔽に必死だったからか、貴方の告げた『友人』という言葉を汲み取れなかった。仮に聞こえていたとしても、今の冷えきった心と頭ではきっと、見栄を繕うだけのただのでたらめだと判断するのだろう。伝説を作る、だのとわざとらしく他人に豪語するような人だ、良く見られたいと思うのは当然の心理なのだろう……私としてはあまり好ましくない行動だが。……言葉の力とは偉大だが、力を押し付けたり、又は与えたりする相手が……聞き手が居なければ成立しない強さだ。挨拶や返事、意見は他人に聞こえてこそ意味があるのだと母に口を酸っぱくして言われたのを思い出す。   (5/18 09:48:04)
ぽぺ/糸依 > 恭と笑む仲居を横目に問いを聞き、はて、と暫し沈黙した。)「お恥ずかしながら私、酒やその類いはつやつや知らず……いえ、私とて兵ですので、貴殿の連れ様である佐官のように数多の賄いはできませぬし。とばかりの摘まみで十分ですので、お気になさらず」(ひら、と手を振り選択したのは断り。太陽の沈み冷えた外とは打って変わって蒸すような店内にブラウスの襟のボタンを一つ外す。湿気て暑いとはいえ、通る風もないよりは余程マシだ。……経験は浅いとはいえ杯酌が苦手な訳でも、特別酒に弱い訳でもないのだが。佐官を連れてきている程だ、やはり勘定の敷居は低くないのだろう。どうせ酌み交わすならのならもっと肥えた金蔓とやるんだな、と遠回しに訴えてみるものの、それこそ暖簾に腕通しという奴だろう。さて、次に手荒く迎えるのは『そんなことは気にするな!』という酔いへの誘いだろうか、さてはてどうして躱してみせようか? …なんてのも杞憂かもしれない。次にうつけが下す判断が、此方に選択肢を提示せぬ程強引とも限らぬのだから。)>クノさん。   (5/18 09:48:18)


クノ/竜灯 > (それでこそ糸依さんじゃ。いつも通りのつっけんどんな〝らしさ〟を取り戻し始めた糸依、言葉にこそしなかったが竜灯は心の中で唇をほころばす。さっきまでの優しい⋯というよりはらしくない糸依も嫌いではない。寧ろ好きではあるが、ありのままの糸依という人間が何より竜灯は好きであったし、「糸依」だからこうして誘った訳で。罵倒されて嬉しいとは被虐的だが、どうしようもなく心の空は晴れ模様だった。暖簾を潜り抜けてもそれは変わらず、要望を問う声に手を振って断りを入れるのも想像の範疇の内。今日は呑むと決めたのだ、堅苦しい言葉遣いも遠慮も何もかもとっぱらって話すつもりで来た。さあ、ちゃんと胸の留め具を外しとうせ。黙って自分よりも幾分か小さな肩の上に手を乗せると、真っ直ぐ視線を合わせて口角を吊り上げた。)   (5/19 07:06:34)
クノ/竜灯 > 「あいわかった。麦酒は辞めようぞ、今日はちゃっちゃと酔いを回して笑う事に決めたちや!!⋯⋯の、ちゅう訳で、適当に清酒を二合⋯いや四合じゃ!肴は白身の刺身を適当に、遅うなりそうなら茹で豆でも突き出しとうせ。」((肩に手を乗せたまま首を回し有無を言わさず中居に注文を通してしまうと、軍靴を乱雑に脱ぎ捨てて靴箱へと放り込み、一足早く床へと上がれば羽織の衿を両手で掴んで、ぴしっと皺を無くして気合を入れた。続いて糸依が靴を脱ぐのを見届けるが早いか手首を掴み、丁度斜め後ろになる糸依の方ばかり見ながら長い廊下をずるずると引っ張っていった。)   (5/19 07:06:36)
クノ/竜灯 > 「それにしてもすまんの、もっと早う糸依さんを誘いたかったが、やる事がこじゃんとありよって、中々時間が取れいでこがな遅くなってしもうた。積もる話も糸依さんは知らんが俺はあるき、今日は腹割って話そう!酒は口を回す油⋯⋯⋯そう、〝おいる〟ぜよ。」((貴女の返事も待たずして空いた手を広げるようにジェスチャーをしたり。ろくに前も見ずにべらべらと捲し立てていく竜灯の口車は酒要らずして良く回るらしい。待つタダ酒に想いを馳せながら、更には綺麗な人と呑める幸せに表情を緩ませる。⋯⋯またとない機会だった。俺の為に治療をしてくれた糸依さんともっと仲良くなる機会。今まで理由が無かっただけで、何故だか糸依さんとはまこと気が合いそうな気がしてならん。〝気の置けない友人になれる気がする〟互いに軽口を言い合って感じた気持ちを遊ばせる。⋯歩き始めて数十秒としない内に先程中居が言っていた部屋まで辿り着き襖を引き開けて。互いに机を挟んで座布団に落ち着くのだろう。)   (5/19 07:06:48)


