この世界では、”言葉”が魔力を持つ。

命の水-治療失敗-

(火津彌&獅子唐)

〆鯖/火津彌> (尊華帝國軍基地内部。亡者のように水を求める患者で犇めき合う阿鼻叫喚地獄にまた一人、軍人が運ばれてきた。先程治療した男とは打って変わって、その男――獅子唐は、纏わりついた静寂が一種異様で目立っていた。何か喋っているのか、喋っていないのか……ともかく近づいてみる事にした。本日二回目の治療である。)……獅子唐、お前もやられたか。私の声が聞こえるか?今、助けてやる。(しゃがみ込んで目線を合わせ、両手で肩を掴んだ。謎の病に罹った者はみな瞳孔が開きぐるぐると泳いだり、阿片中毒に似た顔をしていたが分厚い色眼鏡によってあなたの瞳を見る事は叶わなかった。)   (4/25 22:33:24)


山葵:獅子唐> ……あ…ぁー…。…… 火津彌、殿。本日はお日柄も良く…ぁー……いえ、こんな事を話すのは、野暮と言うもの、だろうか……。………うん。…喉が乾いている…くらい…ですかね……(声が聞こえるか、そんな問いを理解しているのか分からないままでボソボソ、と声を漏らす。相変わらず聞き取り辛い小さな声は基地内の阿鼻叫喚の喧騒に掻き消されてしまいそう。)………阿鼻叫喚、地獄絵図…。言い表すのも憚られる…と、言いましょうか。(瓶底のように分厚い眼鏡の奥、誰にも見えない目を細め。時折喉を掻き毟るような行為以外は目立った異常は見られないようにも見えるが。)………はぁ…。…水、が、欲しいです。水を。水が。あれで辛い物を流し込む瞬間が至高なんです。そう、まさに天と繋がっていると言う感覚が。(相変わらずのぼそぼそした喋り方に、次第に狂気が垣間見えてくる。感情の読み取りやすい眉の動きは一切無く、口だけが意思を持っているようだ。)   (4/25 23:03:22)


〆鯖/火津彌> (とりあえず返事が出来ることは解った。この男についてはあまり深く関わってきたではないが……これでも佐官、戦績を求められる将達とは違って雑用めいた教育係など統率役に回される事も多いからして、部下の事は誰よりも把握しているつもりだった。自分の知る限り獅子唐はこんなにも”おしゃべり”な男ではなかったはずだ。異常に気づいた兵は優秀だな、と心中で独り言ちながらあなたの譫言をしっかりと頷きながら聴く。)お前は狂っても穏やかなもんやな、奴とは大違いやわ……。水か。水やな。治ったら水でも鷹の爪でも存分にやる。やからそのまま、しばらくおとなしくしていてくれ。(すう、と息を吸い本日二度目の長い長い詠唱を口にし始めた。) 榮の宮処と黄泉国に神留坐す 皇神等鋳顕給ふ 十種瑞津の寶を以て かけまくも畏き 守護四神 八百万………   (4/26 00:03:21)


山葵:獅子唐> ははぁ…。褒め言葉ですかね?ありがたい。不思議と良く口が回るんです。嫌だと感じていても喋ってしまう。誰かと話していなければ不安で仕方がない。でもボクは毒にも薬にもならないと決めたんです。其処で感情が反発する。不安は増幅する。……泥沼ですよ、出られない。(己の手を握り手遊びをしながら、何時もは感動詞に軽く言葉を付け加えた程度のことしか喋らないその口からすらすら溢れる言葉。大人しくしていてくれ、その言葉には何故か言葉では無く頷きでの同意を示す。)…………(彼の長い詠唱は、すらすらと頭の中へと入っていく。この言葉を聞いただけで発狂した者も少なく無いと言うのに、目の前の彼は暴れる事も無く。まるで石像のようにピクリと動く事も無くその言葉を聞き届けた。まだ、理性と言う理性は残っているのだろうか。)   (4/26 00:19:11)


〆鯖/火津彌> (十分程に渡る長い詠唱をぴくりとも動かずに聞き届けるあなたを見ていると、生きているのか不安になる心地がした。じっと見えない眼鏡の奥を見つめている緊張感からか、額にじんわりと浮かんでくる汗を拭おうともせずに途切れる事なく言葉の力を送り込む。)……獅子唐、獅子唐…。聞こえるか、獅子唐…。私の指は、何本や。(す、と手袋をしたままの挙げて、指で三を表しながらあなたの眼前に運ぶ。これまで触れてきた患者達の汗を吸って、黒いその手袋はぬらりと光り――黒唐辛子のようだった。)   (4/26 00:29:45)


山葵:獅子唐> ………は、はは…ぁは……。…いえ、三本、です。それは紛れもない事実、覆しようのなく、えぇ…。(呼び掛けられ、はっ、と顔を上げる。眼前には…。……やっと意識がハッキリした時には、己の手は眼前にある火津彌の手首に掛けられていた。此方の白い手袋越しでも伝わるくらい爪を立てていて、相手の皮膚に指がめり込んでいる感触。それがハッキリ伝わった時には、己が何をしようとしていたかを思い出し手を引っ込めた。眉は下がり、己の無意識下での行動に怯えているようにも見えた。)………っ、大変無礼なことを…っ……。…お許し下さい、とは言いません……。…ですが、多分……悪い方向に物事が向いて行っていると言うのは良く分かります。意識のない間、ボクが何をしでかすか……。…ボクですら検討が付かない。(そう呟くように言葉を紡ぎながら、その視線は既に火津彌の指からは背けられていた。   (4/26 00:41:51)


〆鯖/火津彌> (手首を掴まれ、ぎりりと爪が食い込む。眉根を僅かに顰めるが抵抗することはなくあなたの狂気をしっかりとこの目で見ようとしていた。己の魔術が今度こそ、功を奏したのかどうか。……だが、やはりそれはわからなかった。)……案ずるな。お前は……いくら狂っていてもお前のままのようや。恐れるな、己を、言葉を。先程のようにじっと耐えていられるだけの気概があるのなら…そのうちにきっと策が見つかる。それまで狂気に飲まれるな。耐え続けるんや、尊華の男なら……。(正式な魔術などと違って気休めにしかならないであろうがそれも火津彌の本心であった。あなたの緩慢とした口の動きに合わせてゆっくりと言い含めるようにしてそう呟くと、片手をあなたの眼鏡の蔓に伸ばし、少しずらしてようやく、その瞳と対峙した。)見直したぞ獅子唐、必ず元のお前に戻れ、きっと優秀な働きをしてくれる。戦え、共に。(強い言葉とは裏腹に心は無性に締め付けられてならなかった。無力な自分にほとほと興醒めしていく。火津彌が普段から心に隠している燃えるよな野心も、不思議な雨によって無慈悲に打ち消されたのかに思えた。)〆   (4/26 00:58:38)