この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

就任式を控えて

(ヴァンジャンス)

大和守/ヴァンジャンス > 「…………就任式、か……」(凍える程冷たく──だが、何処か不安げな色を含んだ声が、静寂が支配する部屋の中に響いていく。珍しく、前髪をピンで留めているスタイルで、何時もとはまた違った彼女が其処には居た。部屋の中、彼女はやや気怠げに椅子に座り。……そして、不安げな声色だというのもまた珍しい。友人たる人物を失ってからというものの、彼女はその態度が豹変してしまっている。友人を喪う前と同じく、皆を鼓舞しているのは変わらない。何時も通りだとも言えよう。──しかし、何処か冷たいのだ。覇気は以前と変わらず存在している。しかしそれが酷く冷たいものへと豹変してしまっているのだ。それに気付くのは、勘の鋭いものだけだろうが。彼女は何時も通り振る舞おうと、全力でその“心”を隠しているのだ。友人を失った悲しみを他に晒すことの無いように、まるでそれは自分だけのものだと言う様に。──まるで『人形』の様に、親の言うことを聞いてきた私が、漸く自分の意思で何かを得たのだ。──ようやく、自分が生きていると言うことが、『人形』では無いことが理解出来たそれを。誰にも奪われたくはない。それを強制されたくはない。)   (5/3 02:33:28)
大和守/ヴァンジャンス > (ヴァンジャンスは一つ、小さく息を溢す。何時の間にか、ヴァンジャンスの瞳からは雫が一つ溢れていて。それは完全に無意識だったのだろう。彼女は暫しそれを理解できずに、溢れていく雫を眺めていたのだが、溜め息を溢せばそれを服の裾で乱雑に拭って。──情けない。これからこの聖騎士団、騎士団長ともなる人物が、一体何をしているのか。自分のその不甲斐なさに呆れ返り、窓際にある机に近付いていけば、青のリボンを手に取って。それは彼女の友人──失ってしまった友人、『アインハード』という男の、唯一の形見である。その形見は、ヴァンジャンスの心の支え。ギリギリで保っている心の均衡の唯一の支えだ。それが無ければ彼女は今にでも取り乱すと確信出来る程、それは大事なものだ。それを強く握り締め、そして抱き寄せれば、今度こそ涙腺が緩んで。)「………………もう、いやだ、……! どうして、どうしてどう、してどうして、!! 何でアインが死ぬの? どうして、……どうして、! 貴方が死ぬなんて、どうしてッ、どうして“私”が死ななかったの、……貴方の変わりに私が、……わたしが、しねばよかったのに……」   (5/3 02:33:42)
大和守/ヴァンジャンス > (──就任式、という重大な儀式の前だからなのだろう。何時もは保てている筈の無表情が保てない。心が乱れている。不安定で落ち着かない。落ち着けない。今まで他に晒したことの無い涙を溢し、はっきりと泣いている。泣き喚き、秘めていた感情を全て吐き出している。……ずっと、ずっと、彼女は囚われていた。何故彼が死ぬ事になってしまったのかと。死ぬならば、ずっと『人形』だった自分の方が良かったのにと、そんな思いに。自分が生きる価値なんて何処にも無いと、ずっとそう思っていた。だから。だからこそ。彼が死んだのが彼女には許容できていないのだ。少しも許せない。全く許せない事なのだ。こんな自分が騎士団長になるなんて、はっきり言ってしまえば荷が重すぎるのだ。友人が生きていた頃ならば、彼に助けてもらいながら出来ただろう。──だが、今は違う。心の支えが居ない不安定な状態だ。また友人の様に、誰かを失ってしまったらと思うと怖くて堪らない。けれど成さねばならない。)   (5/3 02:33:51)
大和守/ヴァンジャンス > 「…………どうか見守っていてくれ、アイン。…………頼む」(涙でぐしゃぐしゃになってしまった顔。涙を乱雑に拭い去り、深く深く息を吐く。長く瞳を閉じ、開いた次の瞬間には何時も通りの雰囲気へと戻っている。戻らなければいけないのだ。黄金色の睫毛に彩られた、それと同じ色の瞳。それからは既に光が失われて──否、最初から存在しなかったのだろう。握り締めていたリボン、それをもう一度強く握れば、微かに震える手。それには気付かないふりをして、ヴァンジャンスは口を開く。決意を。それを、唯一の友人に誓うために。)「……もう、誰も失わない。死なせない。死なせたく、ない……アインハード。私の、唯一の友よ。──お前に誓って、絶対に」____〆   (5/3 02:33:58)