ぽぺ/糸依 > 「貴殿の其の耳は繕った飾りで? 私は確かに断った筈……。はぁ、強ちなるのもなめげなるのも覚悟したはおりましたが。若し私が酔いし間にとかく要らぬ注文で卓を埋めようものなら、金輪際もう晩酌には付き合いませぬ故、御覚悟下さい」(マントの留め具の上から一つ、少し白濁したようなデザインの目立たぬボタンをぷち、と外す。首を緩く絞めていた襟が少し開いて、慣れぬ場で感じていた息苦しさが幾らか紛れた。解放もつかの間、ずしりと片方に掛かった圧に斜め上を見上げれば、何か良からぬことを企んでいそうな貴方の顔が。此方の意見を聞く耳を持ってはくれないらしい、何やら呪いの呪文のように注文するその声は、肩の上に留まらず首に腕を回されたこの距離だと更に大きく聞こえる。己のものよりもしっかりと、そして妙に重いその感覚に、男女では差が生まれてしまうものだという現実を突きつけられる。何故女は男のように逞しく強くなれないのか、生物学的回答が欲しい訳ではない。この男とて鍛えていないわけではないだろうが、努力では埋められぬ力量というのはやはり理不尽だ。   (5/19 20:52:17)
ぽぺ/糸依 > 玩具に飽きた子供のように腕を解放しては忙しなく靴を放る様に、一度通りすぎた呆れが戻ってくる。……恐らく、これぐらい強引に誘われなければ折れることもなかっただろう。あくまで私が遂げたかったのは謝礼、駄賃を請け負って形ばかりの杯を交わして、そして浅く会話をして帰る。たったそれだけで良かったのだが。ほんの出来心が、友達が欲しいなんてのがこの誘いに釣られる理由になってしまった。あくまで表面上は渋々と、付き合わされたという体で。紐を少し緩く編み上げたブーツは、踵を踏むだけで簡単に脱げてしまう。揃えようと振り向こうとしたその時……)「あ、わっ……!?」(視覚から伸びた腕。あっという間に手首を掴まれあれよあれよと引き摺られる。相も変わらず薄らと笑みを浮かべる中居にはどうやら助けは乞えなさそうだ。ノーマークだった後ろ方向への移動、重心の急な変換に転げそうになるのを必死に堪える。まるで異形のように後ろにも瞳がついているのかと思いたくなる程、進行方向など見向きもせずにずんずん進んで行く。こいつこそ躓かないかなと密かに願ってみるものの、どうやら通じなかった様子。   (5/19 20:52:27)
ぽぺ/糸依 > 開いた襖の向こうには、少しこぢんまりと、しかし二人が屯するには十分なスペースの空間が。抹茶色の鮫小紋の座布団、木造の小机、これから並べられるであろうは色とりどりの料理達を想像する。先に腰を下ろした貴方を見てから、向かい合うように反対側に腰かける。正座から足を左へとずらして、沈黙の中で目の前の貴方をじっと見つめる。……早く、料理が運ばれてきてしまう前に。言うべきことを、謝罪を。たった一秒もあれば済む筈の言葉が喉につっかえて出てこない。膝の上に作った握り拳がじとりと汗ばみ、やけに口の中が乾いてしょうがない。こうしている間にも罪の意識ばかりが肥大して内側から破裂しそうな程に胸が苦しくなる。……覚悟を決めろ、尊華帝國兵糸依。雅の中に呼吸の音を残して――)「――っ、あ……」   (5/19 20:53:02)
ぽぺ/糸依 > (「申し訳ない」ただそれだけだったのに。すぐそこまで出かかっていた声は給仕の呼び掛けに遮られる。カラリと開けられた襖、寂しかった机の上を彩っては失礼しましたと其人は去っていく。……出鼻を挫かれたことが敗北にも思えて悔しかったのもあるが、何よりも忌々しいのは。机上に陳列した皿、素朴そうな枝豆に清酒というそれが食欲を煽ってくるのが、何とも腹立たしかった。)>クノさん。   (5/19 20:53:14)


クノ/竜灯 > (貴女の葛藤なぞついぞ知らない竜灯は胡座を掻いて座布団の上に勢い良く腰を降ろし。凝ってもいない肩に片手を乗せぐるぐると腕を回していたり、と思えば机の下を覗いて「あや、この前に零した醤油、綺麗に拭かれちょるのう。」と、汚れの無い畳に驚いた声を上げたり、と好き勝手にいつも通り動いていたが。顔を上げて糸依に話しかけようと視線を向けたらばそこには、気持ち引き締まった表情の糸依がいた。考えればそう沢山笑わん人やき、普段通り。それにお酒には詳しくないと言っていたし、もしかしたらこうして男女二人で酒を飲み交わす経験も少ないんかのう。緊張でもしているのか、と踏んでどちらかでもなく互いに見つめ合う。...というには視線が合うことはない。どうやら糸依さんの視線は自分の胸あたりに向いているらしい。腕を組んで、俺が助け舟を出してやろうかのう。と口を開きかけたその刹那。運ばれた来た料理が俺の言葉を遮った。もしかしたら糸依さんもかも知れないが...まあ丁度良い。運ばれた来た突き出しの豆と清酒に喉を鳴らして、さっさと徳利を手に取った。)   (5/19 22:14:04)
クノ/竜灯 > 「さ、糸依さん呑むぜよ。酒を呑めば解れるき、⋯⋯おまん、なんか緊張しとるようだしの、折角の酒の席、ぱーっと楽しまんといかんちや。」((注ぎ口から薫る芳醇な酒精の匂いに口元を綻ばせると。お猪口を手に取るように促して、徳利を僅かに傾けて見せた。)「酒は百薬の長とも言うし、まだまだ病み上がりの俺にはいい薬⋯⋯っとと、⋯糸依さんも毎日毎日肩肘張って疲れちゅうだろ、こういう日くらいたらふく呑んで何もかも忘れるぜよ、吐くのはいかんが溜まったもんは吐いてええきに。」((貴女のお猪口に並々と酒を注ぎ、危うく零れてしまいそうになりながら踏み止まる。続いて自分のお猪口にも酒を注いで徳利を机に戻した。⋯ゆらゆらと揺れる水面に自分の顔を映してから静かにお猪口を貴女の方に向けて、乾杯と音頭を取る竜灯だった。   (5/19 22:14:06)


ぽぺ/糸依 > 「あはや、何も特別張っている訳では……」(相手方の手に取られた徳利から薫るのは、すっと鼻を通るような、体にも記憶にも覚えのない匂い。ひりひりと肌を荒く撫でるような、軽い鑢にも似た感覚。不安や嫌悪、そんな心の靄も全て晴らしてしまうような刺激に僅かに顔をしかめる。青い瞳のような模様が中に収まったお猪口を軽く摘まみ上げ、繁々と見つめる。青だなんて粋だ、まるで己の瞳だけが向こう側から私自身を見つめているようにも見えるなぁ、なんて少々物語や御伽噺に耽り過ぎたせいか、そんな浮世離れしたような夢見事を考えてしまう。これではまるで“時代おくれ”のヨズアの民のようではないか。くつくつと心の内だけで笑みを溢して、お猪口を貴方へと向ける。見ていれば、嘴のように細く作られた注ぎ口からではなく、嘴を上に向けて反対側から酒は注がれてゆく。何やら私の知らぬしたきりがあるのだろう。……自分の指先でとくとくと注がれてゆく透明なそれは、照明をゆらりと映しては刺激の香水を辺りに漂わせていく。   (5/25 12:29:07)
ぽぺ/糸依 > ……酒は百害在って一利在り、なんていう古来からの言葉がある。今よりも正確な医療技術の普及していなかった過去の尊華では、漢方の他にも酒の類いが身体に良いと言われていた…というのを文献で読んだことがある。神への御供え物として献上されることもあるのだから、人々にとって古くから特別なものとして浸透しているのは確かなのだろう。)「なめき穀潰しの貴殿よりは背負う苦労も多いのは確かですが、とかく悩みを明けるにはしどけなく……砕けて言うのであれば、そうですね。無作法なその態度を改めて行動でこれからしっかり示してくれるのなら、愚痴でもなんでも、よそよそしさなど張らずに吐いてあげますよ」   (5/25 12:29:26)
ぽぺ/糸依 > (両の手を添えたお猪口を前へと差し出して、僅かに陶器同士の音を鳴らしては「乾杯」と軽く呟く。まるで旧友のように何もかも晒してしまえる筈がない、ましてやまだ信用も置けぬ相手には尚更。……冗談混じりに柄にもないことを言ってしまったが、怠けた精神は一夜そこらで改まるような代物ではないだろう。きっとできる筈もないのだから迂闊にそんな事を口走らないで欲しい、なんて皮肉を言の葉の裏に込めては意地の悪い笑みを浮かべる。謝罪の前に自らの首を締めてどうするのだ、なんて疑念を押し込むように清酒を一口流し込む。それが軽率だったのか、途端に脳髄にまで奇妙な衝撃が奔った。喉の奥が焼けたようにひりひりとして、以前に口にした度数の弱い物などとは比べ物にもならない。一瞬で身体は火照ってしまって、お猪口を一度机へと座らせては羽織の留め具をカチャリと外した。三つ折りにして脇に据えるその様は幾分冷静さを欠いており、頻りに喉を撫でてはけほ、と咳を一つ漏らした。)>クノさん。   (5/25 12:29:42)


クノ/竜灯 > (『何を言うとるがか。』心の中で溜息混じりに呟く。糸依は常日頃から気を引き締めて、肩肘張ってばかりだと竜灯は信じて疑わなかったから。互いのお猪口に酒を注ぎ終えて乾杯の音頭を取ると同じタイミングでお猪口を傾ける。しかし一口で喉を灼いてしまったのかすぐにお猪口を机に戻し、多少乱雑に羽織を脱いだ糸依とは反対に、喉を鳴らし一口でお猪口を空にした竜灯は、かーっ!と瞳を閉じて酒気を帯びた息を吐き出すと同時に早くも新たな酒を手酌で注ぎ直していた。)「穀潰しとは失敬じゃのう、確かに狂い水ん時は何も出来んかった。けんど守山は俺も戦うたぜよ、俺の故郷を侵さんとするべこのかあにはこの俺が直々に追い払うちゃった!!!はははっ、どうだ糸依さん。」   (6/3 07:51:39)
クノ/竜灯 > ((とくとくとお猪口に酒を注ぎ込みながら口にしていく内容は、どうやら見栄による嘘に近い脚色もかなり盛り込まれているようだ。竜灯が満を持して呼び出した炎竜は老いた魔術師の雷槌によって呆気なく霧散し、あろう事か共に放たれていた梟の氷魔術を熱で溶かすという事態を引き起こしていた。役立たず所か味方の妨害までして敢え無く戦場を離脱した竜灯の事を糸依が知らないと見ているらしい。お猪口を持った片手を掲げたりなどしながら自慢気に笑うと再び口を付ける。)「っくぅう!!やっぱりここの清酒は美味いのう!!ほれ、糸依さんももっと呑んとうせ、刺身が来る前にこいつを空けてしまおうぞ。早う早う、そのお猪口を空けるちや。」((身を乗り出してじれったそうに徳利を何度も傾けながら、まだ一口分しか減っていないお猪口を空にしろと急かす竜灯であった。   (6/3 07:51:40)


ぽぺ/糸依 > (皮膚を高温の炎で炙られたように痛む喉を擦り、目尻に溜まった涙の露を右手の親指で掬う。肩を忙しなく上下させ何度か深呼吸を繰り返す内に、日焼けを拗らせたような痛みにもだいぶ慣れてきた。子供の頃に背伸びをしたくて飲んだ甘酒を戻してしまった思い出がなぜか今になって頭を過る。突き出しの枝豆で口直しをしては、早くもお猪口を空にした貴方を不思議そうに眺める。……ああも美味しそうに飲めるものなのか、自分はまだまだ幼稚だな。なんて、そこそこに酒の席は朗らかに進む筈、だったのに。)「……ほう。そはめでたしかし、では我の見しは幻であると」   (6/4 19:30:04)
ぽぺ/糸依 > (その豪快な声に、屈託のない笑顔に、身の毛がよだつ程の悪寒を覚える。まだ並々と清酒の溜まったお猪口を微かに持ち上げたまま、ピタリと身体の動きを止める。声は震え、肌を針が細かに刺すような空気が場を支配する。何故こうも人は平然と嘘を述べられるだろうか、とその醜い精神をこれまでもう何時蔑んできただろうか。今の話に礼儀はあったか?その嘘で他人は得をするのか? ……私利私欲の為に人を欺き己を殺す外道め。私が何も視ていないと踏んで好き放題に歯の浮く台詞ばかり紡ぐ貴方に吐き気すら覚える。手元の水面からやっと上げた面には、最早慈愛や優しさなどというものはなかった。貴方の言葉は禁忌肢、訂正するにはもう遅い。――ガン、と陶器の硬い音が響いて、訪れたのは雅。)「私が守山に居なかったとでも思ってた?爪どころかどこまでも甘い奴だよね、滑稽を通り越して笑い声すら出てこないわ。……お前がやったことなんて精々只皆の足枷になったことでしょ?役にすら立てずにすごすごと戦場から帰った奴が!…つくづくめでたい頭だよ、寒気がするぐらいに意味わかんない。なんでそんな平気で嘘つけるの…?――ホント意味わかんないよ、このクソが……!!」   (6/4 19:30:21)
ぽぺ/糸依 > (早すぎる酔いのせいか、ここのところの急激な気温の上昇のせいか、カァッと身体が熱い。向けられた徳利を叩いて清酒をダメにしなかっただけまだマシ、劇号に身を任せて本能のままに相手へと怒号をぶつける。周りのことなんて気にせずに、自身の苛立ちを吐き捨てるだけ。身勝手なのは頭のどこかでわかっているけれど、そんなものでは沸き上がる感情の波を止めることはできない。そそくさとマントを腕にかけ、乱雑に鞄を掴んでは「もう帰るから」と踵を返さず襖へと向かう。何もかも知らんぷり、今日貴方に着いてきたのも、貴方を置いてもう帰るのも“気分”。友達になれるかも、なんて淡い期待するんじゃなかった。後味が悪い、口内の熱がぶり返すようで気色悪い。襖の取っ手に手をかけたところで、何も謝れていないことに…それから竜灯が今一文無しであることに気付く。……それがどうした、こんなクソ野郎放っておけばいい。自業自得、勝手に困っていればいいじゃないか。そう思っているのに……この部屋から出ることができなかった。あれだけ怒鳴っておいて、あれだけ好き放題言って、ここで去ることもできない。…最低だ。)   (6/4 19:30:55)


クノ/竜灯 > 「⋯⋯⋯⋯。」((楽しげな気分も、酒の熱に当てられて火照り始めていた体も何もかも酷く冷え込むのを感じた。何を言われたのか理解するのにそう時間は掛からなかった。口調は糸依にしては珍しく古めかしくて堅苦しいものではなく、もっと分かりやすくて直接的なものだったから。傾けた徳利を無意識のうちに戻し、張り付いていた笑顔は刹那のうちに崩れ落ちる。ことりと徳利を机に戻すと、乗り出していた体を元の体勢に戻し、せめてこんな事で傷付く自分の『弱い』『情けない』姿は見せたくないと背中を丸めて、胡座を掻いた自分の足元に視線を落としていた。)   (6/5 07:33:53)
クノ/竜灯 > 「⋯⋯、⋯。」((まさか、こんな事になるなんて。突き刺す様な軽蔑の数々はどんな刃や魔術よりも鋭利に胸を貫いていった。⋯⋯竜灯にとっては耐えられない事だった。自分が何の役にも立てなかった事実が。虚栄心から見栄を張ったのは目指す所にまだ自分が立てておらず、今居る場所が情けなくてかっこ悪くて誰からも見向きもされないような雑兵そのもの、有象無象と何も変わらない事が分かっていたからであった。糸依に嫌われたであろうことよりも、糸依にそれを知られていた事が、更にその部分を手痛く指摘された事が絶望の淵へとずるずると竜灯の意識を引きずり込んでいった。『帰るから』と席を立つ貴女に視線を向けることも出来ず、横を通り過ぎていく足音を耳にしながら、喉を鳴らして声にならない声を上げる。⋯⋯⋯⋯今、自分に出来ることは。必死に己に問い掛けた結果、出てきたのは夢物語の序章だった。)   (6/5 07:33:55)
クノ/竜灯 > 「⋯⋯伝説に⋯なる男ちや⋯。⋯⋯俺は⋯。」((それは貴女に投げ掛けたものでは無い。自分に言い聞かせる為の言葉だった。目指す場所を忘れないように、竜灯が竜灯である為に必要な、何よりも大事な『呪文』。魔術師竜灯という一人の男のたった一つの目標であった。言葉に魔力が宿るこの世界、言霊が奇跡を起こすこの世界に於いて『大ホラ吹き』と揶揄され続けても声を大にして宣い続けたのは、偏に口にし続ければいつか叶うと信じていたからだった。死んでも弱音は吐きたくなかった。何も出来なかったなんて言ったら、二度と底から這い上がれないような気がして。⋯⋯開かれることない襖の音。貴女が部屋を出ずに立ち止まっているのを頭のどこかで感じながら、何度も何度も自己暗示を掛けた。脳裏で繰り返し繰り返し刻み込んでから、静かに座布団から腰を上げた。重い足取りで糸依へと近付くと、襖に掛けられた手首を掴んで、引き止めた。   (6/5 07:34:12)
クノ/竜灯 > ⋯⋯『俺は────』今一度頭の中で反芻して、至って真面目な表情で口を開いた。)「⋯⋯まだ帰るには早いちや。もうちっくと飲んでいかんか、糸依さん。」((下げていた視線をゆっくりと上げて視線を合わせる。真面目な表情には先程のおちゃらけた雰囲気はまだ宿っていないものの、竜灯に出来る精一杯がこの状況であった。そしていつもの夢物語を一拍遅れて付け足した。他人にとっては大ホラと切り捨てる内容かもしれないが、竜灯にとっては一番本気の夢を。)「⋯俺は伝説を作る男ちや、糸依さん。必ず無駄にはならん時間になるきに、飲みなおしとうせ。」   (6/5 07:34:23)


ぽぺ@糸依 > 「…は?」(謝罪の一つや二つ飛んでくるかと思えば、聞こえてきたのはてんで的外れの自己暗示。自分にも聞こえるか怪しい程の声で批判を漏らしても届く筈もなく。どうやら語り手は鳥よりも小さな脳をお持ちらしい、無様だという感想すら通り越して哀れみを抱いてしまう。何が伝説だ、うつけの竜灯。決して彼が何もかもを怠っているとは思わない、程々に鍛えられた身体は怠惰ばかりでは育たぬ代物だった。しかし流れる噂は悪いものばかり耳に届くもので、名前を聞く度に今度は何をやらかしたのやら、と呆れていたものだ。……それすらまだ生温かった、毛ほどの関心を向けられていた。今はもう、存在すら認識したくない。好きの反対は嫌いではなく無関心、いつだか文献で呼んだページが脳を擽る。一晩の酒気に溺れて最低な夜を寝付けぬまま明かすぐらいなら、あのまま本の海に意識を沈めてしまえば良かった。余計な事ばかり思い返してしまって、微かに開いたままの唇がわなわなと震える。人と関わって、ろくなことなんてないのかもしれない、幸せを過ごせばその後の不幸は膨らむばかり。何れ訪れる不幸がこの身を押し潰すのなら、最初からその種を蒔かなければいいだけのこと。   (6/5 21:19:17)
ぽぺ@糸依 > 華はいつか枯れる。人の枯れた後には悲しみと孵卵臭の種子が不幸の種を蒔くのだろう。ぐるぐると渦巻くのは、酔いに沸騰して行き場を失くした叫び達。)「…………やめてよ」(立ち去る為の決め手を阻むのは二回り程大きな手。ちらりと横を見やれば神妙な面付きの彼がそこに居た。陽気さを失い萎れた様は珍しい。狂い水に覇気を鎮められたあの時を彷彿とさせるのが一瞬の罪悪感を甦らせるけど、そんなものを諸ともしないぐらいの嫌悪が私を支配していた。薄っぺらな夢物語をめでたく終わらせて、それで説得はおしまい?もう人の顔を見ることすら、誰かと空間を共有することすらしたくない……特にお前なんて。掴まれていた手首を、引き留める為の口実を無理矢理に引き裂いて。肌色のキャンバスに一筋の赤い線を描いて、刺すような痛みすら気にも留めず。蚊の鳴くような否定の後に上げた顔の目尻には、大粒の涙が溜まっていた。)   (6/5 21:19:33)
ぽぺ@糸依 > 「やめてよ、今はお前の顔なんて見たくもない。嘘ばっかり吐き捨てるような人と居るって考えただけで吐き気がするの、このまま此処にいたらいつか……いいや、今ですらお前を…………。認識したくなくて、顔も会わせたくなくて……殺したくて堪らなくなる」(心がすっかり、窶れて折れてしまった。怒りから始まった感情の連鎖が、どんどんと化学反応を起こして止まらなくて。今流れる涙の孕んだ成分も、どうすればいいのかも、自分が何を思っているかさえ何もわからない。今まで何も意識せずに突破できていた問題の解き方を急に忘れたように頭の回路が止まって。入る空気が肺から逃れようとする空気を押し込んで呼吸が乱れる。どうしようもなく胸が苦しくて、内側から虫に食い破られるように内蔵がずきずきと抉られる。羽織から覗く首筋を締め付けたくて、助けを乞うなんてそんなの情けなくて、この手を助けを求める為に貴方に差し出せない。添削も何もない随筆が、ぽろぽろと青の相貌から落ちてゆく。)   (6/5 21:19:52)
ぽぺ@糸依 > 「……お願いだから帰らせてよ。今日の勘定なら私が持つし、お前が望むんならこれからだって財布の口を緩めるから。………だからもう、独りにさせてよ。このままじゃ何もわかんなくて、全て失いそうで、気が狂いそうなんだよ……。ねぇ、頼むよ………ねぇ…………」(とうとう涙腺が決壊したのか、泣きじゃくりながら静かに懇願するその姿はあまりにも脆くて。まるで恐怖の最中、親に必死に許しをねだる子のように小さくみえるだろうか。手首の内にできた引っ掻き傷は既に瘡蓋を作り始め、指先へと垂れた血痕は赤い糸のように張り付いている。痺れを切らして喚いていた威勢はどこれやら、不安定も良いところの情緒で混沌に揺れる。ただブラウスの袖を濡らしながら、しゃくりあげる声だけを繰り返して返事を待つのであった。)   (6/5 21:20:49)


クノ/竜灯 > (無理矢理に掴んだ腕が引き剥がされる。逃がさない為に少し強く握っていて、それが災いし指先が強く擦れる感覚を覚えた。思わず手を見たがそこに傷はなく視線を流して糸依の手首を見て、気付いた。⋯⋯すまんかった、と謝罪の言葉は今は飲み込む。きっと同じタイミングで顔を上げた二人の視線が交わる。お猪口の水面のように揺らぐ青色の瞳に竜灯もまた瞳を僅かに見開いたが、すぐに真面目な色に表情を染め直して、黙ってぽろぽろと零れる糸依の話を聞き続けた。)「⋯⋯。」((〝嘘〟が、見栄が嫌いだと語る糸依の感情が強く伝わってきた。だけどこのまま終わらせたくない、そしてそれ以上嘘だと言って欲しくない。涙を流す理由までははっきりと理解する事は出来なかったけれど、少なくとも冷静では無いのかもしれないとは感じられる。⋯⋯けど、余計な感情も弱音も要らない、出来ることはしたいことを口にするだけ。泣かれる程だろうが、殺したい程だと言われようが、ここで黙り込めはしなかった。息を吸い込んで、今度は両手を糸依の方に乗せて言葉にする。)   (6/6 18:04:30)
クノ/竜灯 > 「金なんかどうでもいいんじゃ、俺はおまんと飲みたくて酒に誘ったちや。」((真っ直ぐ見詰めながら肩に乗せた手に力を込め、続ける。)「おまんが俺の言葉をどう思うたとも⋯⋯俺には〝謝れん〟、俺は本気で思うた事しか言わんから。⋯ 口にしたこと全て、俺は本当にそう思うちょる、信じちょる。」((竜灯にはそれが嘘だと口に出せない、認められない。認めてしまえば、その事実から抜け出せなくなってしまいそう。竜灯が前へ進む為に見栄は必要不可欠なものだった。故に〝俺は嘘だと思ってない〟〝だから謝れない〟という意味を言葉に込めた。竜灯が口にできる最大であった。再び瘡蓋が出来上がりかけている糸依の手首を掴んで。強い口調で呟いた。)「糸依さん、やき、俺と飲もう。話したい事が山ほどある、おまんと仲良くなる為に飲みに来たんじゃ、そう決めたぜよ。今夜はまだ帰らせん。」((強い口調で呟いたのは、竜灯が言葉の魔力を信じているから。本気故の語勢に釣られるように、掴んだ手首を僅かに引いた。   (6/6 18:04:32